表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双刻のデュアルコントラクト  作者: 空庭 真紅
The girl of a sword and a shield
9/23

The girl of a sword and a shield  Ⅸ


「おき――て――」


 肩を揺さぶられ、誰かが声をかけてくる。


「ほら、起きてアルク」


 重たい瞼を持ち上げると、幼さがうっすらと残った端正な顔が目の前にあった。

 鼻と鼻が触れ合いそうな程に近い。

 燃えるような真紅の瞳と視線が重なる。


「やっと起きたのね、おはよう」


「おはよう……ところでお前は何をしているんだ?」


「昨日、シャワーも浴びずに寝てしまったから、シャワーを浴びてきたのよ?」


 言われて見れば、レイシアの髪の毛は湿っていて、薔薇の香りに似たシャンプーの匂い鼻腔をくすぐる。

 髪から零れ落ちた雫が、剥き出しの肩を伝う。

 って、レイシア……バスタオル一枚しか身につけてないじゃないか。

 覆い被さる様な体勢なので、レイシアの程よく膨らんだ二つの果実が、否が応でも視界に入ってくる


「そうじゃない! この状況を説明しろって言ったんだよ!」


「そんな野暮な事を聞くのかしら? 流石に口に出すのは恥ずかしいわ」


 そう言って、密着しようとしてくるレイシア。

 身の危険を感じたので、レイシアの華奢な肩を掴み、勢いで体勢を入れ替える。


「きゃっ! あ……き、きょ!」


 急にレイシアは顔を真っ赤にして、奇声を上げる。

 行動権をレイシアから奪った所で自由になる。しかし、立ち上がろうとしたところで、バタン! と廊下に繋がるドアが勢いよく開いた。


「ただい……ま」


 手に持った革製の鞄が床に落ち、衝撃で留め金が外れて中身が飛び出す。


「な、何をやってるの?」


 レイシアにしたのと同じ様な質問だ。

 シエルは顔を真っ赤にし、握った拳がぷるぷると震えている。おまけに、口元が引きつっている。

 自分の状況を確認してみると、大変な事になっていた。

 体勢が逆転した事により、俺がレイシアに覆い被さっている形になる。

 内股に閉ざされたレイシアの股の間には俺の膝が挟まり、奇妙な言葉を発していたレイシアの目尻には涙が溜まっていた。

 おまけに、レイシアはシャワーを浴びたばかりで、裸にバスタオルを巻き付けているだけの状態である。

 はたから見れば、完全に俺がレイシアを襲っている絵面に見えるだろう。

 ……どうしてこうなった。


「ちが、待て落ち着け。誤解なんだ!」


「何が誤解よ! 変態! 淫乱大魔王!」


「だから誤解だって言ってるだろ! レイシア、お前からも説明しろ!」


 しかし、当のレイシアはと言えば、


「きゅう……」


 この様だ。なんでお前は肝心な時に役に立たないんだよ!


「も、もう知らない! せっかく補修の休みに会いに来てみれば! アルク達は今日はお休みだもんね! バカっ!」


 散らばった教科書やノートをかき集めながら、早口にまくし立てる。


「バカ!」


 最後に、手に持った紙袋を投げつけてきた。

 避けようにも、キャッチしようにも、レイシアが太股と手でがっしりと俺を固定しているので、身動きが取れず、顔面で受け止める羽目になった。

 さらに、レイシアの整ったお顔にも紙袋が直撃した


「お、おい待てって、どこ行くんだよ!?」


「午後の補修に校舎の外! バカ!」


 そう言ってシエルは飛び出してしまった。


「……まったく騒々しいわね」


 紙袋のおかげで我に返ったらしいレイシアは、シエルの背中が消えるのを見届けてからぼやいた。


「いや、お前のせいだからな! 後、早く服を着ろ! 服を!」


「もう……せっかちなんだから」


 レイシアは自分の寝室へと引っ込んでいった。

 俺も着替えを済ませて、寝室を出る。リビングのソファでくつろいでいると、


「待たせたわね」


 フリルが散りばめられ、丈が膝上までの黒いワンピースを着たレイシアが戻ってきた。


「その紙袋は……?」


「そういや、そうだな」


 レイシアに言われて気づく。

 早速開けてみると、中には割れたクッキーが入っていた。割れているのは勿論、俺が顔面で受け止めたせいだ。

 それにしても、クッキーか。


「美味しいクッキーね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ