第二十睡 戦いではフラグって地味に重要
レイジネスは、自分の五倍はデカいサイクロプスさんのオノを、なんとも涼しい顔で受け止めていた。
「そういうことなのですわね。惰剣レイジネスとは、それ自体が怠け者な剣だと勘違いしておりましたが……とんでもない。レイジネスは“怠け者のためにある剣”なのですわ!」
「どういうことっすか?勝手に納得してないで俺にも教えてくださいよ」
マリアさんは何かが分かったらしい。一方、持ち主であるはずの俺は、一言も理解できなかった。
「十諸さん! その剣の能力、それは……持ち主である貴方が考えた通りに、自由自在に動くのですわ!!」
バン、と効果音がつきそうな勢いでマリアさんは言った。
確かに、俺が「死にたくない」と強く願った結果がこれだ。試してみる価値はあるかもしれない。俺は意識を脳みそに集中させた。
【とりあえずオノが怖いし、腕を貰っとくか】
突如、レイジネスがオノをはねのけ空高くに舞い上がった。それはそのまま急降下し、オノを持っているサイクロプスさんの右手をスパンと切り落とした。あれだけ筋肉質な腕を豆腐みたいに簡単に……凄まじい力だ。
つか、本当に俺の考えた通りに動いてくれるんだな。さすがにビックリだ。
「ぐぎゃああああああ!!! う、うで、うで、があ!腕がアアアア! オデの、オデの右腕が!! アアアアアアアアアアアア!!!」
サイクロプスさんは肩の部分をおさえて顔を歪ませ、ボロボロと涙を流している。痛苦の叫びが木霊して、全方位から俺に降り注ぐ。そりゃ痛いよね。ちょっと罪悪感。
剣は宙に浮いたままだ。俺は痛がるサイクロプスさんを見据えた。
「いたぶるのは趣味じゃねぇし、さっさと決めさせてもらうかな」
俺は心の中で命じた。
【目の前の魔物を真っ二つにしろ】
刹那、剣は再び上昇すると、目にも止まらぬスピードで降下し、サイクロプスさんの体を一刀両断した。サイクロプスさんは叫び声をあげる暇もなく、ズシンと地面に倒れた。
俺はそれを見届けると、浮いている剣を手に取り、ビュッと一振りして付着した血を払うと、刃を鞘にキンと納めた。これカッコいいから一回やってみたかったんだよね。




