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これ、ホントに呪いの指輪なの?  作者: 彩田(さいた)
一章 王都編
10/120

10:実験開始 針


「あなた達が次の組ね。どうぞ♪」


 フレールに勧められラトサリーの前に来た女性二人組。背の高い方の研究員は太さと長さがテーブルの脚程の角材を、背の低い研究員は小箱と細い縄の束が沢山入った籠を持っていた。籠を床に置き小箱をテーブルに置いた研究員は箱を開けてラトサリーに怪しい笑顔を向ける。


「ねぇあなた、痛いのは大丈夫よね?」


 箱の中身が裁縫道具だった事にラトサリーは顔を引きつらせる。


「あ……あまり大丈夫ではないですけど……」


「チクチクってする位だから、大丈夫だから、ね?♪」


 怪しい笑顔を向けてラトサリーに迫る女性研究員の横で、角材をテーブルに置いた研究員はラトサリーの右腕を掴み、縄でラトサリーの右前腕を角材に括り付ける。ラトサリーが驚いて声を出す前に前腕は角材に完全緊縛されていた。


「っ!速いし!でなくて何ですかコレ!!」


 驚くラトサリーが逃げようと立ち上がる前に研究員は角材を腕ごとテーブルに縛り付けて固定を完了させ、朗らかな笑みをラトサリーに向ける。


「さ、諦めて身を委ねて下さい♪」


「そ、その、その前に何をするか教えて下さいませんか?」


 ラトサリーが引きつった笑顔で研究員に質問をすると、針を手に取った研究員はラトサリーの右手薬指を押さえ、さらに怪しい笑みを浮かべて説明を始める。


「針で指輪の隙間を探す作戦よ♪」


「針で隙間を……それはもうやりましたから結構ですよ……」


「自分でやったと言っても加減したでしょ♪それに、隙間が無かったのなら隙間を作れば良いのよ♪」


「す……隙間を作るって…………」


 ラトサリーの顔から血の気が引いていくのを見てサーブは異を唱える。


「いくら何でもそれは乱暴すぎます!!」


「大丈夫、指輪が取れたら回復術式で治してあげるから♪チクチクチクチクってやるだけだから♪」


 清々しいまでの笑顔を見せる研究員の狂気に当てられ反論出来なくなるサーブ。フレールはラトサリーの様子を伺う。


「どうする?断っても良いのよ?」


 ラトサリーは左手を頬に当て、人差指で頬を何回かポンポンさせてから大きく溜め息をつき、針を持つ研究員に神妙な顔を向ける。


「……優しくしてくださいね」


 そう言ってラトサリーは左手でテーブルの脚を強く握り身構える。


「左手も固定しておきましょうか?」


 縄を持った研究員はそう質問すると同時にラトサリーの左手をテーブルに縛り付け終える。


「っ!!だから速いし!!……でもありがとうございます」


 半ば呆れつつ感謝を述べ、ラトサリーは針を持つ研究員に顔を向け頷いて合図を送る。


「良い覚悟ね。そうこなくっちゃ♪で、自分でやった時はどんな感じだったか教えて」


「そうですね……指輪の淵をなぞって隙間が無いか見たり軽く刺したりしましたが、隙間も無かったですし……上手く刺せなかったみたいで痛くありませんでした」


「痛くなかった……?まぁ、まずは貴方がやったのと同じ事を試させてね♪」


 そう言って研究員は顔をラトサリーの右手に近づけ、針で指輪の回りをなぞり、軽く突いたりしてからラトサリーの顔色を伺う。


「……何か硬い?それに隙間は無さそうね。で、本当に痛くないの?結構チクチク刺してみたんだけど」


 不思議そうにラトサリーに尋ねる研究員に向かってラトサリーは拍子抜けしたような顔で答える。


「はい、何とも……本当に刺したのですか?」


「ふーん?そうきたかぁ……じゃぁ、本番行きましょうか。一気に突き刺してグリグリするから我慢してね♪」


 高揚する研究員は指輪の境目に針を水平に突き付けラトサリーにニヤリと目を向ける。ラトサリーは無言で頷いて目を瞑って横を向き、歯を目一杯食いしばる。


「いくわよ!!」


 研究員の掛け声に、一同は息を飲む。訪れた静寂を研究員のつぶやきが打ち破る。


「……刺さらない?なんで?」


 研究員がこぼした言葉が耳に入るとラトサリーは痛みを感じない事を不思議に思い、目を開けて右薬指へと目をやる。すると、刺さらずにいる針に研究員が力を加えていた。研究員は狼狽し、体勢を変えて針に渾身の力を込める。すると針がへし折れ、折れた際の軽い金属音と共に折れた針の先がテーブルに転がる。


「第三組、残念!失敗!!」


 フレールが失敗を宣言すると研究員は手に残された折れた針を裁縫箱に投げ捨て、目をむいてフレールに食って掛かる。


「所長!もうひとつ案があるからやらせて下さい!!」


「あらぁ、そぅ?いいわよ♪」


「では準備してきます!ウヌカ、片付けておいて!!」


 もう一人の研究員に声をかけてから駆け足で部屋を出ていく研究員。扉が閉まった時にはラトサリーを縛っていた縄は全て解かれ束にされていた。ウヌカはテーブルに転がる折れた針と縄の束を仕舞うとラトサリーの横に移り手を差し出す。


「さぁ、縛られていた手を出して下さい。回復術式を施しますので」


 ラトサリーが両腕を見ると縛られた部分が赤くなっていた。ラトサリーは赤くなった腕をしばし眺め、ウヌカに笑みを向ける。


「ありがとうございます。でも、次の方をお待たせするのも申し訳ないですし、そこまで痛くないので大丈夫ですよ」


「わかりました、では全て終わってから治療しますね」


 そう言ってウヌカは道具一式を持って研究室へ戻っていき、同時に別の研究員二人がラトサリーの前に進み出た。




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