18:本性 *
この話を飛ばしたい方は22話のあらすじを御覧下さい。
王子のいる部屋を出ようと扉に手をかけたラトサリーだったが、戻るようにと言うエミアルの願いを聞き入れエミアルの前に戻る。改めて椅子に座ったラトサリーはエミアルに作り笑顔を向ける。
「それではお聞かせ下さい」
「そうだな……あのな……」
言い淀むエミアルを見て溜め息をつくラトサリー。
「エミアル様、時間稼ぎをするおつもりならこれで失礼致しますが」
「いや!!待て!言うから。その、あのお茶なのだが……あれは……友人から教わった特別な配合の物なんだ。ほら、義母上もそんなお茶を持ってるだろ」
「エミアル様、フレール様のお茶は頂いた事がありますが音は鳴りませんでした。あなたのお茶には何が入っているのですか?」
「それは……だな……」
間髪入れずに質問を返すラトサリーに言葉を詰まらせるエミアル。モリスは助け舟を出そうとするも言葉が出ない歯がゆさを顔に汗を滲ませる。エミアルとモリスの様子を見てラトサリーが無言で立ち上がると、エミアルは焦った顔をラトサリーに向ける。
「それ……そう、何を入れているか誰にも教えないと言う約束をしているんだ。少し気分が高揚する効き目がある位の物だから心配するな」
「それで、具体的に何が入っているか教えて頂けないのですね?」
静かに問うラトサリーから目を逸らし焦りを顔に滲ませるエミアル。返事が返って来る気配がないのでラトサリーは扉の方へ向きを変える。
「待ってくれ、分かった!」
エミアルが声を上げたのでラトサリーは彼の方に冷めた顔を向ける。エミアルは彼女の視線に一瞬ひるむも不敵な笑顔をラトサリーに向ける。
「こうしよう、指輪が外れなかったら何が入っているか教えてやる。ただ他言無用だ、これでどうだ?」
ラトサリーは暫し考え、軽く溜め息をつく。
「分かりました」
そう言ってラトサリーは椅子に座り、少し呆れたような顔をエミアルに向ける。
「指輪の為に御尽力頂いた身です。その条件、お受け致します。ですがエミアル様、人に言えないような物は人に出さない方が良いですよ」
そう聞いてホッとした顔をするエミアル。
「そ、そうだな、今日は気分が良かったものでな。気を付けるとしよう」
そう言ってエミアルは落ち着きを取り戻しカップに手を伸ばす。
「ところでエミアル様、お菓子にも何か入っているのですよね?」
ラトサリーの再びの問いにエミアルは表情を硬くするが、直ぐに表情を和らげる。
「あぁ……ソイツには効能は同じだがお茶とは違う物が入っている」
「そうですか……もし宜しければ、入れた何か以外の材料と作り方をお教え頂けますか?」
ラトサリーの願いを聞きエミアルは笑顔を見せる。
「なんだ、この菓子は気に入ったか。わかった、調理法を書かせよう。モリス、厨房に行って手配させろ」
エミアルからの指示に頷いたモリスは部屋を出て行く。部屋にエミアルと二人きりになったラトサリーは、手持ち無沙汰になりカップに手を伸ばす。お茶の匂いを嗅いだりカップの中を覗き込んだりするラトサリーを目の前にして怪訝な顔をみせるエミアル。
「どうした、まだ何か気になるか?」
「いえ、やはり何が入っているのか気になるもので」
「そうか……ならば、見事言い当てたら何か褒美をやろう」
「えっ!本当ですか?」
「あぁ、何が良い?言ってみろ」
「そうですね…………父の御給金増額とか」
「っ!ハッハッハッ♪確約は出来んが掛け合ってやろう」
「そう言う事でしたら本気を出しますよ♪」
ラトサリーはそう言うと目を輝かせ、香りを嗅ぎながらお茶を口に含ませカップの中を食い入る様に覗き込み始める。エミアルは彼女の様子をじっくり眺めながらお茶を啜った。
サーブは王族専用の城門の詰所で待機していた。当初、当番の兵士は不機嫌そうに『そんな予定は聞いていない』とぼやいたが、事情を説明し必要以上に頭を下げるサーブを見て態度を和らげた。『お前も大変だな、あそこで待っていろ』と苦笑いを浮かべながら言った兵士にサーブは礼を述べ、詰所の窓際で来客を待ち続けた。婚約者の事が心配だが来客の対応もそつ無くこなさなければいけない。ソワソワしながらサーブが窓から外を見ていると、見張り台から声が上がった。
「何か来たぞ」
サーブは窓から街道に目を凝らす。それが馬車である事を見てとったサーブは詰所を出て身なりを確認し出迎えの準備をする。近づいて来る馬車が荷馬車だったのでサーブは緊張を解くが、王族専用の城門になぜ荷馬車が来るのかと怪訝な表情を浮かべる。
サーブは更に近づいた馬車の御者に目を向け、それが見知った人物だった事で笑顔を浮かべる。サーブが御者に向かって敬礼すると御者もサーブに気付いた様子で手を振って返し、サーブの前で馬車を止める。
「サーブじゃない、丁度良かったわ♪」
御者の予想外の言葉に戸惑いを隠せないサーブ。
「フレール様、丁度良いとは?」
「ラトサリーの家に行ったら誰も居なかったのよ。サーブ、何か知らない?」
「ラトサリーですか?彼女ならエミアル様の邸宅にいますが」
思いも寄らない居場所に言葉を詰まらせるフレール。すると、荷台から不可解そうに眉をひそめたノートがひょっこりと顔を出す。
「エミアル王子の所じゃと?……何があったのじゃ?」
「あ、副所長殿!……それなのですが、エミアル様が指輪を外せるかもしれないから彼女を呼ぶようにと仰いまして」
そう聞いてフレールは焦りを顔に浮かべ荷台に顔を向け、同じく焦りを滲ませるノートを見て焦りの色を濃くする。フレールは何か押し殺したような顔でサーブに問いかける。
「……それで、なぜあなたはこんな所にいる訳?」
状況を理解出来ないでいるサーブはフレールの気配に背筋を凍らせ少したじろぐ。
「そ、それは、急な来客が決まったからこちらで出迎えるように、と指示を受けたからですが……何かあったのですか?」
何故か殺気を漂わせる始めるフレールを前にして冷や汗を垂らすサーブ。フレールは手綱を握り直してサーブに凍てつく視線を向ける。
「サーブ、あなたは誰かが迎えに来るまで詰所から一歩も出ないでいて頂戴」
「はい?それでは来客はどう……」
「いいから!!!……分かった?一歩も出ては駄目よ」
「わ……分かりました」
縮こまるサーブを横目にフレールは馬に鞭を入れた。
ケーキの匂いを嗅ぐラトサリーの顔が赤らんで来た事を見て取ったエミアルの口角が上がる。
「おい、顔色が変わってきたぞ。何か感じないか?」
ラトサリーはカップを置き、顔に手を当て具合の確認を始める。すると、体の火照りを僅かに感じたラトサリーの頭の中で音がゆっくりと鳴り始める。
「……エミアル様。音が……鳴り始めました」
そう聞いたエミアルは身を乗り出し怪しい笑みをラトサリーに向ける。
「そうか、効き出したようだな。それで、指輪は外せそうか?」
「そ、そうですね。試してみます」
ラトサリーは指輪を摘まんで力を加える。
「……外れないみたいです」
「そうか?俺にも試させろ」
エミアルはそう言って立ち上がりラトサリーの横に移る。ラトサリーの直ぐ隣に座ったエミアルが彼女の右手を取って指を這わせると、彼女は肩をピクっと震わせる。
「んっ」
ラトサリーは更に肩を震わせ、声が出るのを我慢するかのように口を閉じる。その様子を見たエミアルは目を怪しく光らせる。
「もう少し試すか」
エミアルはそう言って指を更に這わせる。
「んっっ」
ラトサリーは体を震わせ唇を噛むと、エミアルの手を振りほどいて立ち上がる。呼吸を速めたラトサリーは少しよろけ、胸元で手を握ると心拍の異常な速さに気付きエミアルを睨む。エミアルは彼女の赤くなった顔色と虚ろになった目を見て薄ら笑いを浮かべる。
「なんだ、立てるのか。すごいなお前」
ラトサリーはその言葉に違和感を覚えエミアルから距離を取ろうと床を蹴るが、エミアルは瞬時に手を伸ばし彼女の服を掴み力任せに引っ張る。ボタンが飛び散りバランスを崩したラトサリーは床に倒れ、エミアルは慣れた様子で彼女に馬乗りになる。それと同時にエミアルは手を彼女の肌着に伸ばして引きちぎり、眼前の柔肌に舌なめずりをする。
「思っていた以上に良いではないか」




