はじまり
「は〜い皆さ〜ん 一列に並んでくださーい」
ゾロゾロと人々がその声に従って移動する。ここはどこだろう?
見渡す限り何もない。ただの真っ白な空間だ。
「今日ここに来られた皆さんはぁ〜神様のちょっとした手違いで死んでしまいましたぁ〜」
「なのでこれから転生先を抽選で決めてもらいま〜す」
二人の天使のコスプレ?をした男とも女とも言えない風貌の子たちが間伸びした喋りで冗談を言っている。
周りからは「は?何言ってんだ!」「帰らせてよ!」などと怒号が飛ぶ。
「すいませ〜んさすがの神様も生き返らせることはできないので、別の世界で今の記憶を引き継いだまま転生させることにしましたぁ。」
「出血大サービスですよぉ〜」
「そんな勝手なことが許されるのかよ!? せめてチートとか特典つけろや!」「責任者出せ!」「私本当に死んじゃったの!?」
さらに非難轟々となるが、二人はどこ吹く風で答えた。
「責任者である神様は暇じゃないのでこんなところには来れませ〜ん」
「神様は責任者なので何をしても許されるので〜す」
あまりの身勝手さに唖然とする人々。
「では一番前の人からこのガラガラを回してくださいね〜」
「う、うわ手が勝手に!!」
ガラガラガラガラガラガラ
「出ました!転生先は漫画、『伝説の剣と魔法の書』ワイバーン使いのAです〜」
「え?やったー」と言った途端、先頭の男性が姿を消した。
「ガラガラの中身は個々人のランダムですがぁ〜一応みなさんの生前の趣味嗜好を反映した神様からの大温情です〜」
「ヤッタネ!ラッキー!」
さらに次の女性が回すと「出ました!転生先は小説、『悪役令嬢ですがアイドルに転職!?王子様の推しは私!?』のアイドルグループevilgirlsメンバーB!」
「はわわわわ私の好きな小説ぅぅ〜〜」と叫んで女性は消えた。
更にその後も悲喜交々さまざまな遺言(?)を残して人々は消えていった。みんなの反応を見ていると自分が見知った世界へ転生しているようだ。
やばい・・・何だか嫌な予感がするが、ついに私の番だ。
まだ覚悟も決まっていないのだけれど手が吸い寄せられるようにガラガラに向かっていく。
ガラガラガラガラ・・・コロン
「出ました!転生先はゲーム、『呪われた村と神子の祟り』村人C!」
「わあああああああやっぱりいいいいい」
いやああああああああああああああああああああ!!!!
ホラーゲームばっかり遊んでないで乙女ゲーをプレイすれば良かった!!!遊ぶのはいいけど自分の身に降りかかるなんて!!
・・・・はっと目が覚めるとそこは古い家だった。今何時だろう?
家の中は薄暗いが、月明かりでかすかに見える私の頭には濡れタオルが載せてあり高熱で寝込んでいた間に前世の記憶を思い出してしまった。
今の私の名前は水上千代子。
この龍神村に住むただの村娘だ。今年で15歳になる私は父母と10歳の弟、祖父母の六人家族で暮らしている。
代わり映えのない毎日と田舎特有の情報網の速さに辟易はしていたけどこんな毎日がずっと続くと信じていた。
でも何の変哲もないこの村が恐怖の舞台になることを私は知っている。
私が前世でプレイしていたゲーム『呪われた村と神子の祟り』は、村の大飢饉によって生贄に捧げられた神子の無念がその妹の体に憑依し、村人全員の虐殺。
そして霊となった村人が徘徊する廃村を陰陽師である主人公が祓うといった内容だ。
あああああやばいよ〜このままじゃ殺された上に霊となって彷徨った挙句祓われちゃうよ〜
どうしよう!!