雇用対策不況対策
私(三成):(とりあえず勘兵衛自身の副収入源を確保する手立てはついたのでありますが。)
所員:(……どうされましたか?)
私(三成):(……防衛の肝とも言える勘兵衛が国もとを離れてしまいました……。)
所員:(一応、『非暴力』家康に対してのみ『不服従』の方針である手前。いくさの準備を怠るわけにはいきませんな……。そう考えますと、今の状況は諸手を挙げて歓迎。と言うわけにはまいりません。)
私(三成):(……それはそうと、この履歴書の山は何ですか?)
所員:(……あ。これですか。これらは主家の改易ないし減封に伴い食い扶持を失ってしまったもの。もしくは代替わりに伴い居場所がなくなったばかりか命の危険に晒されるハメに遭ったものたちが、当時。最も勢いのありました石田家に仕官したい。と。まぁ今となっては……でありますが。)
私(三成):(勤め先の浮沈によって従業員が右往左往させられるのは今の話では必ずしも無いのでありますね……。)
所員:(しかも当時は21世紀の日本のように失業手当があるわけではありませんし、特にこの履歴書を送って来た面々は羽柴秀次や蒲生の家臣。元々その土地に居たものではなく、主君の異動について行った謂わばサラリーマン。)
私(三成):(……にしても履歴書の数は尋常なく多いですね。)
所員:(そりゃあ自分の給料の半分。時には全て渡すような気前のいい君主なんか、なかなか居ませんよ。)
私(三成):(……何か仕事を作ってやることが出来ればな……。)
所員:(この当時。内政の基本は治水でありますから土木工事でもやりますか?)
私(三成):(……忍城の一件があるからな……。でもなんで小田原の時、秀吉軍唯一の失態として忍城のことが記録に残されているのでしょうか……。何か意図的なモノを感じるようにも……。)
所員:……所領を見渡して(美濃との国境地帯に松尾山と言う山があります。そこはかつて織田家浅井家の境目として抗争の舞台となったのでありましたが、その後。信長が江北の地も手に入れたことによりその役目を終え、今は廃城となっています。廃城となっているとは言え。要害としての遺構はまだ残されていますので、そこを修復しまして、模擬演習も兼ね。かつての秀次家臣団と蒲生家臣団で戦わせている様子を。……これは石田家の。ではありませんが、こちら側の資料として記録することに致しましょうか。彼らの食い扶持はこちらで何とかします。)
と、大垣城の伊藤盛正を介し松尾山を修築し、新たに石田家に雇われることになりました秀次と蒲生の両旧臣団による模擬演習。そこで使用されたのが、朝鮮出兵に伴う特需が無くなったことにより景気が冷え込んでしまった国友村産の鉄砲に大砲……。現代から謎の大量資金が投じられたこともあり、そこに装填されたのは勿論実弾。リアルな
『聞いてないよぉ!!』
の断末魔が松尾山にこだまする中。石田軍は盛況部隊へと変貌を遂げるのでありました。
……ただそんな様子を見た転生案内所に委託している機関より
(……さすがに実弾はマズいのではないでしょうか?)
との指摘。
私(三成):(……まぁそうですよね……。戦国時代を経験した皆でさえ、演習日の連絡を『赤紙』と呼んで忌み嫌っていましたから……。)
所員:(模擬演習自体は別に実弾を用いなくとも良いのでありますが。国友村のことを考えますと、砲身を壊す恐れのある実弾を使ったほうが仕事を作ることが出来るかと……。)
私(三成):(どの大名も彼らの技術は欲しいでしょうから……いくさが無いとは言え。引き抜かれる事の無いよう。彼らに仕事を回さなければなりません。)
所員:(……その需要を実弾無き模擬演習のみで確保することは難しいのでありますが……。)
と、改めて所領を見回し……
所員:(北国脇往還の出口に笹尾山と言う山があります。そこは美濃側の景色を一望することの出来る高台にありまして……。そこで花火大会を催すことにより国友村の仕事を確保すると共に、佐和山領から見ますと辺境の地。なかなか施策が回ることの無い笹尾山にお客様を集め。そのついでに模擬演習をしている松尾山も体験して頂く……と言うのは如何でしょうか?)
私(三成):(……採算の見込みは……?)
所員:(……嘘で塗り固めたお花畑の数字を示すことは出来ますが。元々公共事業は、仕事を作ることがその目的でありますし、今やっている模擬演習につきましても16世紀から見ますと『贋金』で賄っているのでありますから。)
と突如として不思議な賑わいを見せることになった江北国境地帯……。




