3. TS作品は人気になりやすい?
なろうでは『ポイント、ブクマ数、感想数、レビュー数』などはよく作品の人気に繋がる数字です。特にポイントは、なろうの作品ランキングに入るために必要なものですね。
今回まずはポイントの分析から始めます。その後はブクマ数、感想数、レビュー数も見ていきます。
実際にページビュー(PV)とユニークアクセス(UA)なども大事な数字ですが、APIのデータに含まれていないのでここではまず割愛します。
まずはTS作品の総合ポイントの分布のヒストグラムを見てみましょう。
図3.1
これは図1.5と同じデータで、y軸も対数にしていますが、もっとはっきり見えるようにもっと区切りを細かくしました。
案の定、1と3のところはありません。それに対し0と2は随分多いですね。それはブクマでも評価ポイントでも一回もらえるポイントが最低限は2ポイントだからでしょう。そして中央値は100くらいのところにあります。
実はこの分布は全部の作品と比べたら随分すごいものです。もしなろう全体の作品の総合ポイントの分布を見たら、0の方が多いですよ。
このエッセイも参考に。
>> https://ncode.syosetu.com/n3630fb/12/
次はTS作品の総合ポイント分布と全体の作品の総合ポイントを一緒に並べて比較してみます。
図3.2
左の方は図3.1と同じですが、区分は違うのです。今回ははっきりと【0, 1~9, 10~99, 100~999, 1000~9999, 10000~99999, 100000~】に分けて、縦軸にしてします。
真ん中はなろうの全部の作品のポイント分布です。分布の違いは一目瞭然です。本当に全体は0いっぱいですね。
そして右の方はそのポイントを持つTS作品と全体の作品の割合です。
どうやら0ポイントの作品の中でTS作品は0.1%くらいしかありません。1~9も少ないです。TS作品は全部の作品の0.95%なのに、低いポイントの作品での割合はそれ以下です。大体のポイントは高い方に集まっているから。
それってつまり基本的に『TSものならポイントもらいやすい』ということです。少なくとも0になる可能性は極めて低いでしょう。
どうしてこうなるか? その理由は色々考えられますね。例えば、もしかしてTS作品だったら簡単にポイントを捧げるという常連さんがたくさんいるからかもしれません。それとも、TS作品を書いた作者は文章力が高くて平均より面白く書けるという可能性も考えられますね?
それと、ひょっとしてここで『TS作品』の定義は適切なキーワードが入っている作品だからです。そしてもちろんちゃんとキーワードを設定したら見つかりやすいし、たくさんポイントをもらう可能性も高くなります。少なくとも閑古鳥が鳴くということはないでしょう。
このエッセイにもデータを分析してキーワードの大切さを説明してあります。
>> https://ncode.syosetu.com/n2628fr/10/
それはさておき、原因はどうであれ結局TS作品はポイントをもらいやすいというのは明らかです。データはそう教えてくれるから、この主張は納得できるでしょう。
次に連載作品と短編作品の違いも見てみましょう。
図3.3
図3.4
これは図3.2と同じですが、図3.3は連載作品だけで、図3.4は短編作品だけとなります。
連載作品の方が短編作品よりポイントをもらいやすいというのは、全体的同じですね。でも詳しく見るとTS作品の方は短編でも0ポイントは少ないです。ほとんど10-999ポイントに集まります。どうやら短編作品は連載作品と比べたら低いポイントをもらう可能性は更に低くなるようです。でももちろん、高いポイントももらいにくい。大体の短編のTS作品は10~99ポイントが多いです。
そして連載作品の中で、もし完結作品だけ見ればこうなります。
図3.5
やっぱり完結作品ならどんな作品でも低いポイントである可能性はほとんどようです。それでもTS作品の方が高いポイントに偏っているというところは変わりないでしょう。
次に、年別で作品のもらったポイントを見てみましょう。
図3.6
2012年は目立ちますね。理由は簡単ですぐわかります。TSのトップである『賢者の弟子を名乗る賢者』は2012年の作品だからです。この作品だけで圧倒的ポイント高いので全体的に2012年のポイントが高いでしょう。
しかし中央値を見れば2012年でも普通ですね。中央値は全体の順番の真ん中から取った数字だから、たとえ一つだけ高いポイントをもらっても中央値にはあまり影響ありません。
なので全体的作品の一般的な数字を表示するには平均値よりも中央値の方が相応しいです。中央値から見れば2010年からポイントはいきなり高くなりますね。
ただし最近ポイントはどんどん減っていく傾向が見えるのは、多分作品の品質が減っていくということを示すわけではないと思います。よく考えてみれば昔から載っている作品は長い時間人に読まれていたから、ポイントが高いってのも不思議なことではないはずです。
同じように、次はブクマ数も見てみましょう。
図3.7
傾向はほとんど総合ポイントとは変わりはないですね。平均値は2012年だけ高いってのも同じ理由です。
次は感想の数。
図3.8
これも同じような傾向ですが、中央値は古いものの方が高いという傾向があります。もしかしてそもそも作品の数が少ないというのは原因です。2005年は1作しかないが、その作品の感想数は6だから総計も平均値も中央値も6となります。
その他はほとんど1件しか感想をもらっていないのはほとんどです。感想はポイントやブクマよりももらいにくいから。
それと、今使っているデータは2022年1月1日時点のものなので、2021年の作品の感想数の中央値は0であるというのも納得できると思います。ほとんどは投稿したばかりの作品だから。それに古い作品なら売れないとわかってすでに削除したという可能性も高いです。
最後はレビューの数も見てみましょう。
図3.9
レビューがもらえるのはほんの僅か一部の作品だけだから、中央値0になるのは当たり前ですね。平均値から見ると2012年はもちろんですが、今回2016年の方が目立ちます。
ちょっと調べてみたら2016年にもTSの書籍化された名作があるようです。その小説のデータも見てみましょう。
タイトル:
無欲の聖女は金にときめく
作者名:
中村 颯希
総合ポイント:
127943
ブクマ数:
39779
感想数:
3105
レビュー数:
35
初回掲載日:
2016-01-06 15:40:57
キーワード:
R15 身分差 悪役令嬢 の娘 勘違い 入れ替わり がめつい主人公 TS 性転換 髪 男主人公 女主人公 西洋 学園
ポイントと感想は敵わないものの、レビュー数だけ見れば『賢者の弟子を名乗る賢者』よりもたくさんもらったのですね。
最後に、作品に書かれたレビューの数を1、2、3+に分けて棒グラフを描いてみたらこうなります。
図3.10
レビューを書いてもらった作品の中でもたった1件しかないものがほとんどですね。3以上は極めて少ないです。
それにレビュー1件だけ見れば、2007年は特に目立ちます。原因を調べてみたらどうやら2007年には15作しかなくて、その中の2作はレビューが書いてあるなので、『2/15≈13.33%』ということです。
ちなみにその中の一つは私の書いたレビューです。まさか自分のやったことはこんなに作品データの統計に影響を与えるとは。
>> https://novelcom.syosetu.com/novelreview/list/ncode/13750/
実はこの作品はとっくにエタったものですが、個人的になんか面白いと思っているのでイチオシレビューを書きたいほど特に気に入りです。
しかしやっぱりできれば最後まで続きを読みたいから、どんな作品でも『エタ』はあまり望ましくないことですね。それに実は『エタ』と『ポイント』はある程度関係性があります。
ということで次回もまだポイントや人気度の分析は続きますが、メインの話題は『エタ』のこととなります。