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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
40/119

40:孤児院5


 サニアに呼びかけられた男の子は彼女に顔を向けてから窓の外に視線を投げ、少し慌てた様子で立ち上がる。癖の無い赤髪の男の子はサニアに駆け寄り、サニアの足に飛びついて見上げる。


「なに?」


 アドエルに足を当てそうになったサニアは少し体勢を崩し、目を丸くしてアドエルを見下ろす。何事も無かった様子で見上げてくるアドエルを見てサニアは安堵の息を吐き、膝に左手を添えて腰を屈める。サニアは右手をアドエルの肩に添えてラトサリー達の方を向かせてアドエルに声をかける。


「アドエル。ちょっとあの人達の話を聞いてくれる?」


 そう聞かれたアドエルは窓の外をチラっと見てからサニアを見上げて首を縦に振り、サニアから手を放す。サニアは右手でアドエルの頭を撫でてから身を起こし、ラトサリー達に顔を向けて頷く。合図を受けてカトラはラトサリーの前に出ると振り返ってラトサリーに目配せする。ラトサリーは頷き返し、二人はサニアの元へと歩き出す。ラトサリーは進みながらアドエルが度々目を移す窓の方に意識を集中させる。すると、ラトサリーの目は先程見えた白い光の粒を捕らえる。窓の端の辺りにその粒が漂い消えていくように見えると同時にラトサリーの頭の中で【 ティロン 】と音が鳴る。ラトサリーは目を見開くとカトラの腕を掴んで歩みを止め、カトラの耳元に顔を近づけ興奮を抑えながら囁く。


「カトラ!窓の所!どうなってるの?」


 カトラは真面目な顔でラトサリーを横目で見ながら囁き返す。


「術者が術式で隠れているのよ。悪意は無さそうだから無視するわよ」


「悪意が無いってどういう事?」


「そこの子を見守ってる感じなのよ。気になるならもっと目を凝らして自分で確認しなさい」


 そう言われラトサリーが口を尖らせていると、サニアは振り返って首を傾げながら二人に声をかける。


「どうしました?何かありましたか?」


 ラトサリーは慌てた様子でサニアに駆け寄り笑顔を見せる。


「なっ、何でもないです。少し打ち合わせをしていただけです。それではサニアさん、先程と同じ事をその子に見せますね」


 サニアが頷いたのを見てラトサリーは一歩前に出ると片膝をついて屈み、アドエルに笑みを向ける。


「こんにちは。ラトサリーと言います」


 ラトサリーの挨拶にアドエルは会釈を返す。ラトサリーは笑みを浮かべたまま頷き返すと、カトラを手で指しながらアドエルに声をかける。


「今からこのお姉さんが手の上に水の玉を出しますから、どちらの手に大きい水の玉があるか指差してくれますか?」


 アドエルは窓の方を気にしながら首を縦に振る。ラトサリーは目でカトラに合図を送り、カトラは先程と同様に腕を伸ばして右手に水の玉を出す。アドエルはカトラの手を交互に見ると、少し驚いた顔をしながらカトラの左手を指差す。ラトサリーは息を飲みアドエルに問いかける。


「左手の上にある水の玉はどれ位の大きさか教えてくれますか?」


「えっと……これくらい」


 アドエルは両手で自分の顔より丸い輪を作ってラトサリーに顔を向ける。ラトサリーは目を見開いてアドエルに問いかける。


「君は同じ位の大きさの水の玉を出せる?」


「うん、出せるよ」


アドエルの返事を聞いたカトラはアドエルに声をかける。


「ねぇアドエル君?ちなみに、一番小さい水の玉はどこに浮いてる?」


「っ、カトラ!そんな問いかけ打ち合わせてないわよ!」


 焦るラトサリーに目も向けずにカトラはアドエルの様子を笑顔で伺う。アドエルは首を傾げながらカトラに目を向けると、カトラの右手を指差す。カトラはアドエルの目を見て怪し気な笑みを浮かる。


「そっちね、ありがとう」


 緊張を走らせるアドエルを気にする事無くカトラはそう言うと、手の平を閉じて水の玉を消す。横に伸ばした腕を戻してプラプラさせながらカトラはラトサリーに声をかける。


「さっきの子も良かったけど、この子で決まりじゃない?男の子だし」


「何か追加するなら先に言ってよね、まったく……そうね……」


 ラトサリーは呆れ顔でそう言いながら立ち上がる。カトラの横に戻りながらラトサリーは目を伏せ、左手の平を左頬に当て人差指で頬をポンポン叩き始める。アドエルは不思議そうにラトサリーを見上げ、カトラは腰に手を当ながらラトサリーを見守る。サニアは暫く様子を伺うが、沈黙に耐えられずラトサリーに声をかける。


「あのぉ……ラトサリーさん?」


 呼びかけられたラトサリーは人差指を止めて左手を頬から離し、サニアに顔を向ける。


「サニアさん、お願いしたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」


「はい、何でしょう?」


「少しの時間で良いので、隣の部屋でお待ち頂けませんでしょうか?」


「えっ?えーと……そうですね、いや、でも……」


 困り顔で狼狽えるサニアに向かってラトサリーは深く頭を下げる。


「お願いします、そうしないと聞けない事があるのです」


 そう言われ益々困った顔をするサニアにカトラはニヤけた顔で声をかける。


「サニアさん、その子の安全は私が守るわ。宮総研の名に懸けて、その女を犠牲にしてでもその子を守るから」


 そう言われサニアは眉間にシワを寄せて首を傾げるが、深いため息をついてからラトサリーに渋い顔を向ける。


「そこまで言われるのでしたら……分かりました。ですが、言葉で傷を負わせる事が無いよう、くれぐれもご注意下さい」


 ラトサリーは頭を上げてサニアに笑顔を見せる。


「ありがとうございます。重々留意致します」


 サニアは会釈でラトサリーに応えると場を離れる。サニアが隣の部屋へ移り扉を閉めたのを見送ったラトサリーはカトラに近づき顔を寄せて囁く。


「カトラ、さっき言ったのは本当なの?」


「何?あんたを犠牲にしてでもってヤツ?もちろん本当で本気よ♪」


 笑みを浮かべ普通の声量で答えるカトラ。ラトサリーは苦笑いを浮かべながらカトラの耳元に手を添えて小声で尋ねる。


「術者がこの子を見守っている感じだって話の方よ!」


「あぁ、そっちね」


 カトラはそう言うと口に手を添えてラトサリーの耳元で口を開く。


「最初は直感だったけど、この子が見える程度に術式を抑えている所からすると間違い無いと思うわ」


「そうなの?でも、なんでそんな事言い切れるの?」


「質問を追加して試したからよ♪」


「あぁ、さっきのね……そう言う事だったのね。分かったわ、ありがとう」


 ラトサリーはそう言うとアドエルの元に戻り、アドエルが視線を送っていた窓の端に体を向ける。アドエルは慌ててラトサリーのスカートを掴み、不安げな顔でラトサリーを見上げる。


「なにもないよ、なにもないから」


 スカートを引っ張り必死にそう言うアドエルにラトサリーは笑みを向けると、窓の端に向かって膝をつき、深々と頭を下げる。アドエルはその動きに驚いてスカートから手を離す。アドエルが手を離した事を察知したラトサリーは頭を下げたまま窓の端に向かって口を開く。


「ラトサリー・ランダレアと申します。この子、アドエルに関わる事でお話しをさせて頂けないでしょうか?」


 ラトサリーはそう言って頭を下げたまま動きを止める。アドエルは身をすくませながら窓の端とラトサリーへ視線を交互に向け始める。ラトサリーは狼狽えるアドエルに気付くと顔を曇らせ、頭を下げたまま再び口を開く。


「お願いします、この子の将来に関わる話をさせて下さい」


 そう言って頭を下げ続けるラトサリーを目の前にしたアドエルは益々狼狽えた様子で視線を泳がせ始める。暫し時が過ぎ、アドエルの目に涙が滲み始めると、頭を下げるラトサリーの目は窓明かりの揺らぎを捉える。その揺らぎが影になると同時に床鳴り音がラトサリーの耳に入る。ラトサリーは確認したい衝動を抑えて頭を下げ続ける。すると、アドエルの隣の方から女性の声が上がる。


「分かったわ。頭を上げて」


 ラトサリーはホッと一息ついてから頭を上げてアドエルの横に目を移す。声の主はアドエルの横でフードを被ったまま立膝をついて座り、アドエルの頭を撫でていた。簡易的な旅の装いで身を包み、目深に被ったフードから褐色の頬と銀髪を覗かせるその女性は値踏みするかのような視線をラトサリーに向けていた。




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