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新しい人生の新しい学校生活 11

また長くなって申し訳ないです

「ギリギリ並んだな……チッ。これから貴様ら“ステータス”の詳細と更新をしてもらう。まさかとは思うがこの中でステータスを知らん奴はおらんよな?」

アメジストは次にすることを簡潔に言った。

前半何か舌打ちのようなものが聞こえた気がしたがセスはそれを一切気にしない。いや、気にしてはいけない。

「……ぃゃ、おれは解っているからな」

前の方に並んでいたセス、リリー、ルーティ、シーナ、エリアーヌはヤコフの呟きを聞き一斉にヤコフを見る。

「なっ、なんだよ?」

ヤコフはつっかえながら言う。

「うるさいぞヤコフ。私が話しているときに話すなんていい度胸しているな。今からでも五十キロ走るか?」

一人だけ声を出していたヤコフにアメジストは威圧感を隠さずに言う。

「いや、その、すいません!」

しどろもどろに謝るヤコフは額に冷や汗をかいていた。

「ふん、分かればよろしい。では五人ずつこの水晶に触れてもらおうか。そうすれば貴様らの“ステータス”の詳細を知ることができる」

そう言い手に持っていた水晶から手を離すアメジスト。

水晶は重力によって落下を始めた。しかし、水晶が地面に落下し砕けることはなかった。

なぜなら水晶は落下直後にその場で制止したからだ。

どういう原理で浮いているのかは分からないが、ただの水晶ではないのだろう。

「なぁ、ところで“ステータス”て実際のところなんなんだ?」

ごにょごにょと小声でステータスについて聞いてきたヤコフ。

「何って……まさか本当に知らないの?」

セスは首をかしげた。ヤコフがステータスについて知っていると思っていたからだ。

「そもそも、“ステータス”は不必要なものなんだよ。あったところで結局のところ苦労はしないものだからね」

ここで一回区切る。

「でも、“ステータス”を計測できればそれだけで分けられるよね? 優等生と劣等生が」

セスは頬笑みながら優等生と劣等生の口調を強くした。

“ステータス”これは優等生と劣等生を区別するためにできた制度であり、優等生の性能を向上させ、劣等生を成長させるためにできた制度だ。

そのために行うことは経験を積むことだ。しかし、ただステータスを上げるのには想像もできないほどの膨大な経験を積まなければならない。さらに、その経験の十分の一以下しかステータスに加算されることはない。だが、それ相応のステータスを得るにはあまりにも人間の寿命は短い。他の種族ならまだしも人間がそんなに長く生きながらえることはまず無い。そんなことができる人間はそれを辞めたものだけだろう。なら、どのようにしてステータスを上げるのか。それがアメジストの言っていた【詳細と更新】だ。

詳細は言葉通りの、その人間の今現在のステータスがどれくらいなのか。更新もその人間がそれまでに積んだ経験を今現在のステータスに上乗せすることだ。

ついでに言うなこの“ステータス”は人間以外もあてはまる。

「なんだよ差別目的で作られたような制度は」

「『ような』じゃなくて元を言えばそのために作られたんだよ」

セスはあきれながら返答し計測を始めた生徒たちを見る。

すぐに視線を外し観客席の方に歩みを進めた。

「あ、おい、ちょっと待ってくれよ」

ヤコフはセスの後を追いかける。

それに続くようににリリー、ルーティ、シーナ、エリアーヌはついていく。

席に着くなりセスは目を閉じて眠る体制になる。

「え、寝るの?」

きょとんとした声をかけるリリーはセスを揺さぶっている。

「ん、何もすることがないからね」

目をつぶりながら返答し反応をしなくなった。

すぅすぅと寝息が聞こえてくる。

寝ていた。驚愕するほどの速寝だった。

「はやッ!? いやいやいくらなんでも早すぎるだろ」

「うるさいからあんた、もうちょっと静かにできないの?」

騒ぐヤコフに冷ややかな目を向けながら発したリリーの声は低いトーンの声音だった。よほどヤコフの騒ぎ声が気に食わなかったのだろう。声のトーンがこれまで以上に低い。

「うっ……」

何も言い返すことのできないヤコフは小さく唸るしかなかった。




「まだ計測していない奴はさっさっと来い!」

一時間半ほどが経ちアメジストの掛け声で目を覚ますセス。

「計測しないといけないのか」

一言つぶやき席を立つ。

起きたセスに気付いたヤコフ達はそれぞれセスに「おはよう」と声をかけ一緒に立ち上がる。

「それじゃ計測しに行こうか」

エリアーヌは立ちながら言う。

これまでにすべての生徒たちは計測を終わらせていた。そのためセス達は最後の組だった。

水晶のもとに着き計測を始める。

リリー、ルーティ、シーナ、エリアーヌ、ヤコフが計測を先に行う。

それぞれ水晶に手をかざし魔力を流す。

水晶は淡い光を放つ。その光は橙色の温かな光で春の太陽の光のように優しさにあふれた光だった。

五人のステータスが順番に水晶に表示される。それと同時に更新もされていた。

「おっ、やりー。俺またステータスが一段と高くなったぜ! 痛ッ!?」

当たり前のことを大声で叫ぶヤコフ。正直あまりにもうるさかった。そのためなのだろう、リリー、シーナエリアーヌから一発ずつ頭をはたかれた。

「痛ッッッ!!?」

さらに悲痛の声で叫ぶヤコフは若干涙目になっている。

さらに叩かれた。いや、殴られたがただしいのだろうか。

申し訳程度に握っているスタッフで殴ったのだろう。その犯人は最後の一人。ルーティだ。

「ごめんなさい。ちょっとうるさかったので……」

静かに謙虚に言うルーティは持っていたスタッフをギュっと握りしめる。

やはり気に障るうるささだったのだろう。

セスはそんなことはどうでもいいのか水晶に近づき魔力を流した。

水晶は先ほどと同じように淡い光を放つ。しかし、この光は先ほどのように温かな光ではなかった。その色は青白くとても悲しげな色をしていた。何かとても大切なものをなくしたかのような、それか壊されたかのような、そんな悲しさに満ちた光だった。

セスの“ステータス”が表示更新された。



【ステータス】

セス・クラウン


【称号】クラウン家の一人息子


【筋力】  120→125

【耐久力】 92→100

【器用】  126→140

【俊敏】  145→150

【魔力】  40→40

【魔力量】 50→50

【魔法】  属性無



これがセスのステータスだった。

人間の初期平均ステータスは二百だ。だが、セスのステータスはその平均にどれも届いてはなかった。それと同時に初期平均更新すらも人のそれではなかった。

これを見て一切表情を変えずにいるセスはふり返り、

「僕は全然だったよ」

残念そうに肩をすくめながらヤコフ達に言葉を投げかける。

「えぇ? なんて~?」

しかし、聞こえてはなかった。

「いや、なんでもないよ」

「なんだよ気になるじゃねぇか」

「私もきになる!」

ヤコフに便乗するかのようにエリアーヌも聞く。

「いや、ただあんまし良くなかっただけだよ」

簡潔に答えた。

「全員終わったな? ステータスの結果は後でカードに記載されたのを渡すぞ。次は契約か……。あまりこれはしたくないのだがな。全員集まれ! 契約を始めるぞ」

とてもよく通る声で集合をかけた。

生徒たちは迅速に行動する。

集合時間僅か三十秒。

これほどの速さで並べるところはそうそうないだろう。

「今から全員契約をしてもらう」

「契約ってなんですか?」

契約に疑問を持った他の生徒が質問をした。

「あぁ、契約が何か知らないのがいるのか……。まあ、簡単にいえば使い魔、つまり魔物を自分のパートナーにすることだ」

簡潔に返答したアメジストは面倒そうに続ける。

「今回行うのは召喚契約だ。これをするためには召喚魔法陣を自分で描け。契約の方法を知らない奴は私のところへ来い。各自散開! ああ、言い忘れていた。貴様らくれぐれも複数人での契約はするなよ」

最後に忠告をし客席の方に進む。

数名の生徒がアメジストに聞きに行き、それ以外の生徒は魔法陣を地面に描き始めた。

白と契約をしてしまっているセスは少しの間立ち尽くしていたがすぐに空いているところで魔法陣を描き始めた。

その魔法陣はこれといって特に変哲もないものだった。

円を描き中に星を描いただけの簡単な魔法陣だ。

それに魔力を流し詠唱を行う。

今は魔法具や機械が発展しているにもかかわらずこの方法は昔から変わらない。

「詠唱か……何て言えばいいんだろう……。まぁ、適当に言えばいいかな」

何とも適当に考えているセスは詠唱を口ずさむ。

「何を求める? 何を求めた? なにも求めるものはない 僕はただの人なのだから。人でありたいから。来い、それでもいいのなら」

何も考えずにただ出た言葉を口ずさんだだけ。

だが、これでいい。ただ言葉を言えば何かしらは応える。が魔法陣は一切反応をしなかった。

「…………」

なぜかは分からない。だが反応しなかったことには変わりはない。

「――残念だったな」

セスの後ろに来ていたアメジストが声をかけた。

「ええ、多分そうだろうなとは思ってはいました」

アメジストの言葉の意味が分かったセスはまた肩をすくめながら言う。

「ごく稀に召喚ができない人間がいるがまさか貴様がそうだとはな……」

続々と召喚に成功している生徒たちの中で唯一セスだけが召喚できていない。

ごく稀はだてではないようだ。

「うおあああああああああああああぁぁぁッ!!!!?」

その時アリーナ中に響いた叫び。その叫んだ正体は生徒だということは想像に難くない。

次に聞こえてきたのは、


『グオオオオオオオ゛オ゛オ゛ォォッ!!!!!!!』


完全に人の叫び声ではない。禍々しい怪物の叫びだ。

その方向に視線を向けるとそこには見上げるほどの巨人がいた。巨人の下を見ると五人の生徒が腰を抜かしへたり込んでいた。

この巨人を一言で言い表すなら戦士だろうか。身長五メートル弱。筋骨隆々。纏うは覇気。もつは巨大な大剣。着るは頑丈な鎧。

そこにいるだけで体中の筋肉が悲鳴を上げ、脳がブザーを鳴らし、魂が拒否反応を起こす。

恐怖だ。

あり得ないほどの魔力を持った巨人だった。

「チッ、馬鹿がッ! 全員退避しろ! 死にたくなければ早くしろ!!」

アメジストは剣を出現させ声を張り上げ警告をする。生徒たちは我先にと駆け出した。

警告をした瞬間にはアメジストは巨人の方に駆け出していた。真っ先に巨人の足元にいる生徒たちを魔法で吹き飛ばし助ける。

セスはこのアリーナを見まわし生徒たちが逃げている様を表情を変えずに見ていた。

その時セスの手をつかみ引っ張る者がいた。

「何ぼさっとしてるんだ! さっさと逃げないと死ぬぞ!」

ヤコフは力強くセスを引っ張る。がそれをすぐに振りほどいた。

「チョッ!? 何してんだよ、死にたいのかよ?」

「死ぬ気はない。ただちょっと気になるから見ているだけだよ」

ただ観察しているだけだというセスに、

「何言ってんだよあれが何なのか分かってんのかッ? あれは禁忌召喚された魔人だぞ。それの中でも鎧を着た巨人だ。どう考えてもおかしいだろッ!? 」

在り得ない。そう言いたいのだ、ヤコフは。

そもそも召喚とは、通常召喚用の魔法陣を描き魔力を流して契約の言葉を発することで契約をする。だが、これに予想外の事、複数人で魔力を注ぎ込んだり、必要最低限以上の魔力量など不必要なものがあるとこの召喚契約は悲惨な失敗につながる。今回のように。これを禁忌召喚または違法契約召喚といわれる。禁忌召喚された魔物は普段とはまったく異なる姿かたちをしており、尋常じゃない魔力を有し強固な体を持って召喚される。それと同時に暴走している。これを倒すことは難しい。

「逃げるんなら先に行ってくれるとありがたいかな。僕はあれを見ていたい」

静かに応える。

「ならおれも残る! お前だけ残していけるかっ!」

「フッ。どこかの主人公みたいな事を言うねヤコフは」

「今はそんな冗談言ってる場合じゃないんだよッ!!」


ドンッッ!!!!!


その時爆音が響いた。

音の鳴った方に目を向けると煙に包まれている魔人。だが、煙の合間から見える体は一切傷ついている様子はない。

アメジストは連続で魔法を放ちながら切りかかっている。それを魔人は避けることなく受け続けていた。しかしそのどれも決定打にはなりえてはいなかった。

「チッ。どこまでもめんどくさい奴だ。だから召喚契約は嫌なんだッ!」

悪態をつきながらなお攻撃の手をゆるめはしない。

巨人はまだ動く様子がない。ただ動かないだけなのか、それともまだ動けないのかどちらかは分からない。

「なぁ、俺の気のせいなのかは分からないんだがあいつ何かを待っているように見えるのは俺の気のせいか?」

「うん」

ヤコフの疑問はセスも感じていたものだ。

確かにこの魔人は何かを待っているかのように見える。だがこれが実際そうなのかは誰にもわからない。

その時、突然魔人が手を振るった。それは完璧にアメジストをとらえ吹き飛ばす。

吹き飛ばされたアメジストは体勢を立て直すことができずに相当な速度を持ってこのアリーナの壁に叩きつけられた。

壁はへこみアメジストは背中を強打したために肺の中の空気がすべて出る。それと同時に体内を傷つけたのか血も吐き出した。

「おかしい」

セスはここで疑問に思った。

どこか違和感がある。どこだろうか。確かにあるはずの違和感。この場所はどういう場所だった? 何のためにある? ここには何がある? そうあったはずだ。

「何がおかしいんだ?」

ヤコフは何も違和感は感じていないようだ。

「……ああ、そういうことか」

「ん? 何がそういうことってうッ……!」

この疑問の正体に気付いたセスはすぐに行動した。ヤコフの側頭部にASWの棒を当てた。

ヤコフは脳を揺さぶられ膝を崩しその場に倒れこんだ。完全に気絶してしまった。

気絶させてからの行動は速かった。魔人に吹き飛ばされたアメジストのもとに駆け出す。いまだ魔人はその場から動こうとはしない。やはり何かを待っているのだろうか。

動かないのならちょうどいいと思いすぐにアメジストのところに着いた。

「大丈夫ですか?」

「……ゲホッゲホッ、何が大丈夫なものか。くそったれ」

心配したセスに悪態をついてまた血を吐き出した。

セスは瀕死のアメジストの容体を確かめる。

「肩甲骨と助骨の骨折および内臓の損傷か……油断しましたね」

苦笑いを浮かべながら傷を治す魔法をアメジストにかける。

「あまり魔法は得意ではないからあまり期待しないでくださいね」

念を押しながらアメジストの傷を応急手当てし壁際まで運ぶ。

「何の真似だ貴様、私をこんな場所に連れてきてどうするつもりだ……」

どこかいらだたしげに聞いてくるアメジストに、

「何の真似と言われましても……ただ壁際に避難してもらっただけですよ。危ないですから」

顔色変えずに淡々と告げ魔人の方に向き直る。

「あれやれるのかな?」


まだまだ続きます!


どうか楽しんでください。

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