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無題のシナリオ。~ぼくとあの娘のTRPGリプレイ~  作者: 蒼蟲夕也
4章 現代編『美郷荘殺人事件』
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第53話 探偵誕生

サキコ「ごめんなさい。どうも、足の怪我が悪くなってて。……熱も出始めているみたい」


――そしてサキコは、辛そうにソファへ横になるでしょう。


A「……どうしよ。《応急手当》を使ってあげるべきかな?」

B「使わんでええと思う。それ、一日に一回しか使えないんでしょ?」

A「えー、そうかなあ」

B「こういうのってたぶん、ここで彼女を治したとて、シナリオ的に変化はないんとちゃう? ……まあ、もちろん、Aちゃんに任せるけど」


――ちなみに彼女はいま、ニンジロウさんから市販の解熱剤を受け取っています。


A「ふーむ……。さすがに、それだけじゃあ不安な気がするなあ」

B「たしかに」

A「ここはやっぱり、使ってみましょう! ひょっとすると、彼女と仲良くなれるかもしれないし!」


――では、あなたたちはサキコに、適切な応急処置を施すことができるでしょう。


サキコ「……ありがと。助かったわ」


――その過程で、あなたたちはとある情報を得ます。

 サキコの足はいま、紫色に変色してしまっている。

 この足では、歩くことはおろか、立つことすらままならない、と。


あくむ「ううっ。サキコさん、こんな足で旅行に出るなんて、正気じゃありませんことよ。もっと安静にしてなくちゃ」

サキコ「……心配してくれてありがとう。……でもアカリの状態が良くないって知って、いてもたってもいられなくて……それにYouTuberって、配信を休んでいる時じゃないと、友だちにも会いに行けないから」

あくむ「友だち思い、なんですのね」

サキコ「ええ。あなたたちと一緒」

あくむ「……………」


――そうしてあなたたちが過ごしていると、重々しい雰囲気の中、ふとササオが手帳を取りだし、すぐにしまいました。


ササオ「俺は、刑事だ。……まさかこんなことになるとは思わなかったが、この事件は俺が仕切らせてもらおう」

あくむ「刑事、さん?」

ササオ「うむ」

あくむ「ほんとにぃ?」

ササオ「なんで不思議に思う」

あくむ「いや……なーんか、印象が悪いな、と思いまして」

ササオ「……失礼なやつだな」


――ササオは、しかめ面であなたを睨みます。


A「これは、《読心術》チャンス! いまの言葉の真偽を確かめます!」


――いいでしょう。【シークレットダイス:??】。

 ではあなたは、ササオが嘘を吐いている、と感じました。


B「お」

A「ふふふふふ。正体見たり!」


――とは、いえ。

 このシナリオにおいて、あなたたちは疑心暗鬼に囚われています。

 《読心術》に失敗した時、その情報が嘘か本当かに関わらず、「あなたは○○が嘘を吐いているように感じる」と答えることを言っておきます。


A「あら」

B「《読心術》の情報は、参考にするくらいがええ、ってことやね」


――さて。

 では、あくむが疑いの目を向ける中、ササオが話を続けるでしょう。


ササオ「ええと……ごほん。まず、この情報をみんなと共有しておく。ニンジロウさんがアカリさんを最後にみたのは、20時のことだったな?」

ニンジロウ「え、……ええ。夕食の牛すじ煮込みカレーを届けに行ったんです。妻は……最近ずっと様子がおかしかったんですが、好物のカレーだけは喜んで食べてくれたから……」

あくむ「ニンジロウさんのカレー、絶品ですものね」


――するとニンジロウは、「ありがとう」と哀しげに笑ったあと、


ニンジロウ「いつもなら三十分くらいで食器を返しに来るはずなのに、なかなかキッチンに来ない。それで寝室に行ったら……」

ササオ「……手つかずのままのカレーが放置されていた、と。それで不審に思って、あちこち探した結果、21時過ぎに死体を発見した」

あくむ「ニンジロウさんがわたくしたちの部屋に来たのは、ちょうど21時くらい、でしたっけ」

ニンジロウ「ああ、そうなる」

あくむ「つまり、こういうことかしら。犯行時刻は、20時~21時の間、と」

ササオ「そういうことだ」

べに「ちょっとまって。……外部犯の可能性もあるんじゃない?」


――するとササオは、この辺りの地図を取りだして、首を横にふります。


ササオ「いや。それはない。このあたりには他に休めるところもないしな。外の寒さは、さっき身をもって体験したばかりだろ。もしまだ犯人が外にいるなら、氷漬けだよ」

あくむ「……ふむ。でもそれくらい、なんとでもなるかも。事前にキャンピングカーを森の中に止めておく、とか」


――(相変わらず、めちゃくちゃシナリオの穴を突いてくるな。さすがは姉さんの娘、というべきか)


ニンジロウ「その線も薄いと思う。この辺りは車が乗り付けられるようなところはないからね」

あくむ「なるほど。……倉庫の中にも隠れられるようなところはなさそうでしたし……つまり、こういうことですのね。……犯人は、この中にいる、と」


――しんと、室内が静まりかえります。

 その沈黙は、皆の肯定を物語っていました。


ササオ「そこで提案があるんだが、いったん俺が、全員の部屋を捜査して、この場で殺人犯を拘束してしまおうと思う。その方が、みんな安心して眠れるはずだからな」

あくむ「えっ。ササオさんが?」

ササオ「ああ。俺は刑事だからな」

あくむ「……えっ。……ちなみに捜査ってもちろん、荷物を漁ったりしますわよね……?」

ササオ「当然、そうなる」


――彼の言葉をわかりやすく言い換えると、こうなります。

 「お前たちの荷物を好き勝手に探らせろ。その代わりに自分が犯人を見つけてやる」と。


べに「はあああああああああ? おっさんそれ、完ッ全にセクハラやんか。無理無理無理無理ッ。ぜったいパンツの臭いとか嗅ぐつもりや!」

ササオ「は、はあ? ふざけるな! 誰が嗅ぐか、そんなもん!」


――ちなみに今のセリフ、判定なしで嘘ではないことに気づいていいでしょう。


あくむ「……とは、いえ。正直、会ったばかりの殿方に荷物を探られるのは、ちょっと厭ですわ」

ササオ「そうか……。しかしどうする? このままでは、犯人を野放しにすることになる。そうなると、証拠隠滅のチャンスを与えかねんぞ」

あくむ「うーん…………」


――ではそこで、ニンジロウさんが手を挙げるでしょう。


ニンジロウ「では、こうするのはどうでしょうか? 我々の中から代表者を選び出して、その人たちも捜査に加わってもらう、というのは? ……私は、円筆あくむさん、色式べにさんがいいと思うが。どうかな?」


――皆の視線が、あなたたちに集まります。


あくむ「ふうむ。まあ、それなら」

べに「私はそれでもちょっと厭だけれど。他の皆が納得するなら」


――ちなみに、そもそもその場を動けないサキコと、サキコを気にかけている様子のケンノスケはその意見に賛同してくれます。


あくむ「……ふむ。では、承知いたしました。その依頼、お受けしましょう」

べに「お嬢様探偵誕生、って感じね、あくむちゃん」

あくむ「うふふふふ。わたくしこう見えて、こういう日をちょっぴり待ち望んでいてよ。……目指すは、令和のミス・マープル!」

べに「……それだと、一生独身ってことになるけど」

あくむ「それは……まあ。どうなるかわからないけれど! とにかくわたくし、立派にやってみせますわ!」


――はい。

 ではまー、そーいう感じになりました。


【To Be Continued】


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