第七十六睡 父親が一番傷付く言葉
ヤサ男……って言うのか、こういうの?
服装は凄い悪そうで、高身長で体格もそこそこよくて、確かに魔王らしいけど……いかんせん顔がな。花も潰したことないような甘いマスクだもの。黒髪でやや垂れ目で童顔。これのどこに恐怖しろと。年齢は……まあ魔王だから実際はウン十万とか言ってるんだろうけど、人間年齢で換算したら俺よりやや歳上、二十代ぐらいだろうか。まあ、テスティニアも見た感じは若々しいし、よく分かんないがね。どっちが歳上なんだろう。
「ごっ……ごめんなさい! 余、魔王城の外の川で洗濯をしていたら、気持ちよくなって眠ってしまったみたいで……そのままここまで流れてきた、的な」
「的な、じゃねぇよ。突っ込みどころが多くて裁き切れねぇよ。なに、あんた魔王じゃないの? 何で洗濯してんの? 魔王の服を洗濯ってだけで拍子抜けなのに。つか、そういうことしてくれる部下、何百も何千もいるんじゃないの?」
「いや、皆に迷惑をかけるわけにはいかないし、その……一緒に洗われたくない」
女子高生か。
皆に迷惑って……あんたこれから二つの世界に大迷惑をかけようとしてる人じゃん。滅ぼす気の人じゃん。魔王が川で洗濯って、情けな過ぎるだろ。ちゃんと玉座で大人しく座っとけよ。今のところ魔王っぽい要素、服装と一人称だけだぞ。
「ん? するってぇと、この川に沿って真っ直ぐに進んでいけば、魔王城に行けるってこと?」
「みたい。余も初めてだから、よく分からないけど。でも途中に滝とかあったから危ないと思うよ?」
やったー、最終ステージの場所を聞けたぞー。
「って、何でそんなこと聞くの? 余の城に、何か用? そもそもお兄さんは誰?」
「ああ、俺は……うん」
言うわけにはいかない。けど、ここでお茶を濁しても不自然だし。いっそのこと、ここで直接対決も悪くないか? こっちにはレイジネスがついている。でも、いくら伝説の剣とて、そんなに簡単に倒せるとは、さすがの俺も思ってない。相手は魔王。ヤサ男だけど魔王なんだ。俺は身構えた。
「ていうかお兄さん、何で……」
魔王が俺の服に指を差す。そうだった、魔王の服装の事ばかり気にしてきて忘れていたが、俺もブッキーのせいでこんな服を……。
「やめろ、それ以上はやめてく」
「どうして……メイド服?」




