第百二十九睡 誤解×5
早すぎた朝。
やれやれだ。昨夜は寝られなくて変な奴と出会ったんだっけ。なんか中二病みたいな。
あのあとどうしたんだっけ?あ、そうだそうだ。ビビって気絶したソイツを部屋まで運んでベッドに寝かし、俺は床で寝たんだった。
やさしいわー。とうもろくんいけめんだわー。
「ア……アンタ……」
「ん?」
部屋の入口からブス姫の声が聞こえた。首だけをグググッと動かしてそちらの方を見てみると……。
「ややっ、皆さんお揃いで。言っとくが床に寝てるのは寝相が悪いからじゃないからね。あの女の子が………あれ?」
そこにはブス姫だけでなく、タラ子、ポラポラ、ルシュアさん、そしてザミアが一列に並んでいた。
揃いも揃って、俺を非常に怪訝そうな顔で眺めている。
それもそのはず。
「なに言うとんねん。ベッドの上に乗っとるのは……アンタやろ、輿ノ助」
「えっ、ちょ、うそ?」
動揺を隠せない。確かに俺は床で寝ていた。なのにどうして今……ベッドに横たわっているんだ?
そのとき初めて、入り口と反対の側の真横に違和感を覚えた。
恐る恐る見てみる。
そこでは昨日助けた女の子が、俺にピッタリと寄り添って、幸せそうな顔で眠っていた。
冷や汗がドッと噴き出る。
「……………ちょっと待っ」
「ゴラァァァァ!!このクソ勇者ぁぁぁ!!誰よその女ァッ!!」
「アンタ、ウチらが寝とる間にそんな女の子を連れ込んで……一緒のベッドで……っちゅうことは……」
激怒するブス姫と失望するポラポラ。
「ザ……ザミア、ルシュアさん……二人なら分かってくれるよな?」
「話しかけないでください、ケダモノ」
「……こればっかりはフォローのしようもねぇだな。勇者さんがそんなに女ったらしだとは……」
終わった。
最後の一人の方を見る。一番望みの少ないクソ天使の方を。
「………………最低」
タラ子はそうとだけ言うとどこかに走っていった。
え、ちょっと待って。なにその感じ。いつもと違うじゃん。いつもそういうスタンスじゃないじゃん。
「ん………お師匠……」
隣で寝ていた女の子……チコが目を覚ます。お師匠って誰?
「ちょっとお嬢ちゃん。寝起きでいきなりすまんけど、俺の弁護人になってくれないかね?つかまずこの状況を説め」
「お師匠っ!!」
女の子が飛び起きて、俺に思いっきり抱きついてきた。
「お目覚めになられたのですねお師匠!!昨晩は私めの命を助けてくださり、ありがとうございました!!その上、ご自分は床に眠り、私めに寝床を貸してくださるその底知れぬ優しさ!!強さと優しさを兼ね備えたお師匠の人間性に、私めは深く感服したしました!!お師匠、大好きです!愛してます!!」
うん、一応説明にはなってる。なってるけどさ。
「………ということなんだが、みんな分かってくれたかな?」
この抱きつかれてる状況じゃ、何を言っても聞いてもらえそうにない。四人の視線は全く変わらない。なんかプロポーズチックなことも言われたし。
「とりあえず、その………離れよっか。このままじゃお師匠、あの四人に殺されちゃう」
そら見たことか。やっぱクソ面倒くさい娘だったじゃん。




