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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
27/120

27:交渉


 ラトサリーは国王の言葉を聞くと焦りを顔に滲ませ、後退りしながら組んだ両手を胸元に強く押し当てる。フレールは慌てて立ち上がり、国王とラトサリーの間に割って入る。


「ユリシエル陛下!何を言われるのですか!!彼女は被害者ですよ!!!」


「フレールよ……お前はエミアルの実の母親でないからそのような事を言えるのだ。実の子が死にかけた姿を見る気持ちが分かるか!」


「あなたこそ……娘を持っていないからそのような事を言えるのです!実の娘が凌辱されかけたと聞いたらどう反応しますか!!」


「っ!だが、王族に重傷を負わせた者を不問にすれば諸侯に見くびられる!」


「っ!……裁きに私情を挟む方が見くびられます!それに……」


「お二方!!!落ち着いて下さい!」


 クラウは大きな声で割って入り二人を止める。二人は眉をひそませながらクラウに目を向ける。クラウは立ち上がり二人の視線を正面から受け止め口を開く。


「その話は昨日から平行線ではないですか。国を分断するおつもりですか?まだ時間はあるのですから、熱くならずに考えましょう」


 二人はクラウの言葉を受けて再び睨み合う。ユリシエルは息を強く吐くと身を翻して席へ戻る。フレールは国王が席に戻る動きを見せた事に安堵の息を吐き、ラトサリーを一瞥してから席に戻る。クラウは二人が座ったのを見てから座り、咳払いをしてから二人に顔を向ける。


「お二方。この娘を処刑しても不問に処しても王家の名に傷がつきます。何か別の……全く別の解決策を考えましょう」


 クラウの言葉にユリシエルは苦い顔をしてクラウを睨む。


「それは一晩考えたわい!だが、エミアルが娘にした事はどうしても皆に知られてしまう。挙句にこんな小さな娘に後れを取ったとなれば、エミアルの将来はどうなる……」


「それなら、王子が何をしたか知られないようにする方法を考えれば良いのです、何か思いつきませんか?」


「そんな……都合の良い……」


 ユリシエルはそう言うと大きな溜め息をつき、腕を組んで目を閉じる。クラウはユリシエルが深く考え始めたのを見てからフレールに顔を向ける。


「フレール様、王子が何をしたか皆に知られないようにする方法はないでしょうか?」


 フレールは眉をひそめてクラウを睨みつける。


「エミアルが何人に酷い事をしてきたと思っているのですか!憐みをかける段階ではありません!!」


「しかし、そうすると、この……ラトサリーが王子に襲われた事も皆に知られます。この手の話は歪曲されて広まるモノです。それは良いのですか?」


「っ!それは……」


「それに加えて、それで彼女を不問に処した場合、王子を支持する者に狙われる事になりますが」


「っ!!……」


「彼女が何をされたか知られないようにする方法をお考え下さいますか?」


 フレールは左手で口を覆って目を伏せる。クラウはフレールが深く考え始めたのを見て軽く息を吐き、腕を組んで上を向いて目を閉じる。三人が考え込む中、風が窓を揺らす音は少しずつ強くなっていった。



 ラトサリーは組んだ両手を胸元に押し当てながら三人の話し合いを黙って聞いていた。一人が案を出すと別の一人が異議を唱え沈黙が訪れる。そんな論議が続く中、額から汗を流すラトサリーは組んでいた手を解き、右手を胸に押し当てたまま左手掌を左頬に当て、風で揺れる窓を見ながら左人差指で頬をポンポン叩き始める。

 三人が案を出せずに動きを止めた頃、ラトサリーの左人差指も動きを止めた。ラトサリーは左手を胸元に戻して組み直し、大きく溜め息をつくとフレールに声をかける。


「フレール様、よろしいでしょうか?」


 フレールは疲れた顔をラトサリーに向ける。


「何?どうしたのラトサリー?」


「私も案を出してもよろしいでしょうか?」


 クラウとユリシエルは目を丸くしてフレールに顔を向ける。フレールも驚きを隠さず見開いた目をラトサリーに向ける。憂いを滲ませた顔で手を強く握るラトサリーを見てフレールは心配そうな顔をラトサリーに向ける。


「っ!……良いけど……大丈夫なの?」


「はい。とても不本意な案なのですが」


 フレールは『不本意』という言葉に不安を覚えるが、誰も案を出せなくなった現状を鑑みてユリシエルとクラウに声をかける。


「ユリシエル陛下、クラウ様、どうでしょう?彼女の案を聞いて頂けませんか?」


 ユリシエルは不機嫌な目でラトサリーを睨むが、深いため息をついて目を逸らす。クラウはユリシエルが黙認した事を見て取り、フレールに向かって頷く。フレールは振り返ってラトサリーにホッとした顔を向ける。


「ラトサリー、許しが出たわ。あなたの案を聞かせて頂戴」


「ありがとうございます……とは言っても、私の案では無いのですけれど……」


 ラトサリーは苦い顔をして案の説明を始めた。




 ラトサリーの案を聞き終えたクラウは驚きを隠す事無くユリシエルに声をかける。


「陛下!この案なら王子の将来を守れますし、彼女に制裁を加える事にもなります!これで行きましょう!」


 クラウの反応と裏腹にユリシエルは眉間にシワを寄せて目を伏せる。フレールは物悲し気な顔をラトサリーに向ける。


「ラトサリー、あなた、本当にこれで良いの?」


「とっても不本意ですよ」


 口を尖らせ答えるラトサリーに向かってフレールは怪訝な顔で問いかける。


「ならばどうして?被害者のあなたが何故ここまで不利益を被る案を出したの?」


「そうですね……これなら陛下も譲歩して下さると思いましたので」


 『譲歩』と言うラトサリーの言葉を聞いたユリシエルは急に立ち上がり、ラトサリーに体を向けて睨みつける。


「これでお前がエミアルに重傷を負わせた事を不問に処せと言うのか?」


 ラトサリーは胸元で組んだ手を震わせながら笑顔で答える。


「はい、その通りです。今回の件をエミアル様の名を上げる機会に変えるのです。それ位は譲歩して頂けないでしょうか?」


「それでも……お前が受ける制裁が軽すぎやしないか?」


「そうですね……ですが陛下、陛下がお望みになられる程の罰を加えたいのでしたら、国を滅ぼす覚悟をなさって下さい♪」


「何だと!!」


 笑みを浮かべるラトサリーと怒りを露わにするユリシエルの間に不穏な空気が漂う。見かねたクラウは口を開いて割って入る。


「ラトサリーよ、どういう事か説明してくれるか?」


 ラトサリーはユリシエルに笑みを向けたまま口を開く。


「聖剣が折れた時にノート様は仰って下さいました。何も悪くない私に責任を負わせる話になったら国を滅ぼすと。ですから、今回もそう仰って下さると思います」


 ノートの名前を聞きユリシエルは狼狽えてラトサリーから目を逸らす。ユリシエルは苦々しい様子でクラウに問いかける。


「クラウ……ノート殿がそこまですると思うか?」


 クラウは困った顔をして溜め息をつく。


「彼女はノート殿のお気に入りの様です。ノート様でしたら……そうすると思います。国が滅びるまでには至らないと思いますが……城が半分位消えて無くなると思います」


 クラウの言葉にユリシエルが絶句したのを見たラトサリーは更に口を開く。


「それに、サーブ様はノート様の側につくと思います。サーブ様に守られたノート様を止める事が出来ますか?」


 サーブの名前を聞いてユリシエルは益々狼狽えた顔をクラウに向ける。クラウは困った顔で再び大きな溜め息をつく。


「サーブに守られるとなると……ウヌカ、お前はどちらにつく?」


「私はフレール様の意向に従います」


 即答したウヌカの言葉に呼応するかのようにフレールはクラウに向かって挑戦的な笑みを向ける。フレールの表情を見てクラウは引きつった顔をユリシエルに向ける。


「ユリシエル陛下……彼女の案以上の不利益を彼女に科すと国が滅びます。我慢なさる事を強くお勧め致します」


 ユリシエルは恨めしそうにラトサリーを睨むと振り返って席に戻り、俯きながらクラウに声をかける。


「クラウよ……彼女の案で事を運ぶとしよう」


「はい、承知致しました。では早速モリスを呼び戻します」


 クラウはそう言って立ち上がると足早に扉へと進み、扉を開け外の兵士に声をかける。一同がモリスを待つ間も窓を揺らす風は強くなっていった。




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