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無題のシナリオ。~ぼくとあの娘のTRPGリプレイ~  作者: 蒼蟲夕也
3章 ファンタジー編『終末の再会』
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第41話 狂信者たち

――さて。

 無事に全ての取引を終えたイチローは、まず風呂に入って身なりを整えた上で、たっぷりあなたたちに感謝の言葉を言うでしょう。


一郎「うおおおおおおおん! 心の友よおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

正義「はいはい。友ですよ」

一郎「マジで……マジでありがとう! おれみたいなやつに、ここまでしてくれるなんて……! あんたにゃ、一生返せない恩が出来たぜ!」

正義「やれやれ。出会ったときはあんだけ不機嫌まき散らしておいて、現金な人ですこと」

一郎「へへへへへ。あの時はすまんかったな!」


――ではこの瞬間、あなたたちはキャラクターシートに、”コネクション:田中一郎(感謝されている)”を書き加えてください。


A「コネクション?」


――はい。あなたたちのキャラクターはこれから、彼に助けを求めることができます。冒険に行き詰まったときや、今回のような課題を解決する際、彼の手助けを得ることができるでしょう。


B「なるほど。……例えば、タブレット端末を仕入れたくなった時は……」


――ええ。彼から、安く端末を購入できます。


B「そりゃまたずいぶんと……GMのアドリブ力が必要なシステムですねえ」


――まあ、『えんぴつTRPG』は、あくまで身内向けのコミュニケーションゲームだからね。ゲームと言うよりは、創作に近いルールだと思うよ。


A「へー、そうなんだ。あたし、『えんぴつ』以外のルール知らないから……」

B「普段、こういうゲームで遊ぶから、Aちゃんの家系って、物書きさんが多いのかな」

A「……関係ないですよ。そんなの」


――いずれにせよあなたたちは無事、依頼をこなすことができましたね。


A「いやー、良かった良かった! では、そろそろ……エンディングに……?」


――いいえ。まだもうちょっとだけ、物語は続きます。

 イチローはその後、改めて”転移者”グループへの加入を決め、森からトラックを移動させるための手配を申請します。

 もはや、あなたたちにできることはないでしょう。


B「ほな、そろそろ街へ帰ろか」

A「……ホントに、それでOK? これ以上、やれることない?」

B「ないんとちゃう? GMがないっちゅーとるんやし」

A「あっ、そっか。じゃ、馬車に乗って帰りまーす♪」


――そうですね。ではあなたたちは、イチローに別れを告げ、ミッテの町への帰路につこうとした……その時でした。

 ”五感”判定をどうぞ。難易度は”難しい”、15以上で成功です。


A「おや? 【ダイスロール:11(+12)】」

B「……【ダイスロール:10(+9)】」


――では、聴覚の鋭いあなたたちは、草むらに紛れる”奴ら”の気配に勘づくことでしょう。

 全身を黒装束に包んだ彼らの数は、4人。そのうち一人は、チーム・リーダーと思われるガタイの大きい男でした。

 彼らは、素早くあなたたちの前に現れて、すらりとナイフを抜きます。


イチロー「おいおいおいおい。なんだなんだなんだ? ま、まさか、ライヒの手のものか?」


――イチローは顔面蒼白にして、トラックを庇うように後退ります。


シュリヒト「いや。ちがう」

正義「せやね。……ライヒは、完全に騙されとった」

イチロー「えええ……ってことは……?」


――そこであなたたちは、”知力”判定をどうぞ。

 この世界の住人にとっては常識レベルの情報ですので、難易度は”超簡単”。

 8以上で成功です。


B「……あー。うち、なんとなくわかったかも【ダイスロール:7(+8)】」

A「はい、【ダイスロール:7(+5)】」


――彼らは、邪神フォルターを信奉する者たち。

 要するに、ヒューマンの敵ですね。


A「ヒューマンの……敵?」


――はい。

 この世界ではかつて、邪神フォルターによる大量虐殺が行われました。

 その衝撃はいまもなお、この世界の住人の精神に影響を及ぼしています。

 正義たちが見たところ、彼らは明らかに、フォルターの信奉者であることが窺えました。

 彼らの教義は、ただ一つ。

 ヒューマンをあぶり出し、殺すことです。


B「ヒューマン。……この人たちひょっとして、”転移者”と”ヒューマン”をいっしょくたにしてる感じ?」


――はい。

 ”転移者”たちは、女神がこの世界に寄越した、ヒューマンに似た人種です。

 彼らにとって”転移者”もまた、排除すべき敵なのでしょう。


A「なるほど。……じゃ、今回の場合、正義くんも標的、ですよね?」


――そうですね。逃がすつもりはないでしょう。


A「しっかしこれまた、唐突に現れたなあ。何か情報、取り逃したっけ?」

B「ま、ええんちゃう? ファンタジー系のシナリオやし。最後はやっぱり、バトルがないと!」


――まあ、そういうことですね。


A「この世界の秩序は、辛うじて保たれているに過ぎない。……そういうことかな」

B「敵は、こちらを取り囲んでいるんですよね?」


――はい。


B「まずったなあ。正義、死んでまうかも」


――黒装束の狂信者たちは無言のまま、じりじりと間合いを詰めています。

 周囲は、森。助けを呼べる状況ではありません。


B「ふーむ。どないしたもんかな……」

A「戦闘は避けられないでしょ。シュリヒトはもう、武器を抜いて戦闘態勢に入っています」

B「もちろん、それは正義もそうなんやけどね。ロールプレイ的に……。ねえGM。この世界の冒険者は、ちゃんとした戦闘訓練を積んでいるって設定なんですよね?」


――そうですね。冒険者ライセンスは、ある程度の訓練を受けたものでなければ発行されません。


正義「ほなイチローさん。トラックの中へ隠れていてください」

イチロー「え? お、俺も戦わなくていいのか?」

正義「構いません」

イチロー「しかし……」

正義「我々は、冒険者なので。命を賭けるんが、仕事なんです」


――なるほど。では、イチローはみなさんから離れて、トラックの方へ逃げていきます。


B「ついでにいまの、《正義の味方》スキルを発動させて……いいです、よね?」


――もちろん。非常に誇り高い行動でした。精神力を上限値まで回復してください。


B「やった!」


――さて。ではそろそろ、……連中も、しびれを切らしたことでしょう。

 黒装束の男たちは、あなたたちに一斉に襲いかかってきます。

 戦闘です。


【To Be Continued】


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