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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
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16 王子の宮殿へ


 フロントボタンで赤を基調としたタックワンピースのドレスに着替えたラトサリーは、迎えにきた馬車に乗り込む。走り出した馬車の中を観察し、御者に会話が聞こえないと見受けたラトサリーはサーブに声をかける。


「サーブ、今なら御者にも聞こえないと思います。何がどうなっているのか教えて下さい」


 ノートは少し穏やかな顔をラトサリーに返す。


「それが、今日は王子の護衛当番なのですが、エミアル様から『指輪を外せるかもしれないから今から連れて来い』と言われまして。馬車まで用立てて下さったので迎えに来たんです」


「それで、フレール様はそこにおられなかったのですか?」


「はい、エミアル様だけでした……」


 ラトサリーは不思議そうな顔をして首を傾げる。


「そうですか……エミアル様が独自に調査されたと言う事ですか……でも、先日お見受けした限りでは尽力下さるような方とは思えなかったのですが……」


 ラトサリーの容赦無い評価にサーブは引きつった微笑みを浮かべる。


「あの時はそう思われても仕方無い言動だったかもしれませんが、責任をお感じだったのでしょう。それに宮殿内でも色々ある様ですし、大目に見て頂けないでしょうか?」


 サーブの人の良さに毒気を抜かれたラトサリーは軽く溜め息を付いて微笑む。


「……そうですね、独特の気苦労をお持ちでしょうしね。それで、行き先は宮総研ですよね?」


「いえ、行き先はエミアル様の邸宅です」


 予想外の行き先にラトサリーは再び怪訝な顔をサーブに向ける。


「エミアル様の宮殿?……フレール様とノート様はいらっしゃるのですよね?」


「……いえ、特には聞いていませんが」


 首を傾げ答えるサーブを見てラトサリーは視線を窓の外に向ける。


(……本当にエミアル様が単独で?)


 外をボンヤリ眺めたまま左手を頬に当て人差指で頬をポンポンと叩き始めるラトサリー。話しかけてはいけない気配を察したサーブは黙ってラトサリーを見守る事に徹した。




 軽い振動と共に馬の嘶きが聞こえ、ラトサリーは目をパチリと開きサーブに顔を向ける。サーブは窓に顔を近づけ外を確認するように覗き、扉を開けてラトサリーに顔を向ける。


「ラトサリー様、到着しました。お降り下さい」


 サーブの手を借り馬車を降りるラトサリー。馬車置きではない景色にラトサリーは困惑した顔でサーブに声をかける。


「サーブ様、こちらは?先日の馬車置きではない様ですが」


 サーブはラトサリーの問いに視線を上に向けて考える素振りを見せ、軽く頷くと笑顔でラトサリーを見返す。


「そうですね。先日とは違う門から入城しましたので。そうすると馬車に乗ったまま王宮内に入れるのですよ」


 王宮内と聞き納得した顔で周囲を見渡すラトサリー。目の前の壮麗で大きな石造りの建物は二階建てで、綺麗に手入れされた庭園は美しい草花で彩られていた。見える範囲に怪しい花壇や奇妙な煙が上る建物が見えないのでラトサリーは再び困惑した顔でサーブに声をかける。


「サーブ様、宮総研の建物が見当たらないのですが……」


「あぁ、宮総研はあの向こう側です。エミアル様の御住まいとは別区画なのですよ」


 サーブが指し示した方には庭園が広がり、その先に城壁がそびえていた。


「さぁ、参りましょう。エミアル様がお待ちです」


 サーブは城壁の方を見るラトサリーに声をかける。促されたラトサリーは怪訝な顔で歩き出すが周囲に人がいる事を思い出し、澄まし顔に表情を作り変える。

 二人が扉の前まで進むと、待ち構えていた使用人の男は気味の悪い笑みをラトサリーに向け扉を開ける。視線に気付かない振りをして使用人の前を通り中へと入るラトサリー。サーブは彼女を案内し二階に上り、長い廊下の奥にある扉に辿り着くと呼吸を整えてから扉を四回叩く。すると、開いた扉から質の良い服に身を包んだ男が現れ、優雅に手招きをする。男の前を通り二人は部屋に入るが、ラトサリーはその男も不可解な笑みを向けきた事に眉をひそめる。ラトサリーは振り返って問いただそうと思い足を止めるが、部屋の奥から発せられた声に邪魔される。


「よぉ、やっと来たなサーブ。待ちくたびれたぞ」


長椅子にゆったり座りながら手招きをするエミアルの元へサーブとラトサリーは歩み寄る。


「申し訳ありませんエミアル様。お連れ致しました」


「先日は挨拶も出来ず申し訳ありません、ラトサリー・ランダレアと申します」


「そうだな、まぁ気にするな。そこにでも座ってくれ。それとサーブ」


 エミアルは自分の向かい側の長椅子を指差しながらサーブに目を向ける。


「来客の予定が急遽入ったから対応をお前に任せる。詳細は執事室に行って聞いてくれ」


「はっ、はい。畏まりました」


 一人になる事に不安を覚えラトサリーは目をサーブに向けるが、サーブは彼女に笑顔を見せ安心させようとする。


「大丈夫ですよ、きっと上手くいきますよ」


 サーブそう言ってからエミアルに向き直り礼をして部屋を出て行く。サーブが扉を閉めたのを見てからエミアルはラトサリーに顔を向ける。ラトサリーは礼をしてから長椅子に座り、エミアルに改めて頭を下げる。


「この度は指輪の件で御尽力下さるとの事で感謝致します」


「気にするな、俺も当事者って事になるしな」


 そう答えながらエミアルは扉の前で立っている男に顔を向け、仕草でお茶の催促をする。男が頷き部屋を出て行くと、エミアルはラトサリーを品定めするかのように眺め始める。その視線に何やら不気味さを感じるもラトサリーは穏やかな笑顔を作り本題を切り出す。


「それでエミアル様、どのような手段で指輪を外そうとお考えでしょうか?」


「それなんだがな……」


 エミアルは上着のポケットから小瓶を取り出しテーブルの上に置く。


「あの後、俺も模写を分けて貰って調べたんだ。請願術式に関係しているとか言ってたので知り合いの術師に見せてみたら、それを作ってくれたんだ」


 エミアルはテーブルに置いた小瓶を指差し怪しい笑みを浮かべる。


「何でも、それを飲んで内側から外す、とか言っていたぞ」


 透明な小瓶に入っている液体は少し白濁している様に見え、ラトサリーは苦笑いを浮かべる。そんな様子をエミアルはニヤニヤしながら眺め、体を起こして小瓶を手に取って軽く振りながらラトサリーに目を向ける。


「まぁ、気が進まないのは当然だな。こんな色だしな♪」


「あの、エミアル様。こちらの品に関して宮総研の方々は何と仰れてますか?」


 ラトサリーの問いにエミアルは不意に真面目な顔を見せる。


「宮総研か……実は、宮総研にこの件は話していないんだ……この件は彼らの手を借りたくないものでね。義母と宮総研の鼻を明かしてやりたいと言う気持ちも勿論あるが、義母が俺を見直す良い機会だと思っている」


 エミアルはそう言って小瓶をラトサリーの前に置き、座り直して姿勢を正す。


「今まで散々遊んで来た事もあって義母の俺への評価は低い。だが、やる時はやる男だと知って欲しいんだ。まぁ、今日用意したコレが上手くいかない可能性もあるが……上手くいけば義母との関係も良くなるかもしれない。だから俺と義母の為と思って飲んで欲しい」


 そう言ってエミアルはラトサリーに頭を下げた。




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