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無題のシナリオ。~ぼくとあの娘のTRPGリプレイ~  作者: 蒼蟲夕也
3章 ファンタジー編『終末の再会』
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第45話 終末の再会

A「そんじゃ、黒装束を起こしていきましょうか」

B「せやね。……あ、ちなみに、いまにも死にそうなやつとかは……?」


――この中で一番死にかけてた子は、たったいま命を絶たれました。


B「おっけー♪」

A「じゃ、順番にやっていきましょうか」


――なるほど。

 ではあなたは、黒装束Aを起こします。

 結論から言うと……彼の情報もさっきのと変わりませんね。要するに彼は、雇われの身のようです。


B「ハズレか」

A「雑魚三人は全員傭兵なのかも。ちなみにGM、弱い方の黒装束たちは、みんな同じ種族なのですか?」


――いいえ。

 黒装束A、Bがダークエルフ、Cだけがエルフ、という構成ですね。


B「では、Cも起こしてみましょか」


――いいでしょう。

 では黒装束Cは、目を覚ますやいなや、ぶるぶると震えながらあなたたちに命乞いするでしょう。


黒装束C(GM)「た、助けてくれぇ……死にたくねぇ……」

正義(B)「そら、お前の持ってる情報次第やな」

シュリヒト(A)「すべてはけ」

黒装束C「じょ、情報って言っても……あんたら、俺に何が聞きたいっていうんだよ!」

シュリヒト「知ってること、すべて」


――では黒装束Cは、実家に遺した両親のことや、炒り豆に塩をかけたものとビールの相性は最高だ、という話をしました。


A「なに言っとるんやコイツ」

B「ほんまやで」


――だって、知ってること全てっていうから……。


A「そうじゃなくて! あなたたちを雇った、エクシリオとかいうやつのこと!」

B「あんまり渋るようなら、黒装束Bの死体をぐいぐい押しつけますけど」


――(鬼だ……)

 では彼は、引きつった表情で、こう続けるでしょう。


黒装束C「あ、……ああ! そのことか。エクシリオってのは、フォルター信奉者の中でも最も高位の存在だ。やつはヒューマンを心底憎んでいて、それと姿形が似てる、あんたら”転移者”のことも、倒さなきゃいけない相手だと思ってるみたいだな」

正義「ふーん。……で、そんなお偉いイカレトンチキが、なんで一郎さんを狙ぅたん?」

黒装束C「そりゃあ……トラックごとこっちの世界にやってくる例は珍しいからな。このまま、やつらの道具がこの世界に持ち込まれると、”転移者”どもがこの世の中に蔓延る原因になる」

正義「そういうことか……」


――そして黒装束の彼は、「これ以上話はない」とばかりに押し黙ります。


A「それじゃ、最後に……」


――と、その時でした。


A「ん?」

B「お。イベントの気配」


――あなたたちが黒装束Cの話に夢中になっていると、突如として……【シークレットダイス:??】 ……シュリヒトの身体が、乱暴に掴まれます。


シュリヒト「……へ?」


――見ると、いつの間にか拘束を解いていた黒装束(隊長)が、彼女の首筋に鋭い爪を押し当てていました。


黒装束(隊長)「動くな、薄汚い”転移者”め」

シュリヒト「わ」

正義「げ」

シュリヒト「生きてたのか」

正義「……やらかした。ケチらず回復しとくんやった」


――あなたたちが後悔していると、黒装束(隊長)は不敵に笑って、


黒装束(隊長)「この獣人娘の命が惜しければ、武器を捨てろ」

正義「えええええ……マジか」

シュリヒト「正義。私、見捨てて」

正義「アホいいなや。そういうわけにはいかんやろ」


――では、正義は手持ちのアイテムを地面に置く、ということでいいですか?


B「……しかた、ないですかね」

A「なんとか敵の注意を逸らして、反撃することは……」


――相手もプロです。この状況で逆転するのは、少し難しいでしょう。


B「しゃーない。各種アイテムが入った鞄を、地面にぽいっと投げ捨てます」


――では、目の前にいる竜人は、その中にある治癒ポーションを拾い上げ、


黒装束(隊長)「くっくっく。一つもらうぜ」


――と言って、その蓋を開けるでしょう。


B「くそーっ。うちの資産が……!」


――竜人が、治癒ポーションを飲み干そうとした、その時。

 彼の喉元に、一本の矢が突き刺さりました。


正義「え」

シュリヒト「あら」

黒装束(隊長)「ば……ばかな……ッ」


――矢は、立て続けに竜人の胸へと突き刺さり、……その息の根を止めます。


黒装束(隊長)「ぐ……が……ッ!」


――断末魔の言葉と共に、彼はその場にばたりと倒れました。


B「ちょっとまって!? ポーション! うちの治癒ポーションは?」


――地面に落ちて、ぜんぶ無駄になってしまいました。


B「くそー! なんなんや、いまのイベント!」

A「梱包用のひもじゃ、不完全な拘束だったということでしょうか。……まあいいや。ちなみに、矢を放った人は、どなた?」


――そうですね。シュリヒトが、自分を助けてくれた人に目を向けると、……そこにいたのは、一人の……女エルフでした。


女エルフ「危ないところだったわね、きみ」

シュリヒト「ありがと。助かった」

女エルフ「さっき、ずいぶんと大きな音がしたでしょ。それで気になって、ここまで来てみたの」

正義「大きな音? ……ああ、トラックのクラクションか」

女エルフ「たぶんそう」

正義「いやあ、助かりました! 連れの命の恩人です」

女エルフ「いいの。私も、邪教徒を探してここまで来たんだから」

正義「ってことは、こいつがあんたの標的だった?」

女エルフ「そういうこと」


――さらに彼女は、冒険者としての自分の身分を明かします。


正義「なんや。同業者やったんか」

女エルフ「そうね」

正義「申し遅れました。俺は超勇者正義。こっちは……」

シュリヒト「シュリヒト」

女エルフ「あら、そう。私はヘルディン。弓使いのヘルディンよ」


――そう言って彼女は、握手を求めてくるでしょう。


A「…………! ……おおおおおっ!」

B「?」

A「ヘルディンさん! 生きとったんかワレェ!」

B「???? 知っとるNPCなん?」

A「そうです! チュートリアルシナリオでお助けキャラだった子ですよ!」

B「マジか。感動の再会やん」

A「ああ、……このシナリオのタイトル……そういうことか」


――とはいえ、シュバルツとシュリヒトは別人であることを、改めてお忘れなく。


シュリヒト「……ありがと。ともだち」

ヘルディン「え? あ、うん。友達ね」


――ではあなたたちはヘルディンとの関係性「友人」を書き加えておいてください。


A「やったあ! こ、こんどこそ、ちゃんとしたお友達になりましょうね? ヘルディン」

B「……ところでGM、この後何か、すべきことはありますか?」


――ありませんね。エンディングの処理に入ります。


B「良かったあ。……もう、ポーションを無駄にしたくなかったから……」


――(ブレないな。この娘も)


【To Be Continued】


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