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こんな世界で君は何を思う?  作者: かかかうどん
第二章 俺は影。
6/30

探索者の街 キルルカ

九月いっぱいまで余裕があるので、高頻度で更新できそうです。

できるとは…。

 ―――グローゼン大陸 探索者の街 キルルカ―――


 この世界、ブリュンラッセルにおいて、使徒の支配がない街というものは、少ないが存在する。このキルルカもその一つで、“明確に”どの使徒も自分の支配領域と主張していない土地にある街だ。ここは、付近に多くのダンジョンを擁し、それに挑む探索者シーカー達を相手にする商人達の市場が規模を大きくしていったことにより発展した。


 多くのダンジョンがあるため、ダンジョンから魔物が溢れる“暴走バースト”に備え街を大きな城壁で囲んでいる。その在り様に、初めて訪れた者は、“まるで要塞だ”と言うだろう。


 そんなキルルカの街の東西南北の4つの門の内東の門に、一人のローブを着た女が街に入るための乗り合い馬車の列に並んでいた。

「おう、嬢ちゃん。キルルカには観光か?」

 そう言って、ローブのフードを目深にかぶった少女に、同じ馬車の客が声をかけた。客は、探索者なのだろう、丈夫そうな革鎧で全身をかため、鞘に入った片手剣を抱くようにして胡坐をかいている。長い順番待ちの暇つぶしのようだ。

「ええ、キルルカにはダンジョン産の武具などが出回っているそうなので、それを見物に。」

「ほう、見物に?そんな華奢な体で、一人でかい?」

「何かおかしいですか?」

「この辺はダンジョンが近くにあるぶん、強めの魔物が出やすいからな、心配になったんだ。」

「そうですね。だからこうして、あなたのような優秀な探索者さんと乗り合い馬車で来たのですが…?」

 少女の声は、自分の何がおかしいのが分からないと言った風で、その声はやや弱々しい。


「はは、すまねぇ。そうだな、俺みたいな探索者がいるから街道は安全だが、外は一歩道を外れば魔物の住処だ。嬢ちゃんは大丈夫だと思うが、危ねえことはすんなよ。」

 どうやら、ただの忠告のようだ。


「最近は探索者のなりたてのルーキーが、いきなりダンジョンに挑んで別の探索者に助けられることが多くてな。若いのは血の気が盛んで、いけねぇ。使徒の配下でないなら、俺らはただの人間なんだ。それを忘れちゃ駄目だぜ。」

 少女は、苦笑を返すのがやっとだった。


 そうこうしている間に、馬車は東の門を抜け東大広場に着く。大きい広場は、各門から一キロメートル離れた所に大きな広場と、中心に一つ広場がある。四つの広場を頂点とする四角形の中心は大きな店が軒を連ね、馬車は各方角の広場で降りるのが決まりである。そもそも、中心の四角形の中は人が多すぎて馬車が進めないので、どうしようもない。


「ありがとう。」

「毎度。」

「あんがとな。」

「毎度。」

 少女と探索者はそう言って御者にお金を払い馬車を降りる。


「嬢ちゃんこれからどうする?」

「どうするとは?」

「いや、なんだったら俺がキルルカを案内してやろうかと思ってな。」

「ありがとう。でも大丈夫だわ。これから、北東側の“宿場町”だったかしら、そこに行って今日は寝る予定だから。」

「そっか、ならいいが。いいか、嬢ちゃん決して南東部の街に近づいてはなんねぇぞ。」

「あら、どうしてかしら?」

「そりゃ、南東部は“旧市街”で今じゃ迷路みたいに家が建ちすぎてるし、そんなところだから治安も良くない。」

「忠告ありがとう。でも明日は“中心街”の方へ、明後日は南西の“新市街”と北西の“職人街”に行く予定だから。南東に行く予定なんてないわ。」

「そりゃ良かった。じゃあ良い旅を。」

「ええ、それじゃあ。」

そう言って、少女は北へ。探索者は中心の方へと別れて行った。



 翌日、ローブの少女は“南東の旧市街”に来ていた。

「確かに、これはすごいわ。いつの間にか家の上に出るなんて。」

 旧市街は、家の上に家を建てたり、道を作ったりしているので、歩いていると、いつの間にか家の上なんてここではよくある話だ。


 「嬢ちゃん、旧市街は危ないってちゃんと忠告したぜ、俺は?」

 旧市街を歩くローブの少女の進む道を遮るように一人の男、いや昨日の探索者の男が、進行方向の曲がり角から現れた。


「ええ、そうでしたね。」

「それなのに、ここに来たのかい?」

「ええ、そうね。あなたも、忠告したくせにこんな所にいるのはなぜかしら?」

「俺かい?俺は…、昨日見かけた明らかに何か抱えてますって女を見てられなくなってな。」

「あら、口説いているのかしら?」

「あぁ、俺じゃ頼りにならねぇかもだが、話を聞かせてくれるか?」

「話を聞いたら、後戻りはできませんよ?」

「ああ、安心しな。俺は、この辺じゃ顔が利く。」

 そう言って、探索者は人の好さげな笑顔を見せる。


「あなた…。いい芸人になれそうね?」

 それに対して、ローブの少女の声はやや寒々しい。


「なに?」

「いえ、ただ顔が利くのなら、周りにいるお友達をどうにかしてくれないかしら?ウザいわ。」

「ぎゃはははは、なんでぇばれてたか。お前ら、出てこい!!」

探索者の男は、さっきと打って変わって下卑た笑い声をあげる。下卑た笑い声が響かせながら、旧市街の狭いこの道で、ローブの少女は周りを十人ほどの“男のお友達”に囲まれた。


「おい、ロッテリオ。最初はやらせてやるが、ちゃんと俺らにまわせよ?」

「ああ、見つけたのは俺だから当然だよな。安心しろ、ちゃんと心を壊してまわしてやるよ。」

「おいおい、ふざけんな。壊れたやつなんて、“人形”と同じだろう?そんなんで興奮できるか!」

「ぎゃはは、違いねぇ。人形なら、その辺に“落ちてる”からな。」

 男たちは、下卑た笑い声を響かせながら、なおも続ける。この人数で囲めば、大丈夫と“勘違い”をしながら。


 もし探索者の男ロッテリオが、ましな探索者であったなら、

 もし姿を現す前から、ローブの少女が男たちの存在に気付いていたことを、不思議に思えば、

 もしローブの少女が、――――でなければ、


 彼らは、今晩の月を拝めていただろう。


「うるさいわね。」

 男達の足元に紫色の魔法陣が浮かぶ。それに気付いて行動しようとしても、もう遅い。彼らの体は、上空に“飛ばされた”。あとは、落ちるのみだ。


「グシャ。」

生々しい音が狭い道に響き、錆びた鉄の様な匂いが漂う。


「げっ?!ローブが血まみれじゃない…。ほんと最悪。」

 そう言って、少女は血まみれのローブを脱いで、それを魔法による水で適当に漱ぐ。


「乾かすのは、風送ればいいかな?」

 そう言って、黄色と赤色が混じった小さな魔法陣を右手付近に出し、そこから温風を左手に持ったローブに当てながら、その場を後にして、歩いていった。

短編を一つ投稿。それの設定?を投稿いたしました。

よろしければ、そちらもどうぞ。


誤字脱字、感想などお待ちしております。

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