第11話 サイコパスとは呼ばせない2
観葉植物との合成を解除し、腕を戻した俺は立ち上がった。
それと入れ替わるようにバリスは倒れた。
俺はバリスを見下ろしながら話した。
「あぁ、そうそう。ルダンと言う冒険者から頼まれてたんだった。お前を見つけたら『みんなが心配してる』と伝えて欲しいそうだ」
バリスは血を吐きながら力無く俺を見上げている。
「そもそもの原因はお前にあったんだ、ノア」
俺は観葉植物の方を見た。
「あぁ、これはお前に嘘を吹き込んだノアだ。こいつが原因で俺はお前らからサイコ野郎と言われるはめになった」
バリスの倒れた位置からノアは見えているのだろうか?
「家にこいつを取りに行った時は喋っていたんだがな。移動させる際、重かったので、伐採してた時にどうやら口の部分を切り落としてしまってね。もうただの植物のようになっている。必死に水分をとろうと根を張って生きようとする姿がなんとも健気だろう?ほら、お前の血を吸おう根が伸びているぞ?」
足元の根がゆっくりと這おうとしていた。
「この元ノアと自分を合成する時にわかったが、もはやこれはただの植物の部類に入るものになっていた。生命力が多少強いがな」
俺は元ノアを見ながら言った。
「だが、俺の部屋にこの植物は似合わないな」
俺は手に持っていたナイフと、バリスが落としたナイフ、それとバリスの背中のナイフの3本を合成し、1本の長い剣にした。
その剣を元ノアに何度も突き刺した。
「植物ってのは生命力が強いので厄介だ。あとで刻んで燃やすか」
「はぁ~」
俺はため息をついた。
バリスの前でしゃがんで顔を覗き込む。
「こ、このサイ……コ野郎ぉぉ」
「お前はそれしか言わないな。それがお前の死ななくてはいけない原因だ」
俺は辺りに飛び散った血を見た。
「これだけ部屋が血まみれだと、俺は別に構わないんだがな、ソフィネが嫌がるだろうからもうここには住めないな」
「血は後ほど何かと合成させて跡形もなく消してやる」
「あぁ、そうそう。お前は会った時からフラン、フランとやかましかったな。ノアから何を聞いたのか知らないが俺がフランの事を教えてやろう」
俺はベッドの向こう側へ歩きながら話しを続けた。
「フランとレイスは依頼中に魔物に殺された。お前は何度話しても聞こえてないみたいだかな。正確にはレイスは生き残った。死にかけていたがな。そこで俺が死にかけのレイスと死体となった肉片のフランを合成させたんだ。それでできた生き物に魔物を倒させたんだがな。ノアが何を勘違いしたのか、俺がフラン達を殺したと言い出した。むしろ俺はフラン達に魔物と戦うな、と進言したのだがな」
「お前もバカな男だな。ノアの戯言話に付き合ったばかりに散々な目に合って」
俺はベッドの向こう側から拾い上げたものを運びながらバリスに近づいた。
「死にたくないか?」
バリスは返事をするのもきつそうで、必至に頭を縦に動かした。
「俺が1日で退院して驚いただろう?俺は人と人を合成させる事で傷口を塞いで一瞬でケガを治せるんだ。お前にもそうしてやろう」
俺が拾ってきたものはキースの両腕だった。
「これをお前と合成させればお前の傷も治る」
バリスはキースの腕を見て目を閉じた。
「仲間のおかげで生かされたるなんて感動的じゃないか」
俺は先ほどの剣を拾い脇にかかえ、続いてバリスを左手にキースの両腕を右手に触れた。
「仲間に感謝しておけよ」
「す……まな……い」
かすれた声でバリスは俺に感謝した。
「なぁに。お前の執念が勝ったのさ」
俺はバリスを合成した。
すぐさま脇にかかえた剣を取りながら言った。
「あぁ、そうそう……言うのを忘れていたんだがな、死にかけて意識の薄い人間を合成させると暴走したよくわからない生物になるんだ。キースに命を救われ、さらにフランのようになれるんだ。喜べよ」
俺はバリスの合成結果を確認したかったが、俺一人でこの状況を収拾させる自信がなかったのて、ボコボコと膨れ上がろとするバリスの頭に力一杯剣を叩き込んだ。
何度か剣で切っていると動かなくなった。
さてと……
まだ夜が明ける気配も無い。かなり疲労が溜まっているが、ソフィネにこの部屋を見せるわけにはいかないだろうし、ある程度片付けたとしても怒られてしまうな。
ダブルベッドだってソフィネがここに住むタイミングで新しく買ったものだったがさすがに買い直さないといけないだろうし、そもそもきれいに片付けたところで引っ越しは免れないだろう。
「はぁ~」
俺はため息をついた。
俺はベッドに腰を下ろし、片付けの手順を考えていた。
ガタッ……
ドアの方から音が聞こえた。
俺はすぐにベッド横の蝋燭を取り、ドアに向けて照らした。
そこには先日冒険者ギルドで見かけたルダンがいた。
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明日で最終話です。
明日から「恥晒し魔導士は賞金首で賞金稼ぎ~ドSヒロインが俺を社会的に殺しにかかってくる~」を公開します。よければそちらもお読みください。