大地の桜、妖精の夢語り
そこは【夜の森】の奥深く、
人間が立ち入ることの出来ない場所。
そこの湖の畔に
遥か太古の昔から【彼女】は存在している。
その森に立ち入ってはならぬ、
その森の命に必要以上手を出してはならぬ、
もしそれらの戒めを破れば、
【彼女】が命を奪いに来る…
この世で最も恐怖を伴う方法で。
そう、【彼女】は『夜』の妖精__
「何ですかそれ?」
そう問い掛けるのは一人の妙齢の女性。
漆黒の髪、深い蒼の瞳、
目鼻立ちが整った彼女。
しかしその背には薄紅色の羽。
それは異界から齎された『桜』を司る妖精の証。
「今人間達の間で流行ってる御伽噺だとよ。
どうやらこれはお前の事みたいだぜ?」
彼女に答えたのは若盛りな男。
金色の髪、深緑の瞳。
人を惑わすような甘い顔つき。
そして彼にも背に薄い透明な羽、
此方は『大地』を司る妖精の証。
「ナイ、ナイナイナイ!
私は『桜』の妖精ですよ?!
湖の畔に住んでいるという部分しかあって無いじゃないですか?!」
「人間がそれを知ってると思うか?」
「うっ..!」
言葉につまった彼女を見ながら男は微笑む。
そして嗤う。
愚かな人間達に対して。
((ほんと彼女の様な純粋な存在をあの性悪な存在と一緒にするなんて......
ケシテヤロウカ?))
「?如何しました?」
「何でもねーよ?」
「...人間に対して怒ってはいけませんよ?
先ほど貴方も言ったように彼らは私たちの事について何もわかってないのですから」
「ほんとお前は優しいよな~」
そう言いながら男は彼女を抱きしめる、
まるで宝物のように…
((ほんと、何時だってこうやって止めるからな~…
だから俺はまだ堕ちない、
きっとこいつは違うと言うけれど…))
男は知っている。
女が彼を突き放したら堕ちると言う事を。
でも同時に理解している。
彼女がそれをしない事を…
愛しい愛しい異世界の妖精。
この世界に無い『サクラ』という木の妖精。
心優しい彼の『友人』。
「さ!人間達の話はこのくらいにして!
今日はどんな話をしてくれるの?」
「ああ、そうだな...今日はエルフと『海』の妖精の話をしようか…」
そして世界を周る事の出来る妖精は語る、
この地から動けぬ彼女のために。
遥か昔この地に舞い降りた彼女のために。
そして彼は語る、
この世界のいろいろな種族の面白可笑しな日常を.._
『ここ..何処?』
『こんな何も無いところでどうした?』
『分からない..あなたは誰?』
『俺か?俺は 』
『...珍妙な名前ね...』
『そういうお前の名前は何だ?』
『私は桜!この木と同じ名前!』
『へえ..この木はサクラというのか...綺麗だな』
『!!有難う!!』
あの時見た笑顔は..今も俺を捕らえて離さない......
勢いで書いて見ました〜
タイトルは櫛田こころさんが考えてくれました〜
感想よろしくお願いします(ぺこり)