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無題のシナリオ。~ぼくとあの娘のTRPGリプレイ~  作者: 蒼蟲夕也
3章 ファンタジー編『終末の再会』
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第46話 やさしい物語

(その後、セッションは一時中断。ティータイムを兼ねた休憩となる)

(その間、Aによるチュートリアルシナリオの解説が行われた)


A「……で、世界が滅びたってわけ」

B「はあはあ、りょーかい。状況はわかった。つまりぜんぶ、こーなったのはAちゃんのせいってことやね」

A「てへへ」


――ヘルディンは魔神復活の儀式に居合わせましたが、フォルターの目的はヒューマンを殺すことでした。故に彼女は、辛うじてあの状況を生き残ることができたのでしょう。


ヘルディン「とにかく。これで私の仕事は終わったわ。あとは戻って、ギルドに報告するだけね」

シュリヒト「あ、あ、あ、あ……あのその。……ぜひ、お礼を……」

ヘルディン「え? 別に気を使ってもらわなくていいわよ。お互い仕事をしただけ。そうでしょ」

シュリヒト「……いや。借りは返す。それ、部族の習わし」

ヘルディン「へえ。几帳面な獣人もいたものねえ」

正義「そーいう子なんです。昔から」

ヘルディン「……わかったわ。私は、ミッテの街の”三叉路”っていう宿屋に泊まってるから」

正義「ミッテの街……。ほな、おなじ拠点やったんですか」

ヘルディン「まあ、この辺りの冒険者はみんなミッテに集まるからね」

正義「”丸焼き亭”には出入りされてへんのですか?」

ヘルディン「”丸焼き亭”は……ちょっと厭な思い出があってね。しばらく出入りしないことにしてるんだ」

シュリヒト「わかるぅー」


――では二人は、ヘルディンとの関係性に”借りがある”を追加してください。


A「やったー」

B「あんまり良い関係性じゃない気がするけど」


――さて。

 では、悪漢を撃退し、オスト村の問題を解決したあなたたちは、アルメ村長から感謝の言葉を受け取った後、無事、ミッテまで戻ることができるでしょう。

 街に戻ると、あなたたちの冒険はすでに語り草になっていました。あなたたちは無事、クナイペを始めとする仲間たちから、一目置かれる存在となったようです。


A「えっへん」

B「まあ、邪教徒四人に勝ったわけやからね」


――竜人は、この世界において負け知らずの戦士ですから。それを打ち負かしたというだけでも、あなたたちの腕前が並々ならぬものだということがわかったのでしょう。


A「みんなーっ。褒めて褒めてー」


――たくさん褒められました。


A「やったー!」


――さて、そんなある日のこと。

 ミッテの街に、ちょっとした騒ぎが起こります。


通行人(GM)「おいおい、とんでもなくでっかい鉄の箱が、大通りを走っているらしいぞ!」


――噂を聞きつけたあなたたちが窓から外を見ると、”丸焼き亭”近場の空きスペースに、一台の大型トラックが停車していました。


通行人「なんでも、最近こっちにやってきた”転移者”が、新たな店を始めるんだってさ……」


――もちろんあなたたちは、その店主の名前に心当たりがあります。

 田中一郎。”転移者”向けのタブレット端末を取り扱うその店は、”転移者”グループの庇護の元、大通りに面する形で開業しました。


一郎(GM)「へいらっしゃい! 最新のタブレット端末が格安だよ! いまなら、手書きの解説書付きだ! 異世界人だって使えるぜ」


――あなたたちは予感します。この界隈はこれまでより一層、賑やかになるだろう、と。

 ……はい。お疲れ様でした。

 ファンタジー編シナリオ『終末の再会』、グッドエンドとなります。


B「はい。お疲れ様~」

A「おつかれさまでしたああああああああああああああああああああああああ」





(少女たちが、ぱちんと手と手を合わせる)

(対する男も、ほっと安堵の表情を漏らした)


――たいへん楽しいロールプレイでした。

 イチローさんは末永く、あなたたちに恩を感じ続けることでしょう。

 二人とも、体力と精神力を最大まで回復し、”女神の寵愛”をリセットして下さい。


A「はあい」

B「ところで、キャラの成長処理は?」


――ファンタジー編では、固定で一つだけスキルを習得します。


A「あら。一つだけなのかあ」


――ファンタジー編には、武器と防具の要素があるので、あんまりごちゃごちゃしないようにしているわけです。


B「そっかあ。……いろいろ考えて作られてるんですねえ」


――個人製作のルールだから、穴も多いけどね。


A「で、で、で! 次の! 次のセッションですけど!」

B「せやね。予定立てとこか」


――(おや。Bちゃんの方も参加してくれるのか)


A「うーん。次はどっちがいいかなあ。エクシリオの謎も気になることだし……。現代編の方も、気になるっちゃ気になるんですよねー」


――では、次は現代編もやってみよう。良いシナリオがあるんだ。


A「良いシナリオ?」


――秘匿ハンドアウト有りのお話でね。巧く回れば、結構楽しい。


B「秘匿ハンドアウト? 二人で?」


――うん。


A「なになにー? ひとくー?」


――ええと、要するに……、


B「それぞれ、キャラクターが秘密を抱えた状態でセッションするんよ」

A「人狼ゲーム、みたいな?」

B「それとは似て非なるもの、かな」

A「それぞれ”秘密の目的”みたいなのがある感じ?」

B「まあ、それに近い、かな。シナリオ次第なんやけどね」

A「へー、面白そう!」

B「でも、秘匿系はうちも未体験なんです。……それに聞いた話、この手のシナリオは結構、事故が多い、とか」


――きみたち二人なら、きっと大丈夫だと思うよ。


B「……ほな、チャレンジしてみましょか」


――では、決まりだ。


A「ねえねえ、おーいーてーかーなーいーで。事故ってどういうこと? どういう状況のこと?」

B「せやね。そのうち教えたる。……TRPGにおける、光と闇の物語を……」

A「うわ。すっごい気になる、それ」

B「じゃ、次に学校来たらね♪」

A「ええええええ……っ。なんでー?」


(などと話ながら、少女たちは席を立つ)





(少女たちが去り、男は一人、部屋へと残された)

(彼が本棚からとりだしたのは、年季の入った一冊のノートである)

(途中まで書きかけのそれを紐解いて、彼は独り言ちる)


――エクシリオの、正体。

 姉さん、そこを書かずに逝っちゃったんだよなー。


(そして、長い長い、沈黙)


――私が、続きを書くしかないか。

 やれやれ。


【See You Next Session】


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ファンタジー編シナリオ:『終末の再会』解説

 このシナリオは、『終焉の儀式』で生死不明だったお助けキャラクターと『再会』することを目的に作成されたものです。

 基本的には2名以上でのプレイを想定しており、もしプレイヤーが足りない場合は、エルフ族、ドワーフ族、ホビット族の中からランダムでお助けキャラが登場する仕様になっています。


・シナリオ概要

 この世界に存在する諸種族の中で、もっとも多様性に富んだ種族――ヒューマン。

 ここは、そんなヒューマンたちが絶滅してしまった世界だ。

 この世界ではいま、女神の導きにより”異世界転移者”と呼ばれる人々が、世界各地へと現れるようになっていた。

 今回は、そんな”異世界転移者”が引き起こした小さな騒動の物語。

 しかし、そんな騒動の裏には、邪神を崇拝する者たちの影が迫っていた……。



・以下、簡単な疑問点の解説です。

Q:酒場にいたドワーフは何者?

A:チュートリアルシナリオのお助けキャラです。

 かつてドワーフと冒険したプレイヤーがいた場合、ここで再会する予定でした。

 今回のシナリオでは、プレイヤーと喧嘩した後そのままどこかへ逃げ去ってしまいました。


Q:黒装束AとCはどうなった?

A:たぶん自力で逃げ出して、どこかへ逃げました。いまも元気に暮らしています。


Q:田中一郎の一件、この他の解法はあるのか?

A:誰か、適当な人を雇って在庫を盗ませる、イチロー本人を説得してさっさと村を後にする、村長に事情を話して仲裁役を頼み、損失をいくらか取り戻す、などを想定していました。

 この辺、ある程度筋が通っていればダイス判定で解決してもよい仕様です。


Q:ホビット族をお助けキャラに選んだ場合、どこで再会していたか?

A:雑貨屋の店主、ライヒがそのポジションでした。

 つまり、最初のシナリオでホビット族がお助けキャラクターだったプレイヤーは、このシナリオで彼と敵対することになっていたわけです。



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