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部活見学に行こう/攻略対象者登場

時の流れとは早いもので、入学から1ヶ月が経とうとしていた。そして私はある1つの問題に直面していた。それは――――


「あ、そういえばさ、カナは部活どこはいるか決めた?」


そう、部活動である。


魔術学院では原則として全員部活動に入ることになっている。だが私はまだどの部活に入るか決められていないし、今はちょうど新入生歓迎週間なので見学に行くなら今だろう。


「いや、それがまだ決まってなくて…」

「じゃあ一緒に色々見て回ろうよ!僕もまだ決めてないんだ〜」

「いいね、行きたい」

「それなら私も行くわ!」

「じゃあ俺も!」

「それなら皆で行こうか。皆見に行きたいところはある?」

「私はダンス部を見に行きたいわ!」


マリーは確か前の魔法実習の自由発表でも踊っていたので、ダンスが好きなのだろう。


「俺は剣術部と調理部あたりかな」


アランは随分と両極端なチョイスだが、剣は強いしパイは焼くしで今までを見ればうなずける。


「僕は特にこれっていうのがないから色々見てみたいな!」


ジークは恐らくできることがありすぎて逆にやりたいことが定まらないのだろう。


「カナは?」

「私もどういうのがあるかもよくわかってないし色々見たいかも」


ちなみに前世で中高は理科部に入っていたが、この魔法ありきの世界に「理科」「科学」という概念があるとは考えづらい。しかも大学ではサークルには入っていなかったので、どこに入るか決めかねていた。


「オッケー!そしたらアランとマリーの行きたいところ優先しつつ色々見て回ろう!」


こうして私たちの部活見学会が始まった。


部活動の種類は前世にもあったようなものも無かったものも様々だ。


「サッカー部体験やってます!」

「魔法の研究にご興味は〜?」

「吹奏楽部入りませんか?初心者でも大歓迎です!」


部活は一部を除いてこの部活棟にまとめて部室がある。そのためまとめて見学するには利便性が高い。


「どこから行く?」

「とりあえずダンス部・調理部・剣術部で近いところから先に行けばいいんじゃないかな」

「そうね!それならまずは…」


「おい。そこのお前、止まれ。」


突然後ろから話しかけられる。振り返るとそこには水色の髪につり目で紺色の瞳、身長180cmという高身長の少年がお供らしき生徒を従え仁王立ちしていた。


私はこの少年を知っている。今年の一般入試次席合格者であり、「Amour(アムール) Tale(テイル)」攻略対象者の1人のリアムール王国第2王子、ラクア・リアムールである。遠巻きで見たことはあったが、第二王子と会話するのも攻略対象者と接触すること自体もこれが初めてだ。


「『お前』と言うと誰のことでしょう?」

「お前以外に誰がいる、推薦合格者。」

「…私にどういったご用件でしょうか、殿下」


第2王子ラクア・リアムールは典型的な「俺様」キャラである。俺様な上に王族という最高権力持ちとか地雷な気しかしないが、あちらから接触してきた以上王族を無下に扱う訳にはいかない。


「俺の部屋に来い。話はそれからだ。」


ここで言う「俺の部屋」は寮の寝室ではなく、王族にのみ用意される校舎内の休憩室のことを言っているのだろう。


「わかりました。」


「皆、悪いけど3人で見学行っててくれる?」

「いいけど…1人で平気?」

「大丈夫。できたら剣術部は私も見たいから調理部とダンス部に先に行っててくれると助かるかな。」

「…うんわかったよ、何かあったら言うんだよ!」

「うん、ありがとう」


「おい、そこで何をコソコソ話をしている。」

「いえ、お待たせしてしまい申し訳ありません。」

「ふん。とっととついて来い。」


――――――――――――


言われた通り第2王子について行くと、やがて豪勢な休憩室に到着した。


「ここに座れ。」

「失礼します。」

「…………」

「…それで、ご用件は?」

「お前、生徒会役員になれ。」


何となく予想はしていた。


魔術学院の生徒会役員は、王族はほぼ必須で、残りは基本高位の貴族で構成される。新役員は基本現役員による会議で決めるが、暗黙の了解で王族はその人の一存で決められることになっている。そして第2王子も例に漏れず入学早々生徒会役員になった。(ちなみに生徒会役員に入れば部活に入る必要は無い)


しかし勧誘自体は予想していたが、第2王子直々に来るのは想定外だ。


「…申し訳ありませんが、私では力不足でないかと…」


正直なところ役員になること自体はやぶさかではない。高校のときは部活で部長をやっていたし、その手の仕事は嫌いじゃない。しかし、それでこん詰めすぎた側面もあるし、今世では自分の道は自分で決めることにしているので、指図されて生徒会役員にはなるのは気乗りしない。それに生徒会は貴族社会の風潮が特に強く、そんな排他的な職場で平民として働くのはごめんだ。


「お前は何を言っているんだ?俺は提案しているんじゃない。命令しているんだ。」


ここにきて俺様キャラと権力のダブルパンチがきてしまった。さてどうするか。


「生徒会役員なら先程私と一緒にいたジーク・ロバンの方が適任ではないでしょうか?彼は入試一般の首席ですし、何より伯爵家で騎士団長の息子です。」

「…チッ」


…なぜだか分からないが地雷を踏んでしまったらしい。だがこうなったらやけだ、どんどんいこう。


「…あいつはダメだ。」

「なぜ?」

「俺はまだ入試の結果に納得してねえ…あいつが俺より上なんて有り得ねえ!それになんだ、なんであいつが推薦合格者のお前とつるんでるんだ?本来ならすぐ俺の元に来て『仲良くしてください』って跪くべきだろう!」


なんだかもう心の声がダダ漏れすぎて王族としてもどうなんだろうかと思うが、それと同時に私を生徒会役員に入れたがる理由が少し見えてきた。


要するにラクア・リアムールはジークに嫉妬しているのだ。


元々相当優秀な上、第1王子のように次期国王としての重圧もあまり受けずおだてられ甘やかされた第2王子にとって、自分を押さえ首席になった上、推薦合格者と仲良くするというある種の「ステータス」を獲得したジークが不愉快なのだろう。


だからせめて私をジークから引き離して自分の元に置き、「ステータス」を獲得しようとしているのである。


こう書くとなんだか恋愛の三角関係で私が取り合われてるみたいだが、実際はコレクターが有名な絵画を巡ってオークションで競り合ってるようなものだ。もっともジークに争ってるという感覚は無いだろうが。


「しかしそれでもやはり…」

「ええいめんどくさい!それなら今度の魔術大会の個人戦で俺がジーク・ロバンに勝ったら生徒会に入れ。」


魔術大会というのは、クラスの代表者が団体もしくは個人で戦う剣あり魔法ありの武闘会のようなものである。その開催が早くもあと1ヶ月半に迫っていた。最初より譲歩してくれたのはありがたいが、ジーク本人がいないのにその約束はでき兼ねる。


「ジークではなく私に勝ったらにいたしませんか?」

「何?」

「私と殿下の話なのですから、我々で勝負するのが筋ではないでしょうか?それに下手に他の人を巻き込むより、そっちの方が手っ取り早くていいでしょう。」

「…ふん、面白い。いいぞ。そうしようじゃないか。せいぜい頑張るんだな、カナ・ベルナール」

「はい。それでは失礼致します。」


色々勢いで言ってしまったが、まあどうにかなるだろう。たぶん。


――――――――――


「あ、カナ!大丈夫だった?何の話されたの?」

「生徒会役員に勧誘された。断ったら魔術大会で勝負することになったけど」

「そうなの!?すごいことになったわ!」

「しかしなんで断っちまったんだ?」

「それは…うーん、なんとなく?」

「適当か!」

「ハハ!そうだね、我ながら何してるんだか」

「でもそういう割には楽しそうに見えるよ?」

「…!うん、確かにそうかも。理由は自分でもよくわかんないけど。」


そう、前世ではとことん保守派な私だったが、今は意外にもこの状況を楽しんでいる。


「さて、部活見学行かなきゃ。みんなどこまでまわった?」

「ちょうどダンス部と調理部が見終わったところだよ!」

「よし、じゃあ行こうか」


―――――――――――――


結局色々まわって、何となく行きたい場所に目星はついた。ただ王子に負けたら生徒会役員をやらなくてはならないので、何となくその旨をその部活に伝え、とりあえず保留してもらうことにした。その部活についての詳細は後日話すとしよう。

いかがでしたか?もしよろしければ執筆の励みになるので評価・ブックマーク・感想どれか一つだけでもお願いします!


次回は閑話休題として、カナが地味に気になっていたことをひたすら考える回です!飛ばしても話の流れに支障はないですが、異世界転生あるあるなので見ると面白いと思います、ぜひご覧下さい!

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