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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
三章 カタアギロ横災編
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3-27 拉致




 石壁の薄暗く広い倉庫のような部屋の端でアドエルは足枷を嵌められ、足枷に繋がれている鎖は椅子の背柱に括り付けられていた。その椅子に座っている男の視線の先、壁長手方向中央にある扉の横の椅子に座っている男の更に先の部屋の端の床にミラテースは座らされていた。立膝をついて座るミラテースはアドエルの横で椅子に座っている男を睨みつけていた。扉の横の椅子に座っている男は抜き身の小剣を持ってミラテースに睨みを利かせ、ミラテースから五歩程離れた所にあるテーブルで別の男二人がパンを食べながらミラテースに陰湿な目を向けていた。

 パンを食べ終えた男達は椅子に座っている男達と見張りを交代し、テーブルに着いた男達はパンを食べ始めた。パンを食べ終えた男達が見張りをしながらミラテースに値踏みするような視線を向けていると扉が開く音が鳴り、部屋に入って来た白髭の男は扉を閉めて部屋を見渡した。涙目で瞼が腫れ上がったアドエルを一瞥した白髭の男はミラテースに冷たい目を向けながら男達に尋ねる。


「お前達、まさか手を出してないだろうな?」





 ルイーゼ邸宅から帰る時刻になり、ルイーゼの邸宅から出発した馬車は二人の騎兵に守られながら帰路に就いた。馬車に乗ったアドエルは窓から外を眺め、ミラテースはアドエルが椅子から落ちない様に気を向けていた。

 町の内周防壁の門を通過した馬車はいつも通る道を進んでいたが、道半ばで馬の嘶きと共に突如止まった。思っていない揺れで席から落ちそうになったアドエルを抱きとめたミラテースは窓から外の様子を伺った。落馬した騎兵の背中には矢が刺さり、覆面をした男に襲われていた。二人の騎兵に止めを刺す音と御者が命乞いする声を聞きながらミラテースは馬車を出て逃げる隙を伺ったが、馬車は複数の男に囲まれていた。ミラテースはアドエルを抱きかかえ、


「アドエル。私が良いって言うまで声を出してはダメよ」


と言ってから術式で姿を消した。

 馬車を取り囲んだ覆面の男の一人は馬車の扉を開けて中を覗き、慌てて声を上げた。


「中に誰もいないぞ!」


 男達に動揺が走る中、指示役の男は馬車に駆け寄りながら声を張った。


「扉を閉めろ!今すぐだ!!」


 慌てて扉を閉めた覆面の男は駆け寄って来た男に場を譲った。指示役の男は馬車の扉を開けると短剣を馬車の中に突き入れ、馬車の中に向かって呼びかけた。


「消える事が出来るってのは分かってるんだ。剣を振り回されたくなければ姿を現せ!」


 指示役の男は二呼吸程して様子を伺ったが、反応が無いので短剣を上下に二回程強く振って再び馬車の中に呼びかけた。


「次は座席方向に振る。姿を現せ!」


 指示役の男は二呼吸程して様子を伺ったが、反応が無いので左足を馬車に踏み入れ、ゆっくりと短剣を斜めに振り上げた。


「待って!」


 堪らずミラテースは声を上げ、術式を解いて姿を晒した。指示役の男はニタリと笑みを浮かべて短剣を降ろし、ミラテースに呼びかける。


「大人しく言う事を聞けば殺しはしない。まずは、子供を渡してもらおうか」


 ミラテースのアドエルを抱く手に力が入る。指示役の男はミラテースを見据えながら口を開く。


「子どもを俺の前にゆっくり置いてお前は奥に下がれ。お前が大人しく言う事を聞いていれば子供が死ぬ事は無い」


 伏し目がちに男を睨むミラテース。動かないミラテースに指示役の男は舌打ちして剣先をアドエルに向け、口を開く。


「子供は死体でも構わないんだが。どうする?」


 ミラテースは歯噛みして男を睨み、震える手でアドエルを床に立たせて馬車の奥に移った。指示役の男は後ろに目配せし、呼応した覆面の男は馬車の中に手を伸ばしてアドエルを掴み、馬車から引きずり下ろして口に布を噛ませ始めた。


「ちょっと!!っ!」


 抗議の声を上げたミラテースの胸元に指示役の男は剣先を突き付けた。指示役の男は短剣を突き付けたまま馬車にゆっくり乗り込み、続いて乗り込んで来た男に指示を出した。


「女に手枷を嵌めて連れて行け。子供に近づけさせるなよ」


「あぁ、分かった」


 返事した覆面の男はミラテースの腰周りに手を伸ばして小剣を奪い取り、手枷を嵌め始めた。指示役の男はミラテースに手枷が嵌められたのを確認してから剣を収め、ミラテースの顔を覗き込む。


「お前が静かに大人しくしていれば子供の命は保証される。くれぐれも余計な事をしようなんて思わない事だ」


 無言で睨み返すミラテース。指示役の男は見下す様な笑みを浮かべてミラテースの腕を掴み、ミラテースを馬車から降ろして幌馬車に移した。





 白髭の男の問いに男達は品の無い笑みを浮かべ、扉の横の椅子で座っている男は白髭の男の問いに答える。


「まさか♪アンタの前にヤる訳ないじゃないですか」


 白髭の男は満足げな笑みを返してからミラテースの方に歩き出し、ミラテースの前で止まるとテーブルで座る男に顔を向け、ミラテースを顎で指す。


「おい、外せ」


 男は立ち上がり、テーブルに置いてある鍵を取ってミラテースの元へと移って屈んだ。男は手枷を外すとミラテースの首元に顔を寄せ、匂いを嗅いでから立ち上がって席に戻った。不快感で顔を歪ませたミラテースは手首を摩りながら白髭の男を睨む。


「アンタ、大工じゃなかったの?」


 白髭の男はミラテースを見下ろし、薄ら笑いを浮かべる。


「いいや、大工だぞ」


「っ!何でこんな事を?こんな事して、ただで済むと思ってるの!?」


「あぁ、捕まったらただでは済まないな♪」


 軽薄な口調で答える白髭の男にミラテースは舌打ちして声を張る。


「目的は何!」


「目的ねぇ……」


 白髭の男は薄ら笑いしながらそう言うと、右手をポケットに入れながら口を開く。


「それは依頼主に聞いてくれ。それより……」


 白髭の男はポケットから取り出した小瓶をミラテースにポイっと投げ渡す。


「飲め」


 瓶を思わず受け取ってしまったミラテースは呆れた様に鼻で笑う。


「こんなモノより水をくれない?」


 白髭の男も呆れた様に鼻で笑い、アドエルの横で座る男に目配せすると、


「んーーーーーー!!!!!!」


 男に髪を掴まれたアドエルの苦悶の声が部屋に響いた。ミラテースは反射的に駆け寄ろうとするが、アドエルの首元に小剣が突きつけられるのを見て足を止めた。白髭の男はミラテースに目を向け、ニタリと笑う。


「子供に何もされたくなかったら戻って素直に言う事を聞け」


 白髭の男はそう言うとアドエルの髪を掴んでいる男に目配せし、男は呼応してアドエルの頭から手を離した。ミラテースは憤りを宿した目で白髭の男を睨みつけ、ハァっと息を吐くとクルっと向きを変えると戻りながら小瓶を開けて一気に飲み干す。


「飲んだわよ!これで満足?それで?何なのコレ?」


 そう吐き捨てて小瓶を白髭の男に投げ返したミラテースは床にドカッと座り直す。白髭の男は小瓶の中が空になっている事を確認するとテーブルに移り、椅子をミラテースの方に向けて座ると含み笑いを浮かべる。


「直に分かる。それじゃぁ、脱げ」


「……はぁ?」


「脱げ、と言ったんだ」


 ミラテースは男の思惑を悟り、呆れ顔を白髭の男に向ける。


「アンタ……獲物に手をだしたら依頼主にどやされるわよ?」


「いや。死んでなければ構わないって事だから問題ないんだ。気遣い無用だ」


 しれっと言い放つ白髭の男にミラテースは蔑みを込めた目を向ける。白髭の男はその目を正面から受け止め、上唇をペロッと舐める。


「それで、素直に言う事を聞かないとどうなるか、さっき言っただろ?さ、脱げ」


 ミラテースはハッとした顔でアドエルに目を向け、悔しそうに息を吐いてから横座りになるとアドエルに呼びかける。


「アドエル。私が良いって言うまで私の方を見ないで頂戴」


 涙目のアドエルは黙って頷くとクルっと壁側に向きを変えた。ミラテースは深い溜め息を吐き、マントの紐を解き始める。外したマントを畳みながらミラテースは白髭の男に尋ねる。


「ねぇ。さっきの小瓶は媚薬?」


「あぁ。察しが良いな」


「そう。薬に頼らないと女を満足させられない奴の相手をさせられるって事ね。最悪だわ」


「言うじゃないか。まぁ、直にそんな事も言えない位に悦ばせてやるから期待してろ」


 湿った笑みを浮かべる白髭の男から目を逸らしたミラテースは畳んだマントを横に置いた。ミラテースは上着の紐に手をかけ、ゆっくり解きながら白髭の男に尋ねる。


「ねぇ。何で私の正体を知ってるの?アンタ達の前でフードを外した記憶は無いんだけど」


「あぁ、それな?ケルマーの残党が宮総研を襲撃した時に部下が厩舎の陰から見たんだ。フードが外れたお前が姿を現した所をな。それで、褐色の耳長と聞いて思い出したんだよ、斡旋所で見た手配書を」


「そう、あの時……それで?依頼主って誰なの?」


「さぁな?俺達はお前を斡旋所に運ぶまでが仕事なもんでな」


 対象が自分だと理解したミラテースの上着の紐を解く手が止まり、ミラテースは狼狽えた顔を白髭の男に向ける。


「アドエルは?アドエルはどうなるの?無事に戻してくれるんでしょうね!?」


「安心しろ。お前を斡旋所に渡して俺達が安全圏に辿り着いたら解放してやるさ」


「本当でしょうね……って、町の検問はどうやって通過するつもり?騒ぎになったらアドエルに危害が及ぶじゃないの!」


「ふっ♪明日の門衛は買収した奴らだ。騒ぎなんて起こらないし安全に通過出来るから安心しろ♪」


「っ……通過したら、アドエルを解放するのよ。分かったわね!」


「あぁ、通過して安全圏まで運び終えたらな。それより、手が止まってるぞ」


 ミラテースは小さく舌打ちをして上着の紐に手を戻した。

 男達はミラテースの服の上からでも分かる豊満な肢体に期待を膨らませていたが、肌着姿になったミラテースの引き締まった腰回りと綺麗な体の曲線に色めき立った。男達の卑猥な視線に晒されながらミラテースは今まで以上に顔を歪ませて上の肌着に手をかけるが、そこで手が止まった。白髭の男はニヤニヤしながら口を開く。


「どうした、早く脱げ」


 ミラテースは手で胸元を隠しながら白髭の男をキッっと睨む。


「アドエルに何かしたら……少しでも何かしたら承知しないわよ」


「あぁ。お前が素直に相手をしていれば子供に危害は加えない、って言ってるだろぅ?」


 ミラテースは白髭の男から顔を逸らし、ゆっくりと上の肌着に手をかけて、脱いだ。男達はミラテースのはち切れんばかりの胸に目を奪われ、その視線を一気に受けたミラテースは脱いだ肌着を胸元に押し当てた。胸を隠して動きを止めたミラテースに白髭の男は追い打ちをかける。


「どうした、下も脱げ」


 少し涙目になったミラテースは左腕で胸を隠し、右手で脱いだ上の肌着を横に置き、震える右手で下の肌着に手を当てた。男達が息を飲む中、ミラテースは腰を捩りながら右手だけでゆっくりと肌着を脱いだ。脱いだ肌着を横に置いたミラテースは直ぐに両腕で胸を覆い、足を交差させて下腹部を隠した。白髭の男はミラテースの恥じらいと怒りの混ざった顔を見ながらニヤリと笑って口を開く。


「それじゃぁ、まずは……」









次話「3-27-2」はミラテースがどれだけの事を耐えたのかと言う話ですがアレなので、苦手な方は28話に飛んで下さい。

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