The girl of a sword and a shield Ⅷ
ローレンシア学院の敷地内、静寂の森。
シエルとの訓練を始めてから、数時間が経過した。
辺りはすっかり暗くなり、夜空に輝く二つの月と、群星だけが地上を照らしている。
冷気を孕んだ風が吹き抜け、木の葉が擦れ合う。
「はぁはぁ……はぁ……」
魔法の訓練をぶっ続けで行ったシエルは、木に背中を預けて座り込み、肩で息をする様に、呼吸を荒げる。
「今日のところはそろそろ終わりにした方がいいんじゃないか?」
「ん……そうしよっかな。汗も沢山かいちゃったし」
ブラウスの胸元をはだけさせ、裾をパタパタと仰ぐ。
「ねぇ、アルク。その……レイシアとはいつからの知り合いなの?」
なぜだかシエルは質問しておいて、俺から視線を逸らす。
運動したせいだろうか、頬が赤い。
「聞きたいか?」
別に隠すことでもないし、話しても良いか。
「うん、聞かせて」
「俺が十歳の頃だったかな。龍に両親や街を奪われてのたれ死ぬところだった俺を、ニーナが拾ってくれたんだ」
すると、シエルは意外そうな顔をする。
「学園長に拾われたの!?」
「あぁ。その時にニーナが連れていたのがレイシアだ。アイツと俺は龍への復讐を誓い、契約を結んだってわけさ」
それで、戦い抜いた結果。いつからか、レイシアは歪んでしまった。
復讐に取り憑かれていた俺に、生きる意味を教えてくれたのはレイシアだ。
だからこそ、俺はレイシアを助けてやりたい。でも、これはシエルに話す事じゃないな。
「そうなんだ……ちょっと羨ましいな」
「どこも羨ましくないだろ?」
「ううん、羨ましい。あたし、両親を亡くして、孤児院で生活してたんだけど、いじめられてたの……ここに来ても大差なかったけどね」
シエルが契約できないのも、武器に変身できないのも、それが原因なんじゃないか?
デュミナは心一つで強くも弱くもなる。ニーナがいつも言ってたな。
「それで、今レイシアとはどういう関係なの?」
「ただのパートナーだよ」
ほっとしたかの様に、シエルは深く息を吐いた。
そして、立ち上がったシエルは俺を見下ろす形になる。
「ねぇアルク。私やりたい事ができた」
そう言ってニッコリと笑う。
月明かりに照らされたシエルの笑顔は、今までみたどの表情より魅力的に思えた。
「やりたい事ってなんだよ?」
くすりと笑みを零すと、シエルは身を翻して背中を向けてしまう。
「貴方たちと序列一桁になる。皆を見返してやるの。ほ、ほらっ、早く部屋に帰ってシャワー浴びるわよ!」
まさかそんな大層な目的だったとは。
でも、嫌いじゃないぜ。
「そうだな、帰るか」
俺も立ち上がり、シエルの後を追いかける。




