第一話 すべてのはじまり①
それは、とある真夏日のこと。
高校生になって二度目の夏の、昼時のことだった。
昼食のお供に、自販機へリンゴジュースを買いに来た私。
今思うと、校内で三つの自販機の中からあそこで君と出会ったのは、
きっと、運命だったのかもしれない。
体中の毛穴という毛穴から、汗が噴き出す。
直射日光に当たれば、一瞬で溶けてしまうような暑さ。
制服の半袖ブラウスの襟元をパタパタと動かしながら、私は目的地へと歩みを進めていた。
胸元からは生温い空気しか入ってこないけれど、無いよりかは幾分とマシなはず。
教室から自販機までの間にある渡り廊下を抜けると、一気に熱風が押し寄せる。
「あっつ……」
一人ぼそりと呟き、視線を上げる。
いつも自販機以外何もないそこには、今日はひとり、長身の男子生徒が立っていて。
一瞬彼に視線を奪われるけれど、彼がふっと漏らした嘲笑で現実に引き戻される。
さっきの独り言を聞かれたかもしれないと思うと、顔に熱が集まってくるのを感じて。
私はなるべくその生徒の方を見ないようにしながら、さっと自販機まで移動する。
私の身長より大きい自販機には、ところどころ売り切れの赤いランプがついていて。
幸い、私の求めていたリンゴジュースは売れ残っており安堵のため息をついた。
自販機に百円硬貨を投げ込んで、
最上段にあるリンゴジュースのボタンを押そうとした……そのはずが。
去年の誕生日にお母さんからもらった、花柄の財布。
いかにも女子高生らしいピンクの財布には、たったの五十三円しか入っていなくって。
「嘘だぁ……」
つい、独り言を呟く。
気が付いた時には、時すでに遅し。
真っ赤になった私を見てか、その男子生徒と思われし笑い声が辺りに響いた。
あああ……恥ずかしい!
ぎゅっと拳を握りしめて、下唇をかみしめる。
ふるふると泣きそうになる私を見て、彼は笑いながら口を開いた。
「金無いなら、貸そうか?」
______それが、すべての始まりだった。