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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
14/119

14:事後処理


 ラトサリーは首に熱を感じながら薄っすらと目を開けた。目の前のテーブルの右側でカトラはラトサリーの右手を押さえていた。右手の先にはノートが維持させている水の板が浮き、その先で研究員達が書き写す作業をしていた。首に熱を、頭に柔らかい感触を感じ、ラトサリーは左手で後ろを探る。


「目覚めましたか、大丈夫ですか?」


 頭の上から声が聞こえ、ラトサリーは誰かに寄りかかっている事に気付く。


「そのまま動かないで下さいね、首に回復術式をかけていますので」


 声の主がウヌカだと分かるとラトサリーは改めて身を委ねる。ウヌカの声でラトサリーが目を覚ましたと気づいたフレールとサーブはラトサリーの元へ駆け寄る。サーブはラトサリーの左側で膝を突き心配そうな顔で彼女を見上げる。


「良かったラトサリー、大丈夫ですか?」


「えぇ、大丈夫みたいです。それで……駄目だったのですね?」


 ラトサリーの問いかけにサーブは言葉を詰まらせ目を逸らす。サーブの左で悔しそうな顔で立つフレールはラトサリーに声をかける。


「あなたに怖い思いをさせて失敗だなんて、本当に御免なさい……」


「謝らないで下さい、私だけでは出来ない事を全て試して下さったのですから」


 そう言って微笑えむラトサリーを見てフレールは何も言えなくなり下を向く。そんなフレールを見て気まずくなったラトサリーは彼女から目を逸らす。その視線の先で騎士二人がテーブルの前で肩を落として話しをしていた。二人はテーブルの上に置いてある何かに目を落とし、その横に座っているエミアルは引きつった笑顔を二人に向けていた。


「あの、サーブ様。騎士様達はどうなされたのですか?」


 ラトサリーの問いに、サーブは目を逸らしたまま固まる。不思議に思ったラトサリーはフレールを見上げる。


「あのぅ……フレール様。何があったのですか?」


 フレールは目を泳がせ始める。


「そ、そうね、まぁ……ちょっと上手くいかなくて気落ちしているだけよ……」


 酷く動揺してそう言ったフレールは焦った様子で騎士達の方を向く。


「だ、団長、副団長、ありがとうございました。例の件は私も同行しますので場所を変えて話しましょう」


 フレールの言葉を聞き騎士達は溜め息をつきテーブルの上の物に手を伸ばすが、エミアルの笑い声で動きを止め彼に顔を向ける。エミアルは立ち上がりフレールに顔を向ける。


「義母上、隠さないでも良いではないですか。どうせ後で分かるのですから」


 そう言ってエミアルは騎士たちが手にしようとした二つの物を持ち、ラトサリーの方を向いて手に持った物を顔の高さに掲げ、引きつった笑顔を浮かべる。


「剣が二本同時に折れるってどうなってるんだよ、しかも国宝の聖剣だぞ!」


 エミアルの手にある折れた剣身にラトサリーは目を丸くさせ、不安げにフレールをのぞき込む。視線に気づいたフレールはラトサリーから目を背け苦笑いを浮かべる。


「そ、そうね……まぁ……保管しすぎで古くなってたんじゃない♪」


 エミアルは思わず吹き出す。


「ふっ♪って、なるかぃ!……まぁ、話し合いは必要だよなぁ……俺も立ち会っていたって事になる訳だし、付き合ってやるよ」


 そう言ってエミアルは不愛想な顔で折れた剣身を騎士達に渡し扉を顎で指す。副団長は肩を落としたまま歩きだし、団長は悲しげな目線をカトラに送ってから歩き出す。エミアルは品のない笑顔でラトサリーを一瞥してから軽い足取りで扉へと進む。使用人が開けた扉の前で立ち止まったエミアルは振り向いてフレールに呼びかける。


「義母上、行きますよ!」


 エミアルに催促され慌てたフレールはラトサリーに神妙な顔で頭を軽く下げ、扉へ進みながらノートに声をかける。


「ノート先生、後は頼みます」


 そう言ってフレールは小走りでエミアル達の後を追って部屋を出て行く。フレールに追随する使用人が部屋を出て扉を閉めた音の後、静寂が部屋を支配する。ラトサリーは思い悩む様子を見せていたが、意を決してノートに質問をぶつける。


「あの、ノート様……剣が折れた責任は……どのように取れば良いでしょうか?」


「責任?……フッ!ヒャッハッハ♪」


 派手に笑い出すノートにラトサリーは目を丸くする。


「剣は正式な手続きを経て持ち出しておるし、宮総研主導で王妃が指揮して行った事じゃ。これでお嬢ちゃんを罰するような国だったらワシが滅ぼしてくれるわぃ、安心せぃ♪」


 研究員達は指輪の紋様を写しながら苦笑いし、サーブも苦笑い浮かべてノートに顔を向ける。


「副所長殿、あなたが国を滅ぼすと言うと洒落にならないのですが……」


「フォッフォッ♪洒落ではないぞ♪婦女子の為に国を滅ぼすとか、一度はやってみたいと思わんか?お主も一緒にどうじゃ?」


「そんな……返答に困る勧誘をしないで下さい!」


 立ち上がりながら苦笑いを浮かべるサーブ。ラトサリーはサーブの返事に高揚感を覚えながらも冷静さを装いノートに問いかける。


「そ、それでノート様……剣はどうなるのでしょうか?」


「剣のぅ……ショートソードか槍に打ち直すか……楽しみじゃのぅ♪ナイフにも出来そうじゃのぅ♪お嬢ちゃん、記念に一本どうじゃ?」


 水の板を維持しつつ楽しそうに答えるノートにラトサリーは呆れ顔を向ける。ラトサリーの反応を見て楽しんでいるノートの横でガウルは溜め息をつきノートに顔を向ける。


「副所長、次の面に移りますよ」


 そう言ってガウルはカトラに視線を移し、仕草で指の向きを変える方向を指示する。しかしカトラは酷く不機嫌な顔で睨み返す。


「ガウルさーん、切りが良いから休憩しましょうよぉー、お腹空きましたー」


 ガウルは少し考える素振りを見せると、ノートの顔を伺う。


「副所長、休憩の事を忘れていました。そろそろ休憩を挟んだ方が良いと思いますが、如何でしょう?」


「そうじゃな、是非そうしよう。正午の鐘が鳴ってから随分経っているからのぅ」


 ノートがそう言って手に力を入れると、浮いている水の板は音もたてずに消える。カトラはラトサリーの手を放り捨てて研究室に消える。他の研究員達も立ち上がり研究室に戻って行く。ウヌカはラトサリーの肩をポンと叩くと寄りかかっているラトサリーを座り直らせ研究室へと戻って行く。ノートはかざしていた左手を揉みながらラトサリーに顔を向け微笑む。


「お嬢ちゃん、休憩にしようか。苦手な食べ物があれば言っておくれ♪」


「お気遣いありがとうございます。特には……まさかカタツムリを使ったりしませんよね?」


「フォッフォッ♪カタツムリの美味しさを知らぬとは勿体ない。良い機会じゃ♪」


 そう言ってノートは小走りで研究室の扉へと向かう。ラトサリーは顔を引きつらせサーブの顔を見ると、彼も顔を引きつらせていた。



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