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第七十一睡 ストーブに体温計でも意外とイケる

「ブッキーさんブッキーさん、どうして僕はこの部屋に来たの?」


「それはね、私に服を貸してもらいたかったからだよ」


「ブッキーさんブッキーさん、あなたは服を作るのが上手なの?」


「そうとも。君が着ているような服を作れるのはこの世界で私だけなんだよ」


「ブッキーさんブッキーさん、僕は今、何をしているの?」


「君は今、私に服を脱がされているんだよ」



「いや意味わかんねぇな。改めてじっくり考えても、最後のだけ全く納得できねぇな」


 というわけで、俺はどういうわけかブッキーに身を任せて、徐々に産まれたままの姿に近寄りつつある。ブッキーは何らの迷いもなく、着々と俺の服を脱がせていく。ジャージ上、ジャージ下、Tシャツ←今ここ。


「ほほう、これが男の子の体か……佐藤くん、君の肉体はだいぶ華奢だね。筋力のトレーニングなどはしていないのかい?」


「当然。めんどいし」


「さすが無気力勇者だ。肌も真っ白で、とても男の子とは……」


「んぁっ……」


 溜め息を溢すブッキーに脇腹の辺りをなぞられとき、自分のものだと信じたくないような情けない声が出てしまった。ブッキーは指を止め、数秒間真っ直ぐに俺を見つめてきた。ぐっ、気まずい。ブッキーが今どんな顔してんのか、確認したくねぇ。


「佐藤くん、今の声……ふふふっ」


 なに笑ってんだこいつ。


「いや、すまない。君のような無気力な人間にもしっかり五感はあるのかと思うと、当然の事とはいえ、つい笑ってしまった。なるほど、人に触れることなんて殆どないから分からなかったが、こういうことをされると気持ちがいいものなのか……」


 そう言いながらもボディタッチを続けるブッキー。その体は故意か否か、徐々に、しかし確実に密着してきている。素肌にこれはキツい。心臓が暴走を始めそうだ。おそらくだが、ブッキーは俺を誘惑したいわけでも悦ばせたいわけでもない。ただ“研究”のためにやってるんだ。とはいえ色々と限界だな。


 かくなる上は、アレでいくしかない。


「は……は……はくしょーいっ!」


「えっ……あ、ゴメンね佐藤くん、寒かったよね! 早く服を着ないと、風邪を引いてしまう!」


 作戦成功。不器用な俺が編み出した数少ない技の一つ……名付けて“嘘くしゃみ”。中学校生活のある日……そう、二年生の運動会の日だっただろうか。どうしても学校に行きたくなかった俺は、どうにか正当な理由での欠席を図った。

 そこで来る地獄の何日も前からこれを習得するために練習に練習を重ね、ついに当日、起こしに来た杏菜を騙せることが出来るまでになった。それ以来、俺はこれを、ある危機を脱出する(主に嫌なイベントを回避する)ための切り札として重宝しているのである。まさかこんなところで役に立つとは。でもまあ、もう使える場所はないだろうな。


 とにかくこれでブッキーから逃れる事ができた。良かった良かっ……


「では、さっさと済ませてしまおうか。これに着替えたまえ! 恥ずかしい声を出させてしまったお詫びに、私の一番の自信作を貸そうではないか!」


た?



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