表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/23

double contract  Ⅲ

 何だか異様に蒸し暑い。

 せっかくの休みだというのに、とても不愉快な目覚めだった。

 目を開けると、陽光の優しい光が目にしみる。思わず、手で顔を覆おうとするが、動かなかった。

 首だけ動かしてみると、金と銀の少女が見えた。美の女神もかくやという美貌の持ち主だ。

 どちらもネグリジェ姿で、きめ細かい肌があらわになっている。シエルが右に、レイシアが左にへばりついていた。

 熟睡している人間二人に挟まれていたら、蒸し暑い訳だ。

 というか、一体何があった……?


「ん……ダメよアルク……そんな、激しいわ」


 お前はなんていう夢を見てるんだ! と心の中で叫ぶ。

 流石に、気持ちよく寝ている二人を起こしてしまうのは気が咎めた。


「……ぅん」


 レイシアが身体をよじった。

 すると、マシュマロの様に柔らかい二つの感触が俺を襲った。

 これはまずいぞ、いろいろとまずい。


「やぁん……あっ」


 今度はシエルが変な声を上げ始めた。

 お前ら起きてるだろ。

 嫌がらせしてるんだろ?

 シエルももぞもぞと動く。しかし、レイシアの様な感触は襲ってこない。

 なんだろうか、とても申し訳ない気持ちだ。


「ん……おはよう、アルク」


 レイシアの猫の様に大きな瞳が見開かれる。ごしごしと手でこすりながら、上半身を起こした。


「悪い、起こしたか?」


「はぁん……大丈夫よ」


 背伸びをした事でネグリジェの肩紐が片方二の腕まで垂れ下がる。際どい事になっていたので、慌てて視線を逸らした。


「一つだけいいか?」


「ん……何かしら?」


「お前らは何で俺のベッドにいるんだ?」


 レイシアは意味ありげなためを作って、にやりと笑う。


「あら、聞きたいのかしら?」


「……いや、やめておく」


 シエルを引きはがし、ベッドから降りる。

 時計を見ると、時刻は十二時を指していた。


「なぁ、レイシア……今日は買い物に行くんだよな?」


 そう、今日はシエルとレイシアを連れて街へ行く約束をしていたのだ。


「そうだけど、どうかしたのかしら?」


「いや、どうせ金を払って飯を食うなら、街の店でも良いかと思ってな」


「そうね。じゃ、そうしましょう」


 シエルを起こし、身支度を済ませて学園を出る。

 外出届けが必要だが、前もって提出しておいた。

 タイルで舗装されたメインストリートを歩き、巨大な門を潜る。

 学園の敷地を取り囲む障壁を越えた先には、ローレンシア大陸の中枢都市が広がっている。

 建物の大きさはまばらだが、街を貫いく大通りに沿って店が軒を連ねている。

 店の種類は雑多で、飲食店から怪しい道具屋まで実に様々。

 道行く人も大勢で、活気に満ちている。さすがは中枢都市だ。


「あのお店がいいわ」


 レイシアが指さしたのは、真新しいと思われるレストランだ。全体的に白い塗装で、目立つ。若い男女が好みそうな雰囲気がする。

 中に入ってみると、案の定、客の大半が若い。しかも、カップルが多い。

 店員の女性に案内されて窓際の席へと誘導された。


「それでは、お決まりになりましたらそちらのベルでお呼びください。ごゆっくり」


 女性は一礼するとそそくさと裏手に引っ込んだ。

 メニューを手に取り、開く。っげ、メニューの名前が洒落すぎていて、訳がわからない。

 戦いに明け暮れる日々を送っていた俺にはどうも縁遠い。もはや、一種の魔導書に見える。


「……あ、アルク」


 シエルも困った顔をして、こちらを見てくる。

 レイシアはというと、メニューを凝視し、考え事をしていた。


「なるほどね」


「お前、このメニューの意味がわかるのか?」


「いえ、さっぱりだわ」


「だったら、わかった様な雰囲気を出すな」


 この難解なメニューをどう攻略しようか。と、思考の迷宮に片足を突っ込みかけたところで、誰かに背中をタップされた。


 振り向くと、


「何かお困りでしょうか?」


 見知った顔のウエートレスがにこにこしながら立っていた。

 栗色の髪に、柔和な雰囲気の少女。ティアだ。


「田舎から出てきたもんで、メニューがよくわからないんだ……というか、お前はここで何をやってるんだ?」


「あぁ、私ですか? 生活費の足しになるようにお手伝いをさせて貰ってるんです」


「生活費の足し……?」


「はい、私達は奨学金で学園に通っていますので……そこまで持ち合わせがないんです。お嬢様には少しでも前の様な生活を送ってほしいので、あぁ、お喋りが過ぎましたね。それではメニューの説明をさせて頂きます」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ