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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
三章 カタアギロ横災編
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3-33 強襲




 月が照らす町の静寂を破らないように注意しながら走るラトサリー。大通りを曲がって更に進み、術式の力の流れが空へと上る建物がある敷地を囲う石壁を目で捉えたラトサリーは足を止めて辺りの様子を伺う。先に到着している筈のサーブとカトラの姿は無く、物音も無く気配すら無い事にラトサリーは首を傾げながら石壁に近づいた。

 ラトサリーは足音を立てない様に注意しながら石壁に囲まれたアズーロの家の周りを探ったが、二人の気配も侵入した痕跡も見つける事が出来なかった。石壁を乗り越える足台になる物がないかとラトサリーが辺りに目を向けていると、


《 ドゴッ!!!ゴゴゴゴン! 》


鈍い音と何かが崩れる音を皮切りに男達の怒号と衝突音が響いた。怒号が聞こえたと同時に目印としていた術式の力の流れが消えた事に慌てたラトサリーは右掌を下に向け、風の術式で自らを舞い上がらせた。石壁より高くブワっと宙に舞ったラトサリーは砂埃を気にしながら敷地内をザっと見回すと右掌の向きを変え、大きな物音がした方向にある石造りの建物の横に降り立った。石造りの建物から離れた二階建ての建物から複数の男の怒号が響く中、ラトサリーは石造りの建物を壁伝いに走りながら大剣を抜いた。ラトサリーは建物の角を曲がると鞘を投げ捨てて正面入口に向かって走るが、見張りの姿もサーブ達の姿も無かった。

 扉が完全に開放されている入り口にラトサリーが辿り着く直前、


「二人共こっち見るなーーーー!!!!」


カトラの怒鳴り声が石造りの建物の中から響いた。眉をひそめたラトサリーが扉の前で足を止めて建物の中を覗き込むと、材木の塊が転がる部屋の左側でサーブがアドエルを片手で抱いて立っていた。アドエルが死んでいない事に気付いたラトサリーは部屋に駆け込んで声を上げる。


「アドエル!!」


 安堵の表情を浮かべてアドエルに駆け寄るラトサリーは視野の右端に映り込んだカトラとミラテースの姿に顔を強張らせた。





 アズーロの屋敷の裏手に到着したサーブとカトラ。カトラは術式で敷地内の人の位置を確認すると敷地の角に移動し、石壁に向かって飛び上がった。石壁の角を掴んで更に高く舞ったカトラは石壁の上端に手をかけて敷地内部を覗き、建物の配置の確認を終えると手を石壁から離してサーブの横に音を立てずに降り立った。舗装されていない路面に目的の建物と人員の配置を鉄の棒で描いたカトラは作戦をサーブと軽く詰め、二人は石壁を飛び越えて敷地に侵入した。

 巡回する見張りを避けて目的の建物の傍の植込みの陰に身を隠したカトラとサーブ。カトラは庭を巡回する見張りが十分遠くに離れた事を改めて確認するとサーブに合図を送り、サーブは植込みから飛び出して石造りの建物の扉へと一直線に走った。同時に飛び出したカトラは扉の正面に回り込む様にして走った。ラトサリーから受け取った短剣を抜いたサーブは扉の前で足を止めると扉に向かって剣を振る。


《 スンスンスンスンスンスンスンスンスンッ! 》


 幾度となく剣を振ったサーブが地に這いつくばる様にして身を屈めると、扉に向かって走るカトラは加速してサーブを飛び越すとそのまま扉に肩と肘をぶつける。


《 ドゴッ!!! 》


 衝突音と共に建物に突入したカトラは握っていた鉄の棒を強く振り、扉の横で驚いた顔をする見張りの肩口を鉄の棒で打ち抜く。


《 ゴゴゴゴロゴゴンゴロン! 》


 扉の破片と男が床に転がる音が部屋に響く。アドエルの横で座っていた見張りは椅子から飛び上がり、ミラテースを上下で挟んでいる男達は驚いた顔を扉の方に向けた。見張りを仕留めて着地したカトラの横をサーブは駆け抜け、アドエルの横の椅子から飛び上がった見張りに向かって短剣を投げつける。


《 ドンッ! 》


 剣身が石壁に完全に突き刺さり、よろけて転んだ見張りに突進したサーブは抜剣して見張りの首筋に峰打ちを加えて吹き飛ばした。壁に体を打ち付けて倒れた男が首をあらぬ方に向けて動かない事を目視で確認したサーブは壁に刺さった短剣を左手で抜き、アドエルを繋ぐ鎖を切った。サーブは短剣を鞘に収めると膝をついてアドエルに体を寄せ、左手でアドエルを優しく抱き寄せて声をかける。


「もう少し我慢してね」


 アドエルは目を瞑ったまま頷き、サーブにしがみついた。

 着地したカトラは間髪入れずに床を蹴って部屋の右奥に突進し、ミラテースを上から挟んだまま慌てている男に向かって鉄の棒を投げつけた。


《 グシャッ 》


 鉄の棒が男の顔を捉えた。ミラテースを下から挟んでいた男は慌ててミラテースを突き飛ばそうとするが、ミラテースは男の両腕を掴んで動きを封じようとした。カトラはミラテースに押さえつけられた男に向かって駆け込み、男のこめかみを蹴り飛ばすと同時にミラテースを男達から引き剥がす。カトラに抱きかかえられたミラテースは疲れ切った顔で言葉を捻りだす。


「ア……アドエルを……早く……」


 カトラは強張らせた顔をミラテースに見せずに明るい声を捻り出す。


「大丈夫よ、速攻でサーブが確保したわ」


 ミラテースを掴むカトラの手が震える。そこに、アドエルを抱きかかえたサーブがカトラに駆け寄りながら声をかける。


「カトラさん、アドエルは無事で……」


「っ!!二人共こっち見るなーーーー!!!!」


カトラの怒鳴り声が部屋を震わせた。





 サーブは駆け寄ってきたラトサリーに声をかける。


「ラトサリー、アドエルを頼める?」


「えぇ、分かったわ」


 ラトサリーにアドエルを渡したサーブは短剣をラトサリーの帯に装着させ、カトラ達の方を見ない様に建物の入り口に向かうと一歩外に出て剣を構えた。アドエルを受け取ったラトサリーはアドエルに微笑みを向け、優しく囁く。


「帰りましょう、アドエル」


 アドエルは口を開かず、閉じた目の端から涙を流しながら頷いた。ラトサリーはアドエルが目を開けない事に首を傾げながらもカトラ達に目を向けた。グッタリしたミラテースの背中に手を回してコップで水を飲ませているカトラはラトサリーに厳つい顔を向ける。


「ラトサリー!アドエルにこっち見せるんじゃないわよ!」


「分かっているわ。それに、この子、何か、目を開けようとしないの。どうしたんだと思う?」


「え?知らないわよ。それに、好都合じゃない♪」


 平静な顔に戻ったカトラはミラテースにコップを握らせると立ち上がり、鉄の棒を拾って床で顔を押さえて悶絶する男の頭に鉄の棒を振り下ろす。入口で見張りをするサーブは聞こえた鈍い音に慌てて振り返って声を張る。


「カトラさん!止めをささなくても!」


「拘束する道具が無さそうだし、支度を整える後ろから襲われたらたまったもんじゃないわ。それに、あなたもアッチ、仕留めたんでしょ?」


 カトラはそう言いながら男から鉄の棒を抜き、もう一人の男の元に歩き出す。


「っ、そ、それは……」


 サーブは口ごもり、目を泳がせると口を噤んで前に向き直った。カトラはサーブの背中を横目で見ながら鼻からフンっと息を吐き、白目を向いて床に転がるもう一人の男に致命傷を加えてからラトサリーに顔を向ける。


「ラトサリー。先にアドエルをサーブに連れ帰らせるわ。私が入口を守るから、あなたはミラテースに服を着せて帰る準備をして頂戴」


「分かったわ」


 ラトサリーはカトラに駆け寄ってアドエルを渡した。カトラは慣れない手つきでアドエルを抱えると扉の近くで倒れている男の顔を軽く蹴り、男の死亡を確認してから外に出て行った。カトラにしっかりしがみつくアドエルの姿を見て安堵したラトサリーは部屋の端に大剣を置いてミラテースの服を取り、ミラテースの前で膝をついて屈む。


「ミラテース、後でしっかり洗濯するから着て頂戴」


 ラトサリーは苦笑いしながら肌着をミラテースに差し出す。受け取ったミラテースはキュッと肌着を握りしめ、俯きがちに口を開く。


「アドエルだけ連れていって」


「っ?はぁ?」





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