表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼と私の百円戦争  作者: みそにこみ
4/15

第四話 お昼時①

 うつらうつらと、眠気が誘う四限目。

重力に逆らえずに、私の瞼が落ち始める。

……まあ、私の意志が弱いだけなのだが。


 今は、四限目の歴史の授業。

正直、社会科の苦手な私にとっては退屈の極みである。


 なかなか進まぬ手で板書を取るも、

シャープペンシルを握る手に悪霊でもとりついているのか。

いつも以上に筋肉疲労が大きい。要するに疲れるのだ。


 幸い、私の席は教壇から離れた最後列。

授業も残り数分だ。このまま寝てしまっても先生にはばれるまい……。


 そんなことを考えているうちに、待ちに待った授業終了の鐘がなった。


 学級委員の号令であいさつをする。

その瞬間、先ほどまでの眠気が嘘のように覚めた。


 「楓ー。一緒にお昼食べよ!」


 祥子ちゃんがニコニコ笑顔でこちらへ歩み寄る。

私がうんと頷くと、彼女は私の前の席に弁当の包みを置いた。


 「祥子ちゃん、リンゴジュース買ってくるね」


 そう言って私が席を立つと、祥子ちゃんはいってらー、と手を振る。

先食べててね、と手を振り返すと、彼女はにこりと微笑んだ。


 冷房の効いた教室を出ると、一気にむしっとした熱気が体を覆う。

人口密度の高い廊下には、財布を持った生徒が沢山いた。


 「お、鈴崎! お前も購買?」


 一年の時からクラスが一緒の男子に声をかけられて、

自販機だよ、と答えると、そっかと言って彼は立ち去った。


 そう。この廊下の生徒の山のほとんどは、購買が目的だ。

私は弁当派だからあまり気にしたことはないが、購買のパンの倍率は相当らしい。


 ……そういえば、岩崎君は弁当派なのかな。

不意に彼のことが思い浮かび、少し顔が熱を持つ。


 正直、期待をしていないわけじゃない。

自販機に行ったら彼が居て、少し話ができるかも、って。


 でも、校内には三つの自販機があって。

彼と出会った自販機は、教室棟から一番遠いところ。

昨日、ちょうど欲しいものがなくて、あそこに来ただけかもしれない。

……現に私がそうなように。


 だけどやっぱり、居たら良いな、なんて。

淡い期待を抱きながら、長い廊下を出た。


 「あ、やっぱり来た」


 その声の主はもちろん、岩崎君で。

えへへ、と笑って、私に向かって手を振った。

もう片方の手には、購買で買ったと思われるパンが握られていて。


 「朝の人たちと一緒にご飯食べないの?」


 少し気になって彼に問うと、彼は少しはにかみながら答えた。


 「ああ、あいつらか。俺、あんまり人と飯食うの好きじゃなくて」


 「そっか」


 自分で聞いておいて素っ気ないなとは思うが、

なんと返せばよく分からなかったので、とりあえず頷いてみた。


 「……いつもここで食べてるの?」


 もしそうなら、明日も会えるかもと思って、少しの期待と共に口を開いた。

彼は、そうだよと微笑むと、意地悪そうに笑った。


 「明日も、俺はここにいるから」


 会いに来る?だなんてからかう君。

私が、そんなに素直に頷けるわけがなくて。


 頷く代わりに、彼のおなかの辺りに一発、パンチをくらわしてやった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ