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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
39/120

39:孤児院4


 ラトサリーは笑顔で子供達に声をかける。


「皆さん。ちょっとこのお姉さんの手を見てくれますか?今からこのお姉さんが手の上に水の玉を出しますよ」


 ラトサリーがそう言うと、カトラは両腕を横に伸ばして手の平を上に向ける。子供たちが注視しているとカトラの左手の上に小さな水の玉が現れ、次第に大きくなりリンゴの実程の大きさの水球になる。ラトサリーは子供達に問いかける。


「大きな水の玉があるのはどっちの手ですか?」


 子供達はカトラの両手を見比べると、皆揃ってカトラの左手を指差す。ラトサリーは笑顔のまま子供達に問いかける。


「右手に何か見える子はいますか?」


 そう問われた子供達はカトラの右手に目を向ける。すると子供達は不思議そうに首を傾げ、年長の男の子はラトサリーにムスッとした顔を向ける。


「何も見えないよ」


 ラトサリーはそう聞くとカトラに目を向け、カトラが頷いたのを確認すると年長の男の子に笑顔を見せ、改めて子供達に声をかける。


「そうよね。それじゃぁ、これだとどうですか?」


 そう言ってラトサリーが胸元で手を軽く叩くとその瞬間、カトラの右手に大きなスイカ程ある水球が現れる。ラトサリーは子供達がそれぞれ驚く様子を確認し、慌てるサニアを見なかった事にして再び子供達に問いかける。


「大きな水の玉があるのはどっちの手ですか?」


 子供達は揃ってカトラの右手を指さす。カトラはラトサリーを横目で見てから腕を伸ばしたまま手の平を両方とも握って閉じる。その瞬間、浮いていた水球は消え、子供達は口を開けたまま目を丸くする。カトラは子供達の反応を気にする事無く腕を下ろし、ラトサリーに目配せをする。無言で頷き返したラトサリーは胸元で再び手を叩いて子供達に笑顔を向ける。


「それじゃぁ、水の玉を出せる子はいますか?」


 その問われて子供達は一斉に「ハイ!ハイ!」と声を上げて手を上げ始める。ユミナに抱かれた幼児も子供達を真似て手を上げて振り始める。ラトサリーはその様子を笑顔で見ながら口を開く。


「それじゃぁ、この中で、一番大きな水の玉を出せる子は誰ですか?」


 子供達は動きを止めて考える素振りを見せると、一人の女の子に視線を向ける。三歳程の女の子は向けられた視線に照れながら遠慮がちに手を上げる。ラトサリーは女の子に笑みを向ける。


「それじゃぁ……窓の外に向かって水を出してみてくれますか?」


 ラトサリーはそう言うとテラス窓に移動し始める。女の子は少し戸惑いを顔に浮かべながらサニアとミナを交互に見始める。サニアが頷くと女の子は笑顔を見せてラトサリーの後を追う。ラトサリーはラッチ錠を外し両開きの掃出し窓を開け放ち、しゃがみ込んで女の子を迎える。女の子の背中に手を当てて笑顔を向けるラトサリー。女の子はラトサリーの笑みに頷き返すとベランダに向かって両手を伸ばして力を込める。すると女の子の手の平の前に小さな水の玉が現れる。女の子が更に目に力を込めると、水の玉は膨らみ始めてカボチャ程の大きさになる。女の子は顔をプルプル震わせながらラトサリーに笑みを向ける。ラトサリーは笑顔で頷き返すと女の子の両肩に手を優しく置いて声をかける。


「凄いわよ♪それじゃぁ、さっきのお姉さんみたいに水の玉を消せる?」


 そう尋ねられた女の子は表情を硬くして首を横に振る。ラトサリーは女の子の肩に手を置いたまま口を開く。


「ちょっと試してみましょうよ。ゆっくりで良いから」


 女の子は口を歪めながら両手に力を込める。水の玉は揺らぎ始め、女の子の手元から前方に飛沫となって飛び散り、女の子は驚いて動きを止める。ラトサリーは女の子の両肩をポンっと叩いて笑顔で声をかける。


「ちょっと難しかったわね。でも凄かったわよ♪」


 戸惑う女の子に向かってラトサリーは笑顔で拍手を送る。見ていた子供達もラトサリーに続いて拍手を始める。女の子は皆の反応を見て照れ笑いを浮かべ、振り返ってユミナに駆け寄るとユミナの腕に抱き着く。ラトサリーはその様子を横目で見ながら立ち上って窓を閉める。鍵が閉まった事を確認してからラトサリーはカトラの横に戻りながらサニアに声をかける。


「サニアさん。隣の部屋の子にも会わせて頂けますか?」


「え?えぇ、分かりました」


 サニアは意外そうな顔をしながらそう言うと、体の向きを変え間仕切壁にある扉を手で指す。


「あちらです」


 サニアはそう言って扉へと歩き出す。ラトサリーは子供達に手を振りながら軽く頭を下げ、サニアの後に続く。カトラも歩き出そうとするが足を止め、水の玉を出した女の子に声をかける。


「アンタ、水の玉を消したかったら、水がどんな時にどうなるか良く見て、よぉーく考えなさい♪」


 女の子が頷くのを見てカトラは笑みを浮かべ、女の子に手を振ってからラトサリーの後を追う。サニアは扉の前に着くと振り返って神妙な顔を二人に向ける。


「一つご注意頂きた事があるのですが」


「っ?何でしょう?」


「何も無い方を見て手を振ったりする男の子だと先程話しましたが、そんな素振りを見ても指摘しないで下さい。最近、酷く動揺するようになっていまして」


「わかりました。それで、その子はどのような経緯でこちらに?」


「それが……二年位前になるのですが、朝の清掃で外に出たら玄関の前に置かれていたんです。手紙が添えられていたのですが、『アドエルを宜しく』としか書いてなくて。まぁ、手紙があるだけまだマシなんですけどね」


「そうなんですか……ありがとうございます」


 ラトサリーが頭を下げるとサニアは向き直って扉を開け、部屋に入って扉を押さえる。カトラは扉へ歩み出そうとするラトサリーの肩に手を置いて止め、顔を近づけ囁く。


「今から目をよぉ~く凝らして部屋の中の力の流れを見るのよ♪」


 カトラはそう言って挑戦的な笑みをラトサリーに向けると部屋に入っていく。ラトサリーは眉をピクっと動かし、息を大きく吸いながらカトラの後に続く。サニアは扉を閉じると二段ベッドが並ぶ部屋を見回し、窓際を覗き込んでからラトサリーに顔を向ける。


「窓の傍で絵本を見ているのがその子です」


 サニアはそう言うと開け放たれた窓の方へ進む。窓のすぐ傍に開かれた本が乗っている木箱があり、男の子は箱の前で床に座って本に目を向けていた。サニアは歩きながら男の子に優しく声をかける。


「アドエル。ちょっといい?」




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