第六十九睡 隠し事ヘタなヤツってなんかもう雰囲気で分かる
「さてと、ブス姫もお帰りになられた所で、あたしは寝ますかね」
タラ子は客人の応対が無事に済んだことへの安心感か、大きくアクビをして言った。お行儀悪いこと。
「だな。昨日と一昨日はキツかったし、ここいらで休んでもバチは当たらんだろうさ。俺も部屋に戻って一眠り……」
「駄目ですよ」
驚きで声も出なかった。
「いくらお父さんとお母さんが“自由にしていい”と言ったからって、本当に食っちゃ寝ばかりのグータラ生活を送る気ですか、あなたは?」
「いや、グータラじゃないもの。二日連続で魔物退治みたいなのさせられて、ロクに寝られてないんだが」
「知らないですよ。とりあえず、部屋には戻らないで下さい。その……ジャージも大分汚いでしょ。洗濯とか、したくないですか?」
「そりゃまあ、スッキリしたいってのはあるけども」
「じゃあ決まりです。王都を抜けたところに川がありますので、そこで洗濯してください。自分のことぐらい、自分でしなくちゃですよ。川の近くには野原がありますので、眠りたければそこに寝っ転がるのもいいでしょう。あたしも何度かやったことがありますが、まさに天国です」
生唾を飲み込んだ。確かに部屋のベッドで寝るよりも、青い空と緑色の草むらにはさまれた状態で寝られる機会ってのはずっと少ない。幸い今日も例によって快晴。タラ子の言う通り、こんな時に自然に抱かれながらグッスリってのは最高だろう。やらなくたって分かる。
「洗濯中の服は、そうですね……クレナさんが、あなたの世界で着ているようなものをたくさん作っておられますので、頼んでみてもいいかもですね」
ここでブッキーか。確かに服は作れるって言ってたけど……。
「“何かを隠してます”って貼り紙するより分かりやすいぞ、お前。今度は何を企んでる? 俺が部屋に戻ることに、何か不都合でも?」
タラ子はやれやれポーズをとった。
「こんだけ一緒にいて信頼の欠片もなしですか。大丈夫ですよ、あたしはただ、優しさで言ってるだけです。何も怪しいことはありません」
「お前が俺に対して優しさで何かを言うのが既に怪しいって言ってんだ。はあ……まあいいけどさ。とりあえず研究室、行ってみるわ」
「ええ、行ってらっしゃい、勇者さん」
俺はモヤモヤで埋め尽くされそうになりながらも研究室に向かった。




