第21話 勢い系探索者
A「あ~~~~~~~~~~~、いっこ”悪魔”の人に聞き忘れてた! まだ未探索の部屋、どういう感じなのか聞いておけば楽できたのに!」
――残念だけど、もう遅いね。
A「ちくしょ~~~~~~~」
――では黒男は、次に何をしますか?
A「しゃーないしゃーない、切り替えてこ。16号室へ向かいます」
――では、あなたが扉を開くと、室内はひどく混沌としています。
これまであなたは、この建物の中で奇妙なものをたくさん見てきましたが、その中でも16号室は飛び抜けて異常でした。
その部屋の内部を一言で説明するならば、崩壊した瓦礫の山。
ばらばらになった建物の残骸が、室内全体に山となっているのでした。
黒男(A)「ほおほおほお。なるほど、”塔”を暗示する部屋は、こうなってるか」
――それでは黒男は、【五感】で行為判定を行って下さい。難易度は”普通”、ファンブル以外で成功とします。
A「えっ。なんだかGMが企んでる気がする。いやです」
――ダメです。これは強制です。黒男は早急にダイスを振って下さい。
A「しょーがないにゃあ。……【ダイスロール:12】……おや、クリティカルだ」
――では、あなたは”それ”を、はっきりと目の当たりにしてしまいましたね。
瓦礫に混じって、見るも無惨にばらばらになった死体です。それはもはや、生前の姿を想像することもできないほどの損傷具合で、完璧に粉砕されてしまっています。また、黒男はその中に、かろうじて原形を保っている人間の頭部にも気づくでしょう。それをよく見ると、雷を受けて倒壊した“塔”の仮面を被っています。
黒男(A)「なんじゃあ、こりゃあ! どういうことだ!」
――とりあえず、狂気値を加算して下さい。【1D6-2】です。
黒男「【ダイスロール:6】 ほげえええええええええええキモし! グロし!」
――ちなみにいま、狂気値は何点ですか?
A「えーっと。いま、18点ですね」
――20点になると、長期的狂気が発現します。あなたは、最低でも一ヶ月以上は治らない精神のダメージを受けてしまったことになるでしょう。特別なスキルなしには、このシナリオ中の回復は望めません。
A「なんてこったい。それ、ずーっと赤ちゃん言葉になるってこと!?」
――もう一度ダイスを振り直しますので、赤ちゃん言葉とは限りませんよ。
A「うーん。この部屋、さっさと出た方がいいかもしれない」
――ちなみに、このあと部屋で調べられそうなのは、瓦礫の山だけですね。
A「罠な気もするけど、なんでこの人がこうなったか気になるしなー。……よし。調べます」
――では、”五感”判定……を、お願いしたいところですが、先ほどクリティカルが出たので自動成功とします。
あなたは瓦礫の中から、破れた日記帳の切れ端を発見するでしょう。
A「よみまぁす!」
――元気な返事、大変よろしい。
その内容は、以下のようになっていました。
『16号室 日記帳の切れ端』
いろいろ考えたが、やはり“選ばれし者”のために、自らを犠牲にしようと思う。
ただし、普通の死に方はしたくない。できることなら、自分らしい死体を用意して、少しでも“選ばれし者”の心に残りたい。
それが私の、最後の願いだ。
仕事はあの男に頼んだ。
このようなことを頼めるのは、あいつしかいない。
A「…………ふむ。……ちなみにこの文字は、どういう感じですか?」
――どういう感じ、とは?
A「脅されて書かされた感じがするかどうか」
――うーん。では《読心術》で判定をします。
【シークレットダイス:??】 ……ふむ。
ではあなたは、書き手の心情まではわかりませんでしたね。
A「まあ、GMの意外そうな顔で、そうした処理が想定されていないことはわかっています。この文章はきっと、この人の意志で書かれたものなんでしょう」
――(妙なところで鋭いんだよな、この娘)。
では、あなたは次に、どうしますか?
A「まだ行っていない部屋は、もうない、かな?」
――そうですね。一通り回った感じでしょう。
A「気になる伏線として、誰かがこの辺りで動いているらしいことがわかっていますが、……しゃーない。何か見逃しがあるかもしれないし、最初から入っていきましょうか」
――いいでしょう。
黒男「どーも! 12号室!」
――女の死体が吊られています。
黒男「はろー! 13号室!」
――開きませんね。
黒男「どうだ! 14号室!」
――太った女性が、満足げにガラクタを愛でています。
黒男「こんにちは! 15号室!」
――ガラス越しに、悪魔の仮面を被った男がベッドで寝ています。
黒男「16号室はさっき行ったばかりだから。……いったん待合室に戻って、西側廊下へ!」
――はい。そうするとあなたは、一つの事実に気づきます。
先ほどまで締まっていたはずの20号室が、半開きになっていることに。
黒男「ほう。入ってこいと言わんばかりだな。……だが敢えてここは、17号室へ!」
――無気力な女が、ぬくぬくのお布団にくるまれて寝ています。
黒男「18号室!」
――”月”の仮面の女性が、「うわ、また来た」みたいな顔してます。
黒男「はい、どうも。なんか情報、くれない?」
月「え。ぜったい厭よ」
黒男「うう。やっぱり、勢いでどうにかならないか。……なにか他に、ここでできることは……?」
――そうですね。彼女、大失敗振られてますからね。強いて言うなら、暴力で言うことを聞かせる、とか。
A「あー、むりむり。黒男は無駄な暴力を振るいませんので」
――では、特になにもありません。
黒男「……次! 19号室!」
――”太陽”の仮面を被った酔っ払いが、ウイスキーをぐびぐびやってます。
黒男「では、おじさんにパンチします」
――えっ。この娘怖い。数秒前に言ったこととはやくも矛盾している。
A「GMは、早急にパンチに関する判定を行って下さい」
――ええと。……まあ、いいでしょう。男は酩酊していたので、自動成功とします。
黒男「この、うそつきめ! うそつきめ!」
太陽「うぎゃあ」
黒男「情報を! 情報をよこせ!」
太陽「ひええ……わかりましたぁ」
――そうして太陽の男は、一枚の紙束を寄越します。
どこかで見た覚えのある情報。どうやらこれまで見かけた、患者の情報みたいですね。
『患者17番:無気力。反応を示さない。
患者18番:■■■■(かすれていて読めない)
患者19番:無駄な時間を過ごす。
患者20番:■■■■(かすれていて読めない)
患者21番:「“選ばれし者”へ。1階にて待つ」』
黒男「おまえーっ。こんなものを隠し持って! なぜだ!?」
――黒男は問い詰めますが、太陽の仮面の男はあまりの突然のできごとに、気を失ってしまいました。
黒男「ふん、ざこめ」
――ちなみに、突如として豹変した黒男に、恋人ちゃんはすっかり怯えていますね。
A「では、ぎゅっと彼女を抱きしめた後、頭をなでなでしましょう」
――はい。
それではあなたたちは、酔っ払いの部屋でたっぷりとイチャイチャしました。
A「酔っ払いは嫌いなんです。つぎ行きましょ、つぎ」
――ひどい。
【To Be Continued】




