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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
三章 カタアギロ横災編
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3-20 細工1




 朝になり、カトラはラトサリーと共に別邸に行くついでにサーブを庁舎に送る事になった。庁舎に到着し、気を張った様子で荷馬車を降りるサーブの背中を見送るラトサリー。そんなラトサリーに興味本位な視線を向ける衛兵に向かってカトラは舌打ちして睨みつけ、ハァっと溜め息を漏らしてからラトサリーに声をかける。


「出すわよ」


 カトラは委縮した門衛をもう一睨みして舌打ちを聞かせてから馬に合図を送り、庁舎を離れていった。ラトサリーは御者席に顔を覗かせてカトラに声をかける。


「カトラ。ありがとう、サーブを送ってくれて」


 カトラは視線を前に向けたまま口を開く。


「気にしないで。サーブには色々頑張ってもらわないといけないし、御機嫌取りもしないとだしね」


「そっ、そうね……でもカトラ、なんで昨日は私に話を合わせてくれたの?助かったけど、そのせいでカトラが怒られる事になっちゃった訳だし」


 カトラは視線を前に向けたまま口を開く。


「あなたが私怨でマイラスを手にかけたなんてサーブに聞かせたら、何を言い出すか……『何で止めなかったんですか!』って怒鳴られるだけじゃ済まないわよ。ちょっと考えただけで寒気がするわ」


「そ……そう……ね」


 苦笑いするラトサリー。カトラは前を見たまま更に口を開く。


「それに、あの程度は慣れてるし。と言う事で、分かってるわよね♪?」


 悪い笑みを浮かべてそう言ったカトラにラトサリーは苦笑いの度合いを深める。


「っ……何かしら……」


 カトラは横目でラトサリーを見てニタリと笑う。


「その様子だと分かってる様ね♪期待してるわよ♪」


 そう言ってカトラは馬に鞭を軽く入れ、別邸へと急いだ。





 昨晩、エサンカはカトラに油燈を渡されて別邸に戻され、サーブは宮総研母屋の台所に入ってラトサリーが待つテーブルの対面に座った。

 着替えを済ませたラトサリーは突入とカトラの協力の経緯をサーブに説明し、確実に報復する為と言う事以外を正直に話した。保冷室から戻って来たカトラも途中から加わってラトサリーの隣で適当な相槌を打った。渋い顔で聞いていたサーブは渋々納得した様子を見せたが、ふと頭をよぎった疑問をラトサリーに投げかけた。

『なぜカトラが装備したパラマカッディをラトサリーが手にする事になったのか』

 想定外の問いにラトサリーは『接近して確実に仕留める為に交換した』とは言えず、カトラに視線を送った。気付いたカトラは露骨に嫌な顔をして口を開いた。『鉄の棒だけだと威嚇には不足で道を開けてもらえないと思ったから交換した』とカトラは言い訳を捻りだし、したり顔をラトサリーに向けた。ラトサリーはホッと胸を撫で下ろしたが、サーブはカトラを睨みつけて静かな口調で問いかけた。

『威嚇してたのにマイラスの接近を許したのは何故か』

 したり顔を引きつらせたカトラは恐る恐るサーブの顔を伺った。サーブは右手でテーブルに頬杖を突いて左手を左膝に置くとカトラに冷めた目を向けた。ビクつくカトラが逃げの算段を講じる暇をサーブは与える事は無く、サーブの御説教は暫し続いた。





 庁舎に送り届けられたサーブは警護部に向かい、事務室に着いたサーブは昨夜の捜索に参加しなかった事をロクリフに詫びて何をしていたかを伝えた。なぜ捜索に宮総研が出張ってきたのかと言うロクリフの疑問はそこで解かれ、二人は執政部に向かいながら情報のすり合わせを行った。そうして到着した執政部の事務室の前で二人を出迎えたのは総務部のエーグリだった。

 エーグリは二人に会釈だけして奥の部屋へと歩き出し、サーブ達はエーグリに続いた。重苦しい空気と事務員の刺す様な視線に生唾を飲んだロクリフはサーブの様子を覗き見たが、サーブは廊下で話し合っていた時と同じで平然としていた。不気味に思ったロクリフと同様エーグリもサーブの様子が通常時と変わらない事に身震いを覚え、奥の部屋の扉の前で足を止めてサーブに声をかける。


「サーブ殿。随分と落ち着いている様だが、今から行う会合の議題は聞いてないのですか?」


「え?聞いていますよ。マイラス部長とトルビヤさん達の件とラト……妻の処遇の件ですよね?」


「そっ、そうだが……まさか、今回も奥様から何か策を授かっているのですか?」


「いえ、突入の経緯は聞いていますが、そう言う策とかは特に何も。変な贔屓をしないで俺が正しいと思う事を貫いて欲しいと言われただけです」


 穏和に答えてきたサーブにエーグリはホッと胸を撫で下ろす。


「そうですか。今回は黒幕殿の策に踊らされる心配は無いと言う事ですか。そう言う事なら安心して会合に臨めますよ」


 エーグリはそう言うと扉を開けて中へ入って行った。ロクリフはサーブが苦笑いして歩き出さない姿を横目で見つつ部屋に入り、置き去りにされたサーブは慌てて部屋に入った。扉を閉めたサーブが部屋の方に体を向けると、部屋中央の応接用のテーブルで待ち構えていた男達がサーブに只ならぬ視線を向けていた。ピリつく空気をサーブは気にする事無く歩き出し、エーグリに手で促された席に座った。





 別邸に到着したラトサリーとカトラは宮総研が間借りしている一階の部屋に向かった。カトラは部屋に入るなり窓際で床に座ってトルビヤ達の治療を行うオグマの元に向かいながらカリフに宮総研に戻る様にと指示を出し、ガンドには仮眠を取ってからオグマの補助を引き続き行う様にと告げた。オグマはトルビヤとサリットの足に手をかざしながらカトラに声をかける。


「おいカトラ、こいつら、どうせ処刑されるんだろ?もう外れる事は無いくらいにくっついたから、もう良いだろ?そろそろ休みたいんだ」


 カトラはオグマの前で足を止め、二人の足首に目を向けながら口を開く。


「完全回復させて頂戴。ついでに重労働する時に差し障りがありそうな古傷があったら処置して頂戴」


「は?何でそこまで……って、こいつ等をどこに送り込むつもりだ?」


 眉間にシワを寄せてそう言うオグマにカトラはニヤっと悪い笑みを見せる。


「彼らは私達の忠実な奴隷として働いて貰う事になるのよ。だからしっかり頼むわよ♪」


「はぁ?何だそりゃ?何をどうしたらそうなるんだ?」


 呆れ顔でそう言うオグマの横で床に寝そべるトルビヤは上体を起こしてカトラを睨みつける。


「おいっ!何ふざけた事言ってるんだ!俺達はお前とはそんな約束してないぞ!」


「あら?♪ラトサリーの奴隷になるって事は私の言う事も聞くって言う事になるのよ♪なにせ、彼女のモノは私のモノなんだから♪」


 カトラは勝ち誇ったような笑みを浮かべてそう言いながらトルビヤを見下ろす。カリフとガンドを見送って部屋の扉を閉めたラトサリーは呆れ顔をカトラに向ける。


「カトラ、何をどう解釈したらそうなるのよ?変な事言わないで」


 カトラは振り向いてラトサリーに笑いかける。


「え?だって、あなたが宮総研の手伝いに入る時はそうなるでしょ?しっかり使わせてもらうわよ♪」


 ラトサリーはカトラの元に向かい、肩をすくめて口を開く。


「そうね。でも、頻繁に使われると私のやりたい事が出来なくなるから程々にしてね。あと、彼らを頭数に入れた計画を立てる場合は先に声をかけてね」


「わかったわ♪」


 二人の会話を不機嫌な顔で聞いていたトルビヤはラトサリーに声をかける。


「なぁ、大丈夫なんだろうな?俺達、本当に処刑されないんだろうな?」


 ラトサリーはトルビヤに笑みを向ける。


「『だろうな』では無いですよね?奴隷のトルビヤさん?」


「うっ……処刑されないんでしょうね?」


 顔を歪めて言い直したトルビヤにラトサリーは笑顔で頷いてから口を開く。


「えぇ。多少の刑罰は発生すると思いますが、処刑は無いと思いますよ。あなた達が変に口を滑らせたりしなければ、ですけどね」


「あ、あぁ、わかってる……わかっています」


 ぎこちなく言い直したトルビヤにラトサリーは満足気に頷いてからカトラに声をかける。


「カトラ。そろそろ庁舎から迎えが来ると思うけど、面倒臭いとか言って変な事を口走らないでよ」


「大丈夫よ、人員確保の為ですもの。任せなさい♪」


「本当に頼むわよ。それじゃぁ、この後の予定だけど…………」


 そうしてラトサリーが作戦を皆に伝え終えた頃、窓の外から馬車が本館に近づいてくる音が聞こえ始めた。





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