表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無題のシナリオ。~ぼくとあの娘のTRPGリプレイ~  作者: 蒼蟲夕也
4章 現代編『美郷荘殺人事件』
50/74

第49話 ペンション客たち

A「ええっと、そんじゃー、順当に談話室から行きましょっか」

B「せやねー。こーいうときって結果、GMが提示した探索順が正規ルート感、ある」


――では、あなたたちはペンション内に戻って、談話室へと向かいます。

 談話室は、五、六人くらいなら余裕でくつろげるようになっていて、暇つぶし用のボードゲームや本の類がずらりと並んだスペースでした。

 そこにはいま、一人の男が険しい表情で座っていて、彼は煙草を吸いながら、何やら奇妙な機械を操作しています。


あくむ「はあい、どうもこんにちは!」

べに「……………(ぎゅっとあくむの二の腕を掴んで、男を警戒する)」

あくむ「ちょ、ちょっと、べに。わたくしだって、それほど社交的な性格じゃないのよ? あなたも挨拶しなさいな」

べに「べつにええやん。男なんかと話さへんでも」

あくむ「そういうわけにはいかないでしょう……」


――と、二人が痴話喧嘩していると、男は渋い表情でそっぽを向きます。


べに「なんやこいつ」

あくむ「こらっ。……ご、ごめんなさいね。連れが人見知りなもので」

男「……別に構わん」

あくむ「あら、そ、そうですか。……ちなみにわたくし、円筆あくむと申します。こっちは色式べに。滞在中は五月蠅くするかも知れませんが、ご容赦くださいませね」

男「……それも、べつに構わん。他人の素行が気になるタイプじゃない」


――そういって彼は、「山城ササオ」と何かのついでのように、名乗ります。


B「ふうん。ワイルド系おじさんって感じやね」

A「たぶんこの人、シナリオのタイトル的に、容疑者ポジションですよね……」

B「わからんで? 被害者かもしれへんし」

A「ちなみにこの人、『機械を操作』してるんですよね? その機械にあたしたちは見覚えがありますか?」


――ぱっと見ただけではわかりません。

 さらに、あなたの視線に気づいたらしいササオは、機械を懐にしまってしまいました。


A「なんだーっ。けちーっ」


――さらに彼は、「さっさとどっかいけ」的な雰囲気を纏いながら、煙草を吸い始めました。


B「はあはあ。そういう感じね」

A「……これ以上、情報もなさそうですし、次行きましょうか」

B「ほな、1F廊下へ」


――では二人は、ペンション内を移動して1F廊下を歩きます。

 するとその道中、車椅子に座った女性とすれ違いました。

 とりあえず、”知力”判定。難易度は”難しい”、15以上で成功です。


A「ほい。【ダイスロール:7+8】 ギリギリ成功」

B「はいな。【ダイスロール:8+11】 楽勝で成功」


――では二人とも、彼女が中の下程度の知名度のユーチューバー、すぎさっきーこと、杉上サキコであることに気づくでしょう。

 すぎさっきーは、その線の細い容姿に似合わぬ、身体を張ったネタでウケを取るタイプの芸風で、最近怪我をして休止中だったはずです。


べに「……あっ」

あくむ「あなたひょっとして、すぎさっきー?」


――すると彼女は困ったように笑って、


サキコ「あらあら。私のこと、知ってるの? 『はろはろ~、すぎさっきーだよ~♪』なんてね!」


――と、ファンサービス込みの返事をしてくれるでしょう。


A「おお、配信者の鏡」

B「せっかくやし、サインもらってええ?」


――では、ミーハーな二人がサインをねだると、彼女は残念そうに頭を下げて、


サキコ「ごめんなさい。いまはプライベートだから、そういう要望には応えないことにしてるの。でも、握手とか写真なら大丈夫よ!」


――と、答えますね。


A「しょぼーん。……握手と写真がオッケーなら、サインしてもらってもよくなぁい?」

B「まあ、サインは転売目的で使われることもあるからねぇ」

A「あ、一応、その足について聞いてみてもいいですか?」


――いいでしょう。


サキコ「ああ、この前の撮影で怪我しちゃってね」

べに「へえ? やっぱりユーチューバーって、危険なこともするんですか?」

サキコ「ええ。私みたいなのは特にね。見た目のギャップで売ってるところ、あるから」


――改めて補足しておくと、杉上サキコさんはいかにも「文学少女」という感じ女性です。


A「図書委員とかやってそうな?」

B「黒髪の乙女ってかんじの?」


――はい。


あくむ「でもでも、ちょっぴり不思議。どうしてそんな足の状態で、こんな雪山までやってきたんですか?」

サキコ「ああ。……それはね、このペンションが、古い馴染みのところだから」

あくむ「古い馴染み? ……ってことは、古里ニンジロウさん?」

サキコ「いいえ。その奥さんの、古里アカリ」

あくむ「ああ、そういうこと。それで、療養に?」

サキコ「まあ、それだけじゃないけど……」

あくむ「それだけじゃない、というと?」


――ええと。情報はここまで。

 廊下ですれ違っただけですから、あんまり長話はできないこととします。


べに「あ、あ、よろしければ、あとでまた、おしゃべり、したいんですけど……」

サキコ「もちろん。機会があったら、いつでもお付き合いするわ」


――そういって彼女は、車椅子を転がして談話室の方向へ向かっていくことでしょう。


A「…………………へー。なるほど」

B「ん。どうしたん?」

A「いいえ。別に………」

B「?????」


――では、次はどこへ向かいますか?


A「そうですね。ではまず、キッチンの方へ行ってみましょう」

B「キッチン? 2F廊下ではなく?」

A「はい。……こういうとこのキッチンってたいてい、1Fにあるイメージなので。とりあえずそこから回っていこうと」


――仰るとおり設定上、キッチンは1Fにあります。


A「ほらね」


――では二人は、ペンション内にあるキッチンへと向かうでしょう。

 そこには、食器棚の前で佇んでいる、一人の中年男がいました。


あくむ「あら?」

べに「……コックさん?」


――いいえ。ぱっと見でわかるのですが、どうもそういう感じじゃないですね。あなたたちと同じ、お客の一人のようです。

 彼はあなたたちに気づくやいなや、さっと頭を下げて、


男「あ、すいません! ……って、なんだ。ここのお客さんか」


――と、ばつが悪そうにしています。


あくむ「そこで、何をされてるんですか?」

男「あ、ああいや、ぼくはほら、ここで何か、食べれるものがないか探してたんだよ」

あくむ「食器棚で? それなら、もうちょっと別のところを探った方がいいのでは」


――すると彼は、視線を宙に泳がせて、


男「あ、そっか! ぼくって馬鹿だな。あはははははは」

べに「っていうかそもそも、無断で取ったらあかんやろ。泥棒やで」

男「た、確かにその通りだ。ただここ、お菓子の一つもなくって、……お腹が減っちゃってね」

べに「事前に買ってくるべきやろ、そんなん」

男「かさばるのが面倒だったんだよ」


――そこで男は、簡単に身分を明かします。

 彼の名前は、古見ケンノスケ。G県内にある、ネジ工場の社員、とのこと。


A「おやおや。美女二人が相手とみて、唐突に名乗ってきましたよ、こいつ」

B「ふつう、旅行先のお客に、自分の仕事まで話したりする?」

A「婚活かな?」


――ええとそれは、プレイヤーが男であっても同様の動きをしますので、ゲーム的な情報開示だと思っていただきたい。


A「はあああああ。なるほど、了解です。……まあどっちにしろ、不気味な感じですね」

B「百合の間に挟まろうとする男は、死あるのみ」


――(なんだか、こっちまで責められている気がしてきた)


【To Be Continued】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ