第22話 20号室の男
――あなたたちは、半開きになっている20号室へ向かいます。
A「20号室……タロットカードで言うなら”審判”の部屋か」
――部屋に入ると、いつも通りの病室に一人、仮面を上下逆さまに被った、痩せぎすな男が座っていました。
A「えっ。逆さま……?」
――彼は、どこか投げやりな口調で、こういうでしょう。
痩せた男「あ、どうも……こんちゃっす」
黒男「はい、どうも。ところであんた、何者だ?」
痩せた男「なんですか、急に……わけわかんねえんですけど」
――彼はあからさまに関わりたくなさそうですね。
黒男「じゃあ、こういう聞き方をしようか。あんた、どの部屋の住人だ?」
痩せた男「そんなの決まってるじゃないっすか。ここっす。20号室っすよ」
黒男「ふーん。ほんとにぃー?」
痩せた男「なんだよ、あんた。疑ってるのか?」
黒男「それじゃあ……この情報を突きつけよう。『16号室 日記帳の切れ端』だ」
――すると彼は、その内容に目を通した後、
痩せた男「これが何か?」
――と言いますね。
A「おや。ハズレだったかな?」
――さあて。どうでしょう。
A「っていうかぶっちゃけこいつ、”吊された男”でしょ?」
――さあて。どうでしょう。
A「だってだって、仮面が逆さまな時点でもう、ダウトですもの! 《読心術》を使うまでもないもの!」
――さあて。どうでしょう。
A「となると、12号室のあの女の人は、やっぱり”吊された男”じゃなかったんだ! たぶん、あの人の正体こそが、”審判”! この部屋の住人と入れ替わりになってるんですよ!」
――さあて。どうでしょう。
A「GMが『さあて。どうでしょう』BOTになっちゃった。……まあ、いずれにせよ、こいつが殺人鬼であることを完全に理解した黒男は、よく注意して彼の動きを見ています。万が一にも、奇襲を受けないようにね」
――では、あなたは人殺しでも見るような目で”吊された男”を見ているでしょうね。
A「あ! あと恋人ちゃんにも注意を促します。人質に取られちゃいけませんし」
――いいでしょう。恋人ちゃんは、あなたの後ろに隠れます。
A「おっほ! かーわいい! ナデナデしようっと」
――では黒男は、人殺しかもしれない男の前で、緊張感を保ったままイチャイチャしました。
痩せた男「ってかあんた、なんなんだよ? 用がないなら、部屋から出て行ってほしいんだが」
黒男「いや、そういう訳にはいかん。…………………………………いかん」
――? どうしましたか?
A「ああいや、ここでどういう風に言えば、カッコ良く犯人を追及できるかな、って」
――はあ。
では、待ちましょう。お茶とお菓子でも食べながら。
(~~~~~~~十分経過~~~~~~~)
A「よし。決めた」
――もぐもぐもぐもぐ。……あっ、ふぁあい。
黒男「犯人は、……この中にいる! お前のしたことは、まるっと全部、お見通しだ! 円筆家の名にかけて、全ての謎を解き明かしてみせる!」
――なんか、さんざん悩んだわりにはパクリっぽいね。
黒男「ぼくたちは、ここに来るまでの道中でたくさんの死体を見てきた。その犯人は恐らく、きみだ。そうだろ」
痩せた男「は? 何を根拠に、そんなことを言うんだよ」
黒男「単純だ。お前が”吊された男”で、”審判”の女性を殺したのは、極めて明白なこと! ……複数犯も考えたけど、さっき見かけた、日記帳の切れ端を見たら、考えが変わった!」
痩せた男「日記って、”塔”が残したやつかい?」
黒男「そう。……『仕事は、あの男に頼んだ。このようなことを頼めるのは、あいつしかいない。』この一文! この一連の殺人が、複数犯ではないことを示している!」
――すると、逆さまの仮面を被った男は、深いため息を吐いて、
痩せた男「………あっそ」
――と、肩をすくめます。
そして、あなた同様にたっぷり間を作った後、こういうでしょう。
吊された男「まあ、たしかに俺は”吊された男”だし、この病院の連中をたくさん殺したのも、俺だよ。……でも、だからどーしたってんだ?」
黒男「え?」
吊された男「ここには、警察も法律もない。どーせ俺たちは、この病院を出ることはできないんだ。俺を罰するようなものは何もないんだぜ」
黒男「えーっ。でも、ダメだろー。人、殺しちゃだめだろー」
吊された男「それに俺は、『殺してくれ』って言われたやつしか殺してないぜ? 例の日記を書いたアイツだって、俺に頼んだって言ってたろ」
黒男「ううーむ……」
――そして”吊された男”は、懐からメスをちらつかせて、ニヤニヤしています。
A「えっと、じゃあいまの、『「殺してくれ」って言われたやつしか殺してない』のところ、《読心術》で」
――良いでしょう。【シークレットダイス:??】 ……はい。あなたにはそれが、明確に嘘だとわかりました。
黒男「この、くそ野郎……!」
吊された男「あ? なんだお前。やるつもりかよ?」
――吊された男は、メスを構えるでしょう。
A「うう……。この場でやっつけてやりたいところですが、武器がニンテンドースイッチしかない。せめてメスが手に入っていれば、黒男の《ナイフ》スキルがさく裂したのに! ……仕方ない。ここはいったん、部屋を出ることにします」
――はい、わかりました。
A「そうだ! ひょっとすると、”節制”のガラクタ部屋なら、ナイフの代わりと言わないまでも、それっぽく扱えるものが手に入るかも! なんて考えつかなかったんだろ! とりあえず、そっちへ……」
――しかし、ですね。残念ながらその前に、イベントが発生します。
A「え?」
――黒男と恋人ちゃんの二人が外へ向かった、その時。
それまで棒立ちだった”吊された男”が、突如として飛びかかってきました!
A「あっ。で、でもよく注意していたから、奇襲は受けないはずです!」
――そうですね。ですので、攻撃は自動成功にはなりませんでした。
しかし……【シークレットダイス:??】、【シークレットダイス:??】なんと、”吊された男”の一撃は、攻撃を回避しきれなかった恋人ちゃんを切り裂くでしょう。
黒男の目の前に、ぱっと鮮血が舞います。
恋人「………………………ッ!」
――そして少女は、悲鳴を上げることもできないまま、廊下に倒れ伏すでしょう。
A「て、て、て…………ッ!」
黒男(A)「てめえええええええええええええええええええええええええええ!」
――戦闘開始です。
【To Be Continued】




