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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
24/120

24:武装


 サーブの事をすっかり忘れていたフレールは、カトラに指示を出してから立ち上がる。


「それじゃカトラ、任せたわよ」


「仕方ないですね、上手くやってみせますよ♪」


 カトラの軽い返事にフレールは呆れ顔で軽く息を吐く。気を取り直しフレールはラトサリーに顔を向けて笑みを見せ、手を振ってから宮総研への扉へと歩き出す。扉を開けフレールが声をかけると、研究員が一人現れる。フレールは研究員と共に宮殿側の扉へと進み扉を開ける。扉の向こう側に向かって声をかけたフレールはゆっくりと部屋を出て行く。研究員がフレールに続いて部屋を出て行くと入れ違いで騎士の恰好をした男が部屋に入り、ラトサリー達の元へと歩み寄る。


「お邪魔するよ。朝食を用意して下さったとの事なのだが」


 一瞬表情を硬くしたラトサリーだったが、見覚えのある顔に安堵し立ち上がって礼をする。


「副団長様、ラトサリーです。先日はありがとうございました」


「お、覚えていたか……その節は役に立てなくて済まなかったな」


「いいえ、とんでもございません。御陰様で諦めがついてスッキリしましたので」


「そ、そうか……そう言う事にしておいて貰えると有難い」


 そう言って副団長は引きつった笑顔をラトサリーに見せると使用人に促された席に座り、テーブルの上に目を向けて顔をほころばせる。


「いやぁ、ここまで豪華な朝食付きの任務とは。有難い♪」


 副団長は手袋を外しながらそう言うと、物凄い勢いで食べ始める。使用人はお茶を入れながら副団長に声をかける。


「レスタ様。急な夜警、お疲れ様でした」


 レスタはパンを頬張りながら使用人に手を振って笑顔を見せる。その様子を見ながらカトラは立ち上がりラトサリーに笑みを向ける。


「それじゃラトサリー、サーブをどうにかしてくるわ♪」


「あなたが『どうにかしてくる』とか言うと何か怖いのですが」


 引きつった笑顔で答えるラトサリーに向かってカトラは手を振り部屋を出て行く。続いてウヌカも立ち上がりレスタに声をかける。


「レスタ様。私も少し席を外しますので、私が戻るまでこのまま宜しくお願いします」


「んぐっ……そうか、戻るまでで良いんだな? 」


「はい、御陰様で私もゆっくり休めましたし」


「そうか……それなら、ついでにちょっと手合わせしないか?」


「……こんな時に変な体力を使わせないで下さい。次の機会にして下さいますか?」


 ウヌカは平然とそう言って宮総研側の扉へと向かう。ウヌカの背中に視線を向けながら苦笑いを浮かべたレスタは肩を竦め、向き直って再びパンを頬張り始める。用意されたパンを平らげ満足そうな顔で茶に手を伸ばすレスタ。ホッと一息ついたレスタを見てラトサリーは声をかける。


「レスタ様。お伺いしたい事があるのですが、宜しいですか」


「ん?なんだ?」


「ウヌカと手合わせと仰ってましたが、ウヌカは副団長様が手合わせを申し入れる程の腕なのですか?」


 その問いにレスタは苦笑いを浮かべる。


「いやぁ……彼女はここ数年で俺に土をつけた四人の内の一人なんだ」


「えっ?ウヌカが?」


 目を開いて驚くラトサリー。レスタはお茶を一口飲んでから言葉を続ける。


「他の二人と違って宮総研の奴らと対戦する機会は中々無くてな。王妃達の話し合いも時間がかかるだろうし、絶好の好機だと思ったのだがなぁ……」


 残念そうに溜め息をつきお茶に口をつけるレスタ。


「えっ……時間がかかる?」


「あぁ。今回は流石に王妃も引かないだろうからな。昼になっても終わるかどうか」


「そ、そうですか……」


 ラトサリーは暗い声でそう答えて視線を下に落とす。レスタはさらにお茶を飲もうとしたが、ラトサリーの様子を見ると困った面持ちでカップを持つ手を止める。


「ま、まぁ、そんなに心配するな。時間はかかると思うが貴女の身に危険が及ぶ結論にはならないだろうし」


「そうだと良いのですが……時間がかかるようなら、もう一度ウヌカに手合わせを申し入れてはいかがですか?」


「そうだなぁ……だが、ウヌカはあんな感じだったし……」


 レスタの言葉を遮るように宮総研の扉が開き、先程と違う装いのウヌカが部屋に現れる。二人が目を向けると、ウヌカは両腕に手甲を嵌め、服の上から肩当てと胸当てを身に付け、身丈と同じ程の長さの棒を持っていた。テーブルに近づきながらウヌカはレスタに声をかける


「お待たせ致しましたレスタ様。お戻り頂いて結構ですよ」


ウヌカの出で立ちを間近で見たレスタは引きつった笑みをウヌカに向ける。


「おい、ウヌカ……そ、その装備は本気出し過ぎではないか?」


「そうですか?騎士団を相手にして殺さず退けるとなると……これ位ではないでしょうか?」


 棒を軽く振りながらシレっと答えるウヌカ。レスタは棒を指差して苦笑する。


「おい、殺す気が無いなら鉄の棒は止めてくれ」


「申し訳ありません。木の棒は他の研究員に持っていかれてしまいまして。後は両側が尖っている鉄の棒と大剣が残っていましたが……」


「その棒のままで良い……」


 そう言って左手で頭を抱えるレスタ。ラトサリーは困惑した顔をウヌカに向ける。


「ウヌカ?なぜあなたがそんな装備を?」


「レスタ様がお帰りになられた後にあなたを守る為ですよ」


 ウヌカは平然とそう言ってから長椅子へと移動し、椅子の下に置いてある短剣を取りラトサリーに歩み寄る。


「あなたにはこちらを渡しておきます。実戦経験はありますか?」


 そう言って短剣を差し出すウヌカに驚いた顔を向けるラトサリー。


「っ!いいえ!ある訳ないじゃないですか!それより、ここまでする必要があるのですか?」


「えぇ、王子の一派の騎士達があなたを捕らえに来るかもしれませんので」


 ウヌカはラトサリーの手を取って短剣を握らせると、少し考える素振りを見せながらラトサリーに視線を向ける。


「……少し練習しましょうか、ラトサリー」


 ウヌカの言葉を聞いてレスタは立ち上がり、残念そうな顔をウヌカに向ける。


「どうやら暇は無さそうだな。手合わせはまた別の機会によろしく頼む」


 レスタはそう言ってウヌカに向かって手を振り宮殿側の扉へと歩き出す。レスタが部屋を出るのを見送ったウヌカはラトサリーに顔を向ける。


「では、早速練習を始めましょうか」




 王妃の部屋の中央で短剣を両手で握り素振りをするラトサリー。ウヌカはラトサリーの剣筋を観察し目を輝かせる。


「ここまで振れるなら、打ち込みに移りましょう。練習用の剣を持ってきますので少し待っていて下さい」


 ウヌカはそう言って宮総研の扉へと小走りで向かう。ウヌカの背中を見送ったラトサリーは短剣を握る手に目を向ける。


(あまり音が鳴らないわね……)


ラトサリーは首を傾げながら短剣を右手だけで持ち、素振りを始める。四回程振った所で素振りを止め、短剣を握る右手を見つめる。


(やっぱり負荷を大きくしないと鳴らないわね♪)


 気を良くしたラトサリーは短剣を右手と左手と交互に持ち替えながら素振りを続ける。素振りを続けるとラトサリーの頭の中で【 テテテッテーテーー♪ 】と鳴り、彼女は手を止めて満足そうな笑みを浮かべる。

 ウヌカは練習用の剣を持って部屋に戻るが、部屋に響く素振りの音に驚いて足を止める。暫くラトサリーの素振りを観察し、ウヌカは顔をほころばせるとラトサリーに歩み寄り声をかける。


「上達が早いですね」


 ラトサリーは素振りを止めウヌカに笑顔を返す。


「ありがとうございます。でも、これは指輪の効果だと思います」


「そうなのですか?……やはり頭の中で音が?」


「はい、ある程度鳴ると剣が少し軽くなる感じなんです」


「そうですか……そう言う事なら危険だとか言っていられる状況では無いですし、指輪の力を最大限活用しましょう♪」


 ウヌカは笑顔でそう言うとラトサリーに練習用の短剣を差し出す。受け取ったラトサリーは予想を超えた重みに驚いて剣を見つめる。


「なんか……結構重いですね」


「そうなのよ。それに刃も落としてあるから、思い切り練習できますよ♪」


「……ウヌカ?何か嬉しそうですが……」


「え?……気のせいだと思いますよ」


 ウヌカは目を輝かせながらそう言うと、水平に持った鉄の棒をラトサリーの前に差し出す。


「まずは、この棒に打ち込む事から始めましょうか」




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