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無題のシナリオ。~ぼくとあの娘のTRPGリプレイ~  作者: 蒼蟲夕也
2章 現代編『おまえは だれだ?』
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第26話 最後のゲーム

――では”世界”は、ゆったりとした仕草でテーブルにつきます。

 そして……タロットカードをランダムに引き、そのうちの三枚を裏向きで並べました。


黒男(A)「あー、はいはい。正体当てっこクイズの時間か」

世界(GM)「……まあ、そう言われると身も蓋も無いが、その通りだ」

黒男「言っておくが、天才であるぼくはすでに、自分の正体に気づいている。ぼくは天才だからな。だから、もう、これ以上このクイズを続ける理由はない、これっぽっちも」

世界「さて。それはどうだろう。ひょっとすると、単なるはったりかもしれないし」

黒男「いやでも、タイムイズマネーというし。もう良いだろ? 帰らせてくれよ」


――さすがにここは、ロールプレイで誤魔化せる場面ではないですね。


黒男「じゃあ、言わせてもらおう。ぼくの正体は……」

世界「そこまでだ」


――そう言って彼は、黒男の言葉を遮ります。


世界「全ては、ゲームによって決定しよう。きみの質問に答えるのは、その後だ」


――焦らないでください。

 メタ的な話ですが……このタイミングで答えを言われても、手順をスキップしたりはできませんから。


A「なるほど。そーいうもんですか」


――そーいうもんです。


世界「ゲームのルールは単純だ。これからきみに、三枚のタロットカードを見せる。

 それを見てきみは、自分の立場が『高い』か『低い』かを宣言してもらいたい。

 全問正解することで、ゲームクリアだ」

黒男「ゲームクリアって、自分から言っちゃうのか……」


――比喩的にね。


黒男「わかった。ちなみにそのゲーム、失敗したらどうなる?」

世界「そうだね。……有り体に言わせてもらうと、ゲームオーバーになる」

黒男「ゲームオーバー。……ゲームオーバー、ねえ」


――言い換えると、”死亡(ロスト)”エンドということです。


A「えっ、えっ、えっ。……それ、ホントに言ってます?」


――はい。


A「万一のときは、暴力で解決したりは……」


――できませんね。ぶっちゃけるとそのナイフ、もう用済みです。


A「ふええええええ。……それ、すっごく厭なんですけども」


――え?


A「だってだって! ここまで一生懸命頑張ってきたんですよ!? これで黒男が死んで物語が終わったりしたら……! 今夜きっと、悔しくて眠れません!」


――お昼寝すればいいのでは?


A「そーいう問題じゃないよお!」


――まあ、シュバルツの時は悲惨な結果に終わりましたからねえ。

 とはいえ、いくら頼まれてもシナリオに変更は起こりません。

 クイズに正解するか、死ぬか。そのどちらかです。


A「ぐぬぬ……。き、緊張してきた……!」


――っていうか、何をそんなに渋ることがある?

 だいたい答えはわかってるんだろ?


A「わかってます! わかってますけど! ちびっこ相手とのスマブラ勝負で、絶対勝つって自信があっても……命がかかってるってなると、手が震えるでしょ。崖際の攻防とか、怖くてできなくなっちゃうでしょ? それと一緒ですよお」


――自分を信じ抜くことだよ。


世界「……では、ゲームを始めよう。まず、こちらが提示するのは、このカード。『IX 隠者』だ」

黒男「ええっと、ええっとぉ。……なんか、頭おかしくなってきた……。IXってそもそも、いくつだっけ……?」


――天才キャラの発言とは思えないんだけども。


A「ええっと……その。あ、そーだ! 恋人ちゃん! 恋人ちゃんはどういう雰囲気?」


――彼女、なんだか床の方を見ていますね。


A「やっぱりヒントはないかーっ!」


――さて、どうでしょう。


黒男「うーんと、うーんと。さすがに……、『同じ』って答えなきゃいけないみたいな、そーいうずるな問題じゃないよな?」

世界「当然だ。私は”魔術師”とは違う。そういう意地悪問題は出さないよ。きみに求める答えは、『高い』か『低い』か。それだけだ」

黒男「わ、わ、わかった。……正解は……『低い』、だとおもう」

世界「……ふむ。では、次の問題を」

黒男「ちょっとまて! いまの問題の成否は?」

世界「それを答えると、次の問題のヒントになってしまうだろ」

黒男「うううううう…………」

世界「それでは、次の問題。――『XIV 節制』だ。このカードが示す数字は、きみのそれよりも『高い』か、『低い』か?」

黒男「……………………」


――…………………。


A「……………………なんか、お腹痛くなってきた…………」


――…………………。


A「……………………」


――…………………。


A「……………………」


――いや、悩みすぎでしょ! 日が暮れちゃうよ!?


A「だってだって……大切な大切な、ひとつの命が……」


――ゲームに感情移入してくれるのは嬉しいことだけどね。そこはもうちょい、気軽に……。


A「恋人ちゃんを……いったん、ナデナデしても良いですか?」


――ほう。いいでしょう。

 あなたたちはこの、異常な空間の中にいて、イチャイチャしています。

 ……さらにあなたは、”五感”判定。”簡単”です。ファンブル以外で成功とします。


A「……? 【ダイスロール:6】」


――ではあなたは、とある事実に気づいて良いでしょう。少女がなんだか、天井の方を見上げたまま、ぴくりとも動かないことに。


A「上の方……? そういえばここ、天井はどうなってるんです?」


――暗闇が広がっているだけで、なにもありません。あなたが最初に窓の外を見たとき同様に、不思議な空間ですね。


A「さっきは下の方を見ていた。今度は上を向いてる……。そっか、恋人ちゃん! それとなく、あたしに答えを教えてくれていたのね!」


――さて。それはどうでしょう。


黒男「がぜん勇気が湧いてきたッ! 答えは『高い』だ!」

世界「いいだろう。……ところで、いま気づいたのだが、……”恋人”の仮面を被った少女よ。きみ、ひょっとして、”選ばれし者”に、それとなくヒントを出していたね?」

黒男「……ぎくり」

世界「次の問題、きみは後ろを向いていなさい」


――すると少女は、しぶしぶ二人に背を向けます。


世界「”選ばれし者”も、下手なイカサマはしないことだ。次にそういうことに私が気づいたら、強制的にゲームオーバーとさせてもらう。いいね?」

黒男「わかった。……いいだろう」

世界「最後の一枚は、――これだ。『XX 審判』のカード。このカードが示す数字は、きみのそれよりも『高い』か、『低い』か?」

黒男「もう、迷わないよ。答えは、『低い』だ」

世界「……なるほど」


――すると、”世界”の仮面を付けた者はタロットカードを片付けて、席を立つでしょう。


世界「きみの意見は、よくわかった」

黒男「あってる、かい?」

世界「まあまあ。そう急かすなよ」


――それでは、エンディングの処理に入ります。


【To Be Continued】

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