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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
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13:所長の策


 カトラは一層怪しい笑みを浮かべてラトサリーの方を向く。


「待たせたわね♪これで指輪をスパッと取ってあげるわ♪」


「……スパっと取るものでしたっけ指輪って?」


 ラトサリーが顔を引きつらせフレールに困惑の顔を向けると、フレールは神妙な顔でラトサリーを見つめる。


「……察しが良いわね。試すか、やめるか、選びなさい」


 選択を迫られ険しい顔で俯き硬直するラトサリー。そんな女性の姿を見て赤い鞘の剣を持つ男性は渋い顔でフレールに近づく。


「王妃様、本気なのですか?まだ何か手立ては無いのですか?」


「あなた達もアレを見てご覧なさい。アレを見て同じ事を言えるかしら?」


 フレールは研究員達の前にある水の板を指差す。剣を持つ二人は研究員達の後方に回り込み水の板を見て絶句する。その様子を確認してからフレールは騎士達に手招きをする。


「……例の案の前にもう一つ試してみたい事があるの。ちょっといいかしら?ウヌカも来てくれる?」


 フレールはラトサリーから離れた位置に移り、集まった三人に小声で説明を始める。三人は頷きながら話を聞き、目を合わせて大きく頷くとラトサリーの方へ向かう。フレールはラトサリーの正面、ウヌカは先程までいた右側に、騎士二人はラトサリーの左側真横と左後方に移動する。その動きを見てカトラはフレールの右側に移りフレールに怪しい笑みを向ける。


「所長!もう一つってのを試し終わったら私の番ですよね?上手くいったら私が成功したって事で良いですよね?」


「……もぅ、仕方ないわね。良いわよ」


「ヨッシャ!!!マーク、レスタ、しっかりやるのよ!!」


 カトラからの思わぬ激励に団長と副団長は苦笑いを浮かべる。フレールは喜ぶカトラを呆れ顔で見てからラトサリーに向き直り、憂いた顔でラトサリーに話しかける。


「不安にさせたまま待たせてしまって御免なさいねラトサリー。それで…………どちらを選ぶ事にしたかしら?」


「…………指を失うかどうかですよね?」


「あら、それは大丈夫よ、回復術式で戻すから。薬指が少し短くなるかもしれないけど」


「……だから二人招集なされたのですね」


 そう言ってからラトサリーは大きく息を吐き、不敵な笑みでフレールを見上げる。


「騎士団長様と副団長様にまで御足労頂いたのです。断っては家名に傷が付きます」


 椅子に座っているエミアルはそのやり取りを見て口笛を吹き、ニヤリと笑いラトサリーを値踏みする様な目線を向ける。フレールはその態度を見てエミアルを睨みつける。


「エミアル!!なんですかその態度は!!!そもそもあなたが指輪をサーブに持っていけなんて言わなければこんな事になっていないと言うのに!」


 フレールに強い口調で凄まれ、少し反省したような顔をするエミアル。


「……分かっていますよ。でも仕方無いではないですか、同年代でこんな女性を見た事ないのですから。静かにしていますから続きをどうぞ」


 そう言ってエミアルは手を振りながらお茶に口をつける。フレールは溜め息をついてから申し訳ない顔をラトサリーに向ける。


「本当に御免なさいね。この子には王族としての品格がまだ備わってないと言うか……」


「それは十分存じておりますのでお気になさらないで下さい」


 ラトサリーが溜め息混じりで即答した事に対してエミアルは少しムッとした顔をする。ラトサリーはそんな第三王子の反応を見なかった事にしてフレールに問いかける。


「それでフレール様、もう一つの案というのはどのようなモノなのでしょうか?」


「そうね、それが上手くいけば良いんですものね。それじゃぁ今から説明するけど、ビックリして右手が動いてはいけないから。ウヌカ、彼女の右手が動かないように押さえて」


 ウヌカは指示通りにラトサリーの右手を押さえ、ラトサリーは右手に注意を向ける。その時、ラトサリーは首に大きな衝撃を感じると同時に白目をむいて意識を失った。




 ラトサリーの左後方の騎士は右手の手刀で首を打った体勢のままラトサリーに目を向けていた。ラトサリーの左側にいる騎士はラトサリーが椅子から落ちないように手を出し彼女を支える。


「何してんですか!!!」


 サーブが叫び駆け寄るが、ウヌカが行く手を遮りサーブを止める。目の前で意識を失う女性の姿を見せられ目をパチクリさせるカトラの横でフレールは研究員達に呼びかける。


「みんな、書き写す作業はひとまず中断ね」


 そう言ってからフレールはラトサリーの右手を両手で持ち、指輪を摘まんで外そうとする。


「駄目ね……意識が無い状態なら外せるかもと思ったのだけど……」


 残念な顔をしてフレールはラトサリーの右手をテーブルに置き、サーブの方を向く。


「サーブ、最後の案はあなたにも手伝ってもらうわよ」


「……最後の案とはこんな乱暴な事をしないと出来ない事なのですか?」


 サーブは怒りを隠す事無く言葉をフレールにぶつけるが、フレールはサーブの怒気を正面から受け止める。


「その通りですサーブ。そしてこれからその最後の案を行います。」


 フレールのその言葉を聞きサーブの前に立ち塞がっていたウヌカはカトラの元へ行き指示を出す。カトラはラトサリーの後ろへ回り込み騎士に代わって彼女が倒れないように支える。ノートは水の板を消すと桶を引きずって後ろに下がる。ウヌカはラトサリーの右手が落ちないように支えながらテーブルをラトサリーの右側に移動させる。ラトサリーとテーブルの間に人一人分の空間が出来るようにテーブルの位置を調整したウヌカは、ラトサリーの腕が落ちないように持ちながら作った空間からテーブルを挟んだ側に移動し、騎士達に目で合図を送る。

 騎士達はララトサリーの右手を挟んだ左右の位置に移動する。ウヌカはラトサリーの手を持ち替え、薬指の第一関節だけをテーブルに乗せた状態にして薬指の爪の部分を摘まみ固定する。その配置と状況を見てある程度察したサーブは顔色を変えフレールを見るが、フレールは神妙な顔をサーブに向けて説明を始める。


「サーブ、今から指輪の両端を二本の剣で切断します。その状態で指輪が外れたら輪切りになった指を回収して回復術式を、外れなかったら輪切りになった部分を諦めて回復術式をかけます」


 絶句するサーブに構わずフレールは続けて指示を出す。


「あなたは彼女の右手の薬指以外の指が伸びない様に持って、尚且つ衝撃で動かない様に支えるのよ」


 サーブは意識を失っているラトサリーを見て苦悶の表情を浮かべる。サーブの苦悩を見て取った副団長は溜め息をつきサーブに近づいて声をかける。


「サーブ、お前がその役割をしないというならこの案は立ち消えだ。用件的に他の騎士をここに呼ぶ訳にはいかないからな。だがな」


 副団長はサーブの肩に手を置き言葉を続ける。


「この嬢ちゃんは何をするか分かっているのに家名を出して了承したんだ。彼女の覚悟を無下にするのかお前は!!」


 副団長の言葉を眉間にシワを寄せて聞いたサーブは、覚悟を決めたかのように目を大きく開きラトサリーの元へ移り、両手で彼女の右手を掴み薬指が水平になるように固定する。サーブは体勢を衝撃に耐えられるように調整してから剣を持つ二人に声を掛ける。


「団長!副団長!準備出来ました!!」


 引きつった声を出すサーブを見て、エミアルは笑いを堪えながらサーブに声を掛ける。


「おいサーブ、そんなに心配するな。二人は数日前から皆には内緒で練習してたと言ってたし、今日俺が見てた限りでは百発百中だったぞ♪」


 エミアルの軽い口調は場の空気にそぐわないモノであったが、その内容は場の緊張を緩和させた。二人の騎士は落ち着いた様子で剣を抜き、団長は上段、副団長は下段の構えを取る。二人は目を合わせ、呼吸が合った所で目を指輪に向け、掛け声を発する。


「一」

「「二」」

「「三!!!」」


 上段からの振り下ろし、下段からの振り上げ。剣の刃が同時にラトサリーの薬指を捉えた。




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