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魔術学院の授業②

ここ最近、疑問に思っていることがある。それは


ジークはなぜ乙女ゲーム「Amour(アムール) Tale(テイル)」の攻略対象者では無いのか?


ということである。今まで見てきた限り、ジークは

・貴族

・騎士団長の息子

・ヒロインと同じ極光傾向

・高い魔力

・魔術学院入試一般首席

・人たらし etc...


など、まさしく乙女ゲームの攻略対象者に相応しいコンテンツ力とスペックの持ち主である。にも関わらずなぜ彼は攻略対象者では無かったのか。


ちなみに「魔法学園所属じゃないから」は理由にならない。なぜなら対象者のうちの一人、第二王子はこの魔術学院に通っているからだ。実際私は遠巻きだが彼を学内で目撃したことがある。


それと「まだ実装されていなくて、今後対象者になる予定だったのではないか」という可能性もあるがそれも少し考えづらい。なぜなら「Amour(アムール) Tale(テイル)」の攻略対象者は私がやっていた時点で12人にものぼっていた。こんなに増やしておいて騎士団長の息子を入れないのは少々不自然だ。


攻略対象者になるための「何か」が足りなかったのだろうか。それとも…


――ザザッッ!!ジーーっ!!――


…士団長「…に……ー……いう…6…の…子が…………す…、裏………人………われ…、……月…に…な……まし…」ザザッ

ジー

カ…「……な…」ザザッ


――ジーー!ザザッ!!――


「…ナ?カナ!」

「っ…!!!!」

「ねえ大丈夫?寝不足??」

「顔色が悪いわ!」

「い、いや、なんでもない、大丈夫だよ…」


今のは、なんだ。強烈な雑音と共に見えたのは「Amour(アムール) Tale(テイル)」のゲーム画面か。「ねえ?」一部分しか見えなかったが、発言者は「ほんとに平気?」ジークの父親である騎士団長…とヒロインか?しかしこれでは断片的すぎてなんと言っていたのか分からな…


「カナ!体調悪いならちゃんと言って!無理は絶対しないで!」


ハッと前を見るとジークは眉間に皺を寄せ、私の両肩に手を乗せてわたしに鋭い目線を向けていた。珍しくジークが怒っている。いや初めてかもしれない。


「…ごめん。でもちょっと考えごとしてただけでなんでもないよ、心配しないで」

「謝ることなんてないよ。でも何かあったらちゃんと言うんだよ?僕たち友達なんだから」

「そうよ、なんでもなくても言って欲しいわ!」

「友達…だから…そうだよね、ありがとう」


彼らが心配してくれることに感謝すると共に申し訳なさを感じる。先程の雑音については、現状考えられそうなことは無い。また思い出すのを待つしかないだろう。


――――――――――――――


さて本日最初の授業は剣術実習である。この授業では他の演習とは違い魔法は使用禁止だ。内容は基本的に丸太に向かって練習→授業の最後に対人で実践という流れである。対人と言っても当たるとふにゃふにゃ曲がる固めのスポンジのような素材の剣で行うので危険性はない。


正直私はこの授業があまり得意ではない。一応クラスの平均くらいはなんとかキープしているが、毎回「筋は良いが動きが遅い」と言われる。これは純粋に運動不足のせいだろう。前世からの運動に対して怠惰な姿勢がそのまま残ってしまっている。運動せねば。


一方他の生徒はと言うと


「えい!」

「1本!勝者ジーク・ロバン!」

「わーい!」


まずジークは相変わらず優秀だ。今のところ3本勝負で1本だけ取られることはあっても負けているところをほとんど見たことがない。


次にマリー。


「はっ!」

「うが!」

「勝者、マリー・スオーロ!」

「また勝ったわ!」


見かけによらず彼女もなかなかの実力者である。小柄な体を活かして素早く確実に攻撃を入れていく。聞くところによるとお家柄英才教育を徹底されているらしく、剣術は小さい頃から習っていたようだ。


そして最後


「3本目、初め!」

バシッ!!

「うわ!」

「勝者、アラン・アゴーニ!」


「あいつすげーな」

「スオーロさん以外に1本でも取られてるとこ見たことないぞ」

「マジでどうなってるんだ…」


これが意外なことに、アランはこのクラス1、いや学年トップクラスの実力を有していた。彼は魔力量100、属性火、傾向弱闇だ。魔力量はこの学院の生徒にしては低くく遠距離攻撃は苦手だ。丸太攻撃では表面が少し焦げた程度だった。だがそれとは対象的に剣術勝負では対戦相手を瞬殺していく。私も1度戦ったが手も足も出なかったし、ジークですら善戦はしたものの1本も取れずに終わった。一方マリー相手になると恥ずかしいのかなんなのか急に動きが鈍って1本だけ取られていたが、それでも勝ってはいるのだから凄い。


「皆すごいね、私は全然出来ないから尊敬するよ」

「そ、そうかな?」

「照れるわ〜」

「(照れてるマリーさん可愛い…)」

「僕で良ければ教えるよ!」

「あ、ずるい私も!」

「お、俺も!」

「ありがとうみんな、お願いしようかな」


ちょうど教わりたいと思っていたので嬉しい申し出だ。


「しっかしアランはほんとに強いよね!全然歯が立たなかったよ!」

「いや、そんなことねえって、俺も結構ギリギリだったし…はあ…」

「ん、何か気にかかることでも?」

「いや、なんて言うか…今は魔法無しだからまだ良かったけどよ、魔法ありになったら全然勝てねえんだろうなーと思って。なんならカナさんと戦ったらあの丸太みたいに一瞬で粉々だろ?」

「いや、人間の場合魔法抵抗があるからまんまあんなことにはならないと思うよ、見た感じアランの魔法抵抗値は特に高そうだしね」


魔法抵抗とは、読んで字のごとく魔法に対して抵抗(防御)することである。電子回路につける抵抗と似たようなもので、魔法抵抗値が高いほど相手の魔法の影響を受けづらくなる。魔法抵抗値は先天的なものの他に体を鍛えたり魔法でバリアすることによって上げることができる。


「それにアランは遠距離攻撃は苦手だけど手元での魔法操作は得意でしょ?パイをあんなに綺麗に焼いてたし。弱闇傾向なら光寄りのこともそれなりにできるはずだし、例えば身体強化しつつ刀身に炎纏わせて近接特化型にしたりすればかなり渡りあえるんじゃないかな、もちろん立ち回りの難しさはあると思うけど。何も苦手分野で人の真似事をする必要は無いよ。」

「!!なるほど、皆みたいにできねえからって焦ってたけどそういう見方もあんのか…ありがてえ、やってみる!」


どうやら剣で無敵な彼にも彼なりの苦労があるようだ。


…今思ったが、私の魔法の力は先天的なものだし、ある意味1番「実力」がないのは私なのではないか?

……これから努力していくとしよう、まずは体力作りと筋トレだ。

次回はママ登場回です!もし良ければ励みになるので評価・ブックマーク・感想お願いしますm(_ _)m

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