An important thing Ⅲ
目を開けると青空が広がっていた。
どうやらここは、草原らしい。
若草が一面に生え、一本だけ木が生えている。俺はその木の下で転がっていた。
包み込むよう様な暖かい風が草原を撫でる。
木漏れ日に目を細めると、不意に一人の少女が視界に飛び込んでくる。
足首まで伸びた長く、艶やかな金髪を風に遊ばせながら、ニコリと微笑む。睫毛が長く、目鼻立ちの整った、妖精の様な少女。出会ったばかりのレイシアだ
可憐な少女は、復讐に取り憑かれていた俺を優しく包み、生きる意味を教えてくれた。
いつもニコニコしていて、どこへでも後を追っかけてきた。俺が何度悪態をついても笑顔を崩さなかった。
何の前触れも無く、世界が一変した。
空は灰色に、草原は瓦礫の山に。少女は端正な顔をくしゃくしゃにして、大きな真紅の瞳から、大量の涙を零す。
そうか、レイシアが変わったのは、この時だったな。
ある仕事で、俺とレイシアは小さな街を訪れていた。そこへ、十数匹の龍が押し寄せてきたのだ。
俺とレイシアは奮闘したが、結果として街の住人を誰一人として守れなかった。
俺はその時、瀕死の怪我を負い生死の狭間を彷徨った。
目を覚ました時、いつも隣で笑っていたレイシアはいなくなっていた。
『アルク……アルク……』
頭の中で、レイシアの鳴き声が幾重にも響く。
『……お願い、私を助けて』
途切れる様な、細い声で幼いレイシアが呟く。
俺は……レイシアを助けてやりたい。いつも笑っていた、あの頃のレイシアに戻してやりたい。
こんなしみったれた場所で、のんきに寝っ転がってる場合じゃない。
早いとこ、アイツらの元に行かないと。
レイシアのやつ。俺が付いてないと何をやらかすかわからないからな。




