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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
37/120

37:孤児院2


 ようやく顔を上げたハンナは目を擦りながらラトサリーに笑顔を向ける。


「御免なさいね♪こんな……ここまでむず痒い話を聞かされるとは思ってなくて♪」


 ラトサリーは再び顔を赤らめて口を尖らせる。


「……それでも笑いすぎです!!」


「フフ♪本当に御免なさい。でも、聞いて良かったわ♪」


ラトサリーは目をパチリと開いて紅潮したままの顔をハンナに向ける。


「それは……それでは……」


 ハンナはラトサリーに笑顔で頷くと座り直して口を開く。


「えぇ、あなた達にならウチの子達を紹介しても良いわ♪行き先がカタアギロって言うのは少し心配ですけどね」


 ラトサリーはホッとした顔でハンナに頭を下げる。


「ありがとうございますハンナ様」


「どういたしまして♪それじゃぁ、あなたの事が好きで好きで仕方のない旦那様を連れてきてもらう事は諦めるとして」


 ハンナはニヤニヤしながらそう言うと立ち上がり、ラトサリーに顔を向ける。


「行きましょうか。養子縁組の担当を紹介するわ♪」


 ラトサリーは頬を赤らめるも、諦めたかのように軽く息を吐いて立ち上がった。




 応接室から出た三人は建物の裏手に出て四棟ある木造の建物の一つに向かった。ハンナは渡り廊下を歩きながら後ろに続く二人に顔を向ける。


「こっちで商品を色々作っているの。今から行くのは縫い物を扱う縫製棟よ」


 ラトサリーは敷地を見回すと不思議そうな顔をしながらハンナに声をかける。


「ハンナ様。孤児院の工房にしては規模が大きくないですか?」


「フフ♪そうね。寄付を集めないで孤児院を維持しようとやっていたら、いつの間にかこんな大きさになってしまったの♪」


「え?それでは働いている人は全員孤児なのですか?」


「まさかぁ♪大半は働きに来てくれている近隣の人達よ。まぁ、その内の半数弱はここで育った子達ですけどね♪」


「なんか凄いですね」


「ありがとう♪でも、これは二代目の院長が頑張ってくれたおかげなの」


 そう話している内に三人は建物の扉に辿り着き中へ入る。壁が無く見通しの良い広い部屋には作業台が複数置かれ、各作業台で二人か三人程が作業をしていた。腰高程の棚が仕切りを兼ねて各作業台に配置され、むき出しの柱と筋交いにはフックや掲示板が器用に取り付けられていた。大きな窓から明かりが差し込む部屋の奥の壁は扉以外の面が全て梁下まで棚になっていて、巻かれた布が大量に置かれていた。

 ハンナは室内を見回し、手前の作業台にいる女性に目を止める。ハンナはその女性の方へ歩き出しながら後ろの二人に付いて来るように右手で促すと、その女性に呼びかける。


「サニア!ちょっと良い?サニア!」


 呼び掛けられた女性はハンナの方に顔を向けると、椅子に座ったまま呼び掛けに答える。


「何ですか院長?『移動しないで』としか聞いていないのですが」


「サニア。本業よ。こちら、依頼主のラトサリー・ランダレアよ」


 『本業』と聞いたサニアはハンナの後ろを一瞥して立ち上がると、隣の作業台で縫い物をする女の子達に声をかける。


「みんな、聞いて頂戴。私、別の用事で離れるから。みんなはイマリヤの言う事を聞いて作業を続けて頂戴」


「「はーい♪」」


 返事を聞いて軽く頷いたサニアは隣で定規を型紙に当てている女の子に声をかける。


「イマリヤ、後は頼むわ」


「えぇ、いってらっしゃい」


 目も向けず淡々と答えるイマリヤ。サニアはイマリヤの肩を軽く叩くと作業台から離れ、

ハンナの後ろにいるラトサリー達に礼をする。


「サニア・リカヤです。本日は宜しくお願い致します」


 ラトサリーは慌てて礼を返す。


「ラトサリー・ランダレアと申します。こちらこそ宜しくお願い致します」


 挨拶を終えたサニアはラトサリーの横にいるカトラにチラッと目を向け、ハンナに尋ねる。


「院長、そちらの方は?」


「そちらは宮総研の方でカトラよ。それじゃぁサニア、後は任せたわよ♪」


 ハンナはそう言うとラトサリー達に軽く会釈をして、作業をする女の子達に笑顔で手を振ってからその場を離れる。サニアはハンナを見送ると二人に目を移し、少し首を傾げるとラトサリーに顔を向ける。


「それで……お二人は……どのような子をお望みでしょうか?」


 サニアから気恥ずかしげに問われた二人は思わず目を合わせる。するとカトラは妖艶な笑みをラトサリーに見せながら体をクネクネさせ始める。ラトサリーは慌ててサニアに顔を向ける。


「ち!違うわよ!!彼女は私の付き添いっていうか護衛で!そんな関係じゃないわ!!」


 サニアはそう聞かされると動きを止めて目を泳がせ始め、激しく動揺して深く頭を下げる。


「すっ、すみません!先日そういう方の案内をしたばかりだったもので!とんだ勘違いをして申し訳ありません!!」


 ラトサリーは少し顔を赤らめながらサニアに声をかける。


「そ、そう言う事なら仕方無いですよ。それに、先程もハンナ様に似たような勘違いをさせてしまいましたし」


 サニアは頭を上げ、申し訳なさげに俯きながらラトサリーに目を向ける。


「そう言って頂けると……本当にすみませんでした」


 再び頭を下げるサニアを見てラトサリーは安堵する。その様子を見たカトラはラトサリーに体を寄せ、悪い笑みを浮かべてラトサリーの耳元で囁く。


「ねーぇ♪何ならそう言う事になってあげてもい・い・わ・よ♪」


「アンタは……ふざけすぎ、よ!」


 ラトサリーはそう言って肘を振るうが、カトラは余裕で躱して数歩下がり、ラトサリーを見ながら笑いを堪え始める。ラトサリーは口を尖らせるが、諦めたかのように息を吐く。頭を上げたサニアは恐る恐るラトサリーに声をかける。


「あのー、ラトサリーさん?それで、本日は伴侶の方はいらしていないのですか?」


「え?えぇ、夫は外で……」


 ラトサリーは言い淀んで顔を少し赤らめるとサニアから目を逸らす。サニアが不思議そうにしつつラトサリーの言葉を待っていると、カトラはサニアの横に移って彼女の肩に手を置く。サニアが不思議そうにカトラに顔を向けると、カトラは笑いを堪えながらサニアに声をかける。


「気になる?聞きたい?」


「え?えぇ……気にはなりますが……」


「でしょ?ラトサリー、聞きたいって♪」


 嬉しそうな顔でラトサリーに視線を投げるカトラ。ラトサリーは顔を益々赤らめてカトラに困り顔を向ける。


「え……でも…………」


 サニアは見かねてラトサリーに両手をパタパタ振りながら声をかける。


「そ、そんな無理して話さなくても良いですよ……そうだ、院長は承知しているのですよね?」


「え、えぇ」


「それなら♪話にくい事を聞いてしまって申し訳ありません。それで、ラトサリーさん達はどのような子をご希望ですか?」


 ラトサリーは安堵の表情を浮かべてサニアに顔を向ける。


「それなのですが、出来るだけ幼くて、術式の素質がある子っていますか?」


「術式の素質ですか?……それでしたら……」


 サニアはそこまで言うと口を閉じ、少し悩ましい顔をして目を伏せる。


「どうしましたか?心当たりがありそうですが」


 ラトサリーの問いにサニアは右手を頬に当て困った顔をラトサリーに向ける。


「えぇ。二歳位の男の子なのですが……ちょっとブキ……いえ、不思議な子で……」


「不思議?と言いますと?」


「それが……誰もいない方を向いて手を振ったりキャッキャと笑ったりするんですよ」


「誰もいない方を、ですか……」


 ラトサリーが首を傾げながらそう呟くと、サニアは少し慌てた様子で口を開く。


「ほ、他にも幼い子は何人かいますので。先ずは実際に会ってみて下さい、ご案内します」


 サニアはそう言うと作業棟の出口へと歩き出した。




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