魔術大会3日目︰個人戦予選①
「さあ皆さんお待たせ致しました!これより魔術大会3日目、1年生個人戦の開幕です!!」
ワァァーーー!!
「司会・実況は2日目の3年生団体戦に引き続き、ベッジ・キャストがお送りします!!」
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今日は3日目と5日目に行われる1年生個人戦の初日である。
団体戦で優勝した時点で総合成績でも3位以内はほぼ確実なのだが、予選で敗退したりしたら十分覆されるし、どうせなら個人戦でも入賞したいので油断は禁物だ。
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私とジークは選手用の席で司会を聞いていた。
「お互い頑張ろうね、カナ!」
「うん、そうだねジーク。今度は敵同士だ。」
「いつ戦うことになるんだろう?」
「ああ、それなら丁度…」
「それでは個人戦の対戦カードの発表です!中央のスクリーンをご覧ください!」
司会者がそう言うと、コロシアムの中央のスクリーンにトーナメント表が写し出される。大体第2王子にプラスして団体戦で強かったメンツがそのまま出ているはずだから、注目すべきはジーク、ランドルト、ベークマン、そして第2王子ラクア・リアムールと言ったところか。
「あ、僕1試合目だ!」
「私は1番最後の試合…てことは戦うとしたら決勝だね。」
「おお!じゃあ決勝まで残らないと!」
「私と戦いたいの?」
「えっ?…あ、どうだろ、あんまり深く考えてなかった!でも1回手合わせはしたいかも」
「ハハ、そうだね。私もだよ」
さて、後私的に1番大事なのは第2王子である。ラクア・リアムールは…
「王子は第6試合だね!」
「うんそうだね。てことは私は準決勝で王子とぶつかるわけか。」
「僕は戦う機会無さそう!」
「私が勝つ前提?」
「もちろん!カナは強いもんね!それにカナも僕が決勝行く前提で話してない?」
「あ…確かにそうだね」
「お互い頑張ろう!」
「うん」
「あと注意したいのはランドルト殿とベークマンくらいだけど…」
「ランドルト君は第5試合だね!てことは準々決勝で王子とあたるのか!」
「それなら何となく王子が勝ちそうな気がするな…ランドルト殿が勝ったら勝ったで問題ないし。」
むしろその方がこちらとしては助かるのだが。
「あとベークマン君は…あれ?」
私も異変にはすぐ気がついた。なんとトーナメント表にベークマンの名前が無いのである。団体戦で怪我こそしていたが、元々タフだし治癒魔法を使ってもらえばあれくらいの怪我は治るだろう。それにあれだけ筋肉隆々なのに筋肉痛起こして動けないなんて間抜けなこともないはずだ。実に不思議である。
実際会場では「ベークマンは?」というような疑問の声がちらほら聞こえてくる。
すると司会者が口を開いた。
「えーベークマン選手に関してなのですが、本人から伝言を預かっているので読みあげたいと思います!…」
…伝言?
「…『団体戦で俺は自分の未熟さを知った。だからそんな半端なまま個人戦に出る気は無い。その代わり次戦うときは絶対勝つから待ってろよカナ・ベルナール』…だそうです!個人戦辞退の宣言と団体戦決勝で敗れたベルナール選手への宣戦布告だ!ちなみにベークマン選手がでるはずだった枠にはH組の補欠選手が入っています!」
…名指しかよ。正直ちょっと、いやかなり恥ずかしいのでやめて欲しい。というかそんなに目の敵にされていたのか私は。
「カナってば変なのに目つけられちゃったね!」
「なんで私だけ…それを言うならジークとアランもだろうに…」
「まあ挑発するわ攻撃止めるわ剣折るわで特に凄かったからね、しょうがないよ!」
ジークの言葉にぐうの音もでない。
しかしベークマンのイメージといえばほぼ不良そのものだったのだが、思ったよりストイックな性格をしているようだ。これがいわゆる"漢"というやつか?……いや、やっぱり少し違う気がする。一応総合成績も争っているのだからちょっと無責任な気もするが、ベークマンに頼りすぎなH組の自業自得だなと思い直した。
何はともあれ強敵が1人減ったのはありがたい。これで第2王子戦にかなり集中できるというものだ。
「それでは!15分後から順次試合を始めていきますので、第4試合までに出場の選手は準備をお願いします!」
魔術大会3日目、つまり今日は個人戦の予選だけ行われる。午前と午後で4試合ずつなので、私は午前中は暇である。
「じゃあ僕最初だから行ってくるね!」
「うん。私はマリー達と一緒に応援してるよ、頑張って。」
「ありがとう!」
そういうとジークは選手の集合場所へと向かっていった。私は観客席にいるマリーとアランの元へ着く。
「よう、カナさん!」
「来たわねカナ!」
「うん。そろそろ始まるかな、試合」
「そうね!ジークさん個人戦の方はどうなるかしら?」
「トーナメントのメンツ的に考えても決勝進出は硬いんじゃないかと思うけどね…ただ勝敗を決める要素は他にもあるし絶対とは言えないけど。」
「お、始まるぞ!」
「では準備が整いましたので、試合を始めていこうと思います!第一試合はA組ジーク・ロバン選手 vs H組ベン・ シュミット選手です!」
「ファイトジーク!」
「ジーク頑張れ!」
「ジークさん頑張って!」
ジークの予選の相手はあのベークマンがいたクラスの代表だった人のようだ。団体戦でジークが倒したのとは別の方の様だが、まあ既に緊張で倒れそうになっているところを見てお察しである。
「制限時間は30分!それでは始め!」
「ア、アーススピア!」
「最初に攻撃を仕掛けたのはシュミット選手だ!ロバン選手どうする?」
「えいっ!」
「なっ!一瞬で!?」
「ロバン選手、風の刃でシュミット選手のアーススピアを粉砕してしまった!」
「魔法の撃ち合い?それなら次は僕の番だね!とりゃあ!!」
「うわぁ!!」
「またしてもロバン選手の風の大砲が炸裂しシュミット選手に直撃!そのまま飛ばされて場外になってしまった!」
「わーい勝った!!」
「やったなジーク!」
アランがそう叫ぶとこちらに気がついたジークが手を振ってきた。
「さすがだわ、ジークさん!」
「そうだね」
「首席は伊達じゃねえな」
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「さあ、続いては第2試合…」
「あ!」
「どうしたのマリー?」
「私教室に忘れ物してしまったわ、取ってくる!」
「おう、カナさんの試合もまだ先だし急ぎすぎなくて大丈夫だぞ!」
「ええ!じゃあまた後で!」
そういうとマリーは教室に戻っていった。ジークはまだ来ていないので私とアランだけになる。アランが"しまった"とでもいうような顔をする。
「………で、昨日はどうだった?」
「…やっぱそれかよ…」
「お膳立てしてあげたんだし、それくらい聞いてもバチは当たらないでしょ?」
「いやまあ…そうだな。つっても特に言うようなこと無かったぞ?マリーさんの行きたい店回って、昼くって、また店回って最後武器屋で剣買ったくらいだ。」
「『自分の髪や目と同じ色の宝石が使われたネックレス選んで買わせた』が抜けてるんじゃ?」
「…(なんでそこまで詳しくわかるんだよ…)」
「いやいや、別に必ずしもからかいたいわけじゃないよ?そうやって一喜一憂できるのもそれくらいの年齢の少年少女の特権だしね。」
「『それくらいの年齢の』って、お前も同じ歳じゃねえか。」
「ん?ああそれもそうか…」
「なんだよそれ…お前こそそういうのないのか?俺ばっかいじられるのは…」
「いや、私はそういうのはいいよ」
「……?それってどういう…」
「おーい!!」
そこにちょうど試合が終わったジークが戻ってきた。
「あ、ジークおかえり。お疲れ様」
「さすがジークだな」
「ありがとう2人とも!あれ、マリーは?」
「マリーなら忘れ物取りに行ってるよ」
「そっか!」
「このあとどうする?カナさんは試合あるけどそれまで結構時間あるよな?」
「このまま試合観戦でいいんじゃないかな?あと3試合終わったらご飯だしね!」
「それもそうだな」
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「午前の4試合が終わり次は昼休憩です!」
―――――――――――――――――――――――――― 続く




