第十三睡 飛び散るやる気よ 走らぬ湯玉
「それでは話を戻すのじゃ! お主に魔王の手から世界を救ってほしいのじゃ!」
戻すも何も、ここに来て一度もそんな話されませんでしたが。
「詳しい話はアイリから聞いている事じゃろう! 儂らの世界、そしてお主の世界の両方を護るためには、お主の無気力さが重大な鍵となる!」
「そーれがちょっと分かんないんすよ。タラ子にも言いましたがね、そもそもやる気がなけりゃあ何も始まらないでしょ。なんてたって始める意欲がないんすから」
と、俺は疲れもあって少し高圧的に言った。王はそれを聞いて眉をひそめた。
「これこれ、人の話は最後まで聞かぬか。これじゃから最近の若い者は……。お主を選んだ理由はな、お主が“伝説の剣”を使うのに最も適した人物と言えるからなのじゃ!」
「伝説の剣……?」
ゲーマーの性。俺はその言葉にまんまと食いついてしまう。伝説の剣か。ほんの少しだけ興味が膨らんで……
「そうじゃ! その名も“惰剣レイジネス”なのじゃ!!」
きてたのに一瞬でしぼんじまったよチクショウめ。
なんだなんだ、その鍛冶屋が心ここにあらずで打ったような名前の剣は。「しばしも力まず槌うつ響き」ってか。んでそれが伝説の剣と来たもんだ。笑止。人がたまに興味を示したと思ったらコレだよ。やってらんないね。
「わー、でんせつのけん、すごーい。すごおい。だけんれいじねす、すごーい。すごおおおい。じゃ、さよなら」
「これ待たぬか! 話を聞けと申すに! レイジネスはお主が思っておるような剣では断じてないぞ! 話だけでも聞いてゆけ!」
「いやいや、レイジネスな時点で俺の想像通りだと思いますよ。絶対あれでしょ、擬人化したら俺みたいなやつでしょ。そんなので世界が救えりゃ苦労しないっすわな。そんじゃま、そういうことなんで、俺はこれで失礼します。もとの世界に帰れないならそれでも結構。学校もないことだし、こっちの方が俺のグダグダライフには適してますんで。勇者役は別の人を探してくださいな」
俺はユウカク王とマリアさん、そしてタラ子に背を向け、さっさと歩いていく。扉の前に来て手をかけると、少し力を入れただけでそれは開いた。
俺は王の制止の言葉をガン無視して王室を後にした。




