第二十四睡 用心棒姉妹はキャラが濃い
「おお!! 無事に帰ってきたのじゃ! バンザイなのじゃ! バンザイなのじゃ!!」
城に戻った俺たちを、ユウカク王は大喜びで出迎えてくれた。
「あらあら! アイリったら、十諸さんにおぶってもらってますのね! でももう帰ってきたんですの? もっと二人きりでゆっくりしなされば良かったのに……」
そういう魂胆か。マリアさん、あろうことか俺とタラ子をいい感じの雰囲気にさせようとしているらしい。そうはいかない。俺は少し荒々しくタラ子を背中から降ろした。タラ子ルートになんか入ってたまるかっての。せっかく異世界来たんだ。現実世界じゃあ決して出来ない甘酸っぱい恋愛とやらを、アニメで見るような究極に可愛い女の子と成し遂げてみせる。なんか凄い悲しいこと言ったような気がするが、気のせいだろう。
「話は全てマリアから聞いたのじゃ! 例の行方不明事件を無事、解決するとは……まことに大義なのじゃ!」
「本当ですよ、あたしが“全く歯が立たずボロボロにされた”魔物を、こちらの“最強の”勇者さんが“一瞬で”倒してしまったので“あたしが出る幕もありませんでした”よ。あの“雷のような”一撃、ぜひお父さんにも見てほしかったです」
こいつ本当にいい性格してるよな。タラ子は皮肉に皮肉を交えた報告をする。
「ふむ、しかしながら、まさか人里からそれほど離れておらぬ山に魔物が出現するとは……初めてなのじゃ」
「え?そうなんすか?いつものことなんだと思ってました。タラ……“アイリお嬢様”もマリアさんも、魔物を見てそんなに驚いた反応じゃなかったんで」
俺は負けずに皮肉をこぼす。
「とんでもないのじゃ! レシミラ王国は平和の国! このような事例は今まで決してなかった! 断言するのじゃ!」
遊郭好きの王が治める国が平和なんて、何かの間違いじゃないだろうか。俺が国で一番のワルだったら間違いなく反乱起こすけどな。
「でも、今回で魔物が人里近くに現れたのが初めてなら、これからも増えていくかもしれないっすよね? いや、もう他のがゾロゾロいるって考えるのが普通のはず。だとすれば、こうしてのんびりしてる暇はないんじゃ……?」
「なあに、心配いらぬ! 既に儂の用心棒たちを調査に向かわせておる! お主と同い年くらいの美少女姉妹じゃ! そろそろ帰ってくる頃合じゃろ!」
美少女姉妹の用心棒? そんなのに調査を任せて大丈夫なのか?
突然、扉が勢いよく開いた。ビックリした俺はその方に顔を向ける。そこから入ってきたのは二人の女の子だった。
「いぃぃぃぃやっほぉぉぉぉぉい!!! たっだいっまでーーす!!はいはいはいはいはいははいはいははいはい!!! ユスティニアおじさんの用心棒、超絶最強スーパーウルトラワンダフルマグナムファンタスティックミラクル美人姉妹が、たった今魔物退治からお帰りになりなさりなさられましたよぉぉぉい!! あらあらあらら、ミーナったら自分で美人だなんて言っちゃって恥ずかしいですなぁっはっはっはっはっははははんははんはんははぁ!!」
「うるせぇぞゴミーナ。一回溺れ死ね。二回焼け死ね。三回凍え死ね。四回飢え死ね。んで五回死ね」
「ああああああああんぎゃあああああああああ!!! ヒーナちゃんまた死ねって言ったああああ! 計十六回もお姉ちゃんの死を願ったあああ!! あと五回どうやって死ぬのか謎な分、より恐怖が掻き立てられるよぉぉぉぉいよいよいよい!!! 酷いよヒーナちゃん、結婚しよ!」
「何でこの流れで求婚なんだよ、お前の頭はウジ虫養殖場か。あと計算も違ぇし。まあいいや、間違えたことだしあと一回死んどけ」
なんか凄いのが来た。




