新しい人生の新しい学校生活 9
ケースを開けた瞬間に全体が何かに覆われた。セスは悪い予感がした。もしかしたらとドアを開ける。が、開かない。セスの悪い予感は的中した。
「……やはりか」
<主殿、この嫌な魔力はなんだ?>
白の言うとおりとても嫌な感じがする。
ケースから溢れている魔力を確かめるためにケースに近づく。
セスはケースに近づき少々の息苦しさを覚える。これは長時間当たると危険と判断しすぐに離れ壁際に戻る。
このままでは部屋全体がこの魔力で満たされてしまう。
幸いにもケースから溢れてくる魔力の量は微量でしかも魔力の流れが遅い。
それでも時間の問題だが。
セスは少し考え、またケースに近づく。
やはり息苦しくなる。それをこらえケースに手を伸ばす。ふたに触れそのまま閉める。
ふたが閉まったことでケースから流れ出ていた嫌な魔力は無くなり、それと同時に部屋を覆っていたものがなくなる。
セスはふぅと一息つくともう一度ケースのふたを開く。
それを見ていた白はセスを止めようとしたが止めれず、ふたは完全に開いた。中からは先ほどまで出てきていた嫌な魔力は出てこない。多分、一回きりの物だったのだろう。
<先ほどの部屋を覆ったものとあの嫌な魔力は何なんだ?>
白がセスに疑問をぶつける。
「部屋を覆っていたものは最近作られた結界みたいなものなんだけど、指定した範囲、もしくはある一定の範囲を別空間に変換する魔道具だね。さっきのは指定した範囲だと思う。それと、嫌な魔力は触れたものの魔力を奪うものだよ。魔力を奪って自分の魔力に変換して、半永久的に稼働し続けるなかなか面白い魔道具だよ。あのままにしていると魔力を全部奪いとられて死ぬんだ」
分かりやすく説明すると、
<結界の方は固有結界みたいなものか?>
白の問いにセスはコクリとうなずく。
<魔力の方はこの世界にある魔力を使えば半永久的ではな、永久的に魔力を出し続けることができるのではないか?>
白の問いにセスは少し苦笑いをする。
「永久的……は絶対に不可能だね。使っているのが間道具だから。理論的には確かにこの世界の魔力を使えば永久的に使い続けられるけど、壊れないものはないからね」
セスは白の疑問を肯定しながら否定する。
<本当に人間は賢いのか愚かなのか分からんな>
白は苦笑に近いため息を吐く。
セスは苦笑いしケースを部屋の片隅に置く。これからほかの部屋の特に寝室をかたずけと風呂の掃除をしなければと思い寝室に向かう。
寝室は先ほどの部屋から左に行き、曲がり角を左に行ったところにある階段を上がり、右側の一番奥のところにそれはあった。
中に入って明かりを点ける。思っていた以上には汚れてはいなかった。
むしろこれまでの部屋の中では一番綺麗にされてるのではないのだろうか。
ベットに近づき埃などを被ってないか調べるとそんなことはなく、布団や毛布などすべて新品の香りがした。
近くのタンスを開けると中にはハンガーが二十数個入っていた。
タンスを閉めて、明かりを消し部屋を出る。
ここまでちゃんとできるなら、他の部屋もして欲しいと思いながらセスは風呂場に向かう。寝室は一切掃除の必要がなかったからだ。
脱衣所に入り風呂場を覗く。なかなか広く大きい風呂場だった。それと風呂場もとても綺麗にされていた。
確認しとけばよかったと思っているセスだが、後の祭りだ。
セスは風呂に入るために、お湯をためる魔道具を起動させる。
風呂が溜まるまでに持ってきていた荷物を寝室に運ぶことにした。
片付けた部屋から持ってきていた荷物を持ち寝室に荷物を下ろす。
中身を出しタンスなどに収納していく。
持ってきていた量はこれといって多くはないが、出した時に形が崩れた洋服を綺麗に畳み直し収納する。
すべての荷物をなおし風呂場に戻ると、ちょうど風呂が溜まっていた。
脱衣所で服を脱ぎ中に入る。
セスは取り付けてあるシャワーの蛇口をひねる。
最初は冷たかったが、すぐに温かいお湯が出る。
体を簡単に洗い湯船に浸かる。
三十分ほど浸かり次に髪を洗う。長いため少し洗いにくそうだ。
セスは髪を洗い終えすぐに脱衣所に出る。
シンプルな服に着替え髪を乾かしながら寝室に向かい、ベットに横になる。
そのままセスの意識は夢の中に引きずり込まれた。
セスの起床は早い。まだ日が昇っていないにもかかわらずセスはむくりと起き上がる。
ベットから降り伸びをする。これがセスの朝起きた時にする習慣、というよりは癖だ。
「……んん」
寝室から出て、一階に足を運ぶ。真っ暗で何も見えないがセスにはそんなのは関係ない。
寝起きのためまだはっきり意識が覚醒していないが、台所に入り昨日買っておいたもう片方の肉、チリタルの肉を冷蔵庫から取り出しフライパンをあっためたあと、油を敷き両面をじっくり焼く。シンプルに胡椒に似ているぺスパをかけて出来上がりだ。
それを食べ終えると次に動きやすい格好になり外に出る。ついでに最初の方に見たSAWを持っていく。
向かったのは白と勝負をした館の裏にある広場だった。
そこでひとしきり体を動かしたあと、手を前にだした。
セスは何かを呟く。
セスの手に小さな光が出現した。
まだあたりが暗いおかげではっきり見えた。
もし日が昇り明るくなっていたら見えなかっただろう。
それぐらい小さな光だった。
その光を前に飛ばす。光はゆらゆらと安定せずに飛んでいく。今にでも消えてしまいそうだ。
セスから離れて三メートルほどで光は音もなく消えた。
光が亡くなったおかげで周りはさらに暗くなった。
次にケースごと持ってきていたSAWを一丁取り出す。
それを両手で構える。構えるまでの動作はゆっくりとしていた。慣れていないからゆっくりなのではなく、むしろ逆だ。その姿はこれまで何回も触ってきたかのように慣れている感じがした。
セスは引き金を引いた。
音はない。
聞こえてくるのは林の木々を揺らしている風と木の葉のこすれあう音だけだ。
セスはもう一度引き金を引く。
今度は銃身の先端に先ほどよりも明るい光が出現する。
しかし、この光は先ほどのように前進することはなかった。ただそこにあるだけ。浮いているだけだった。
セスはちゃんと機能していることを確認しSAWをケースにしまう。
この後さらに体を動かし館にもどった。
先ほど書いた汗を流すために寝室に着替えなどを取りに行き風呂場に向かう。
風呂場に入りシャワーをだし水が温かくなるまで少し待ち、温かくなり掻いた汗を流す。
これまでがほとんどいつものように朝起きてする習慣だ。
セスがシャワーを浴び終え着替えをすます。
寝室に向かい制服に着替える。
セスが館に戻ってきて風呂出たころにはもうすぐ登校時間になっていた。
結構な時間セスは外で体を動かしていた。
まだ着なれていない新しい制服に少々の違和感を感じるのか自分の姿を鏡で見ている。
一分ほど見回したあと、カギがちゃんとしまってることを確認し、館を出た。
学園に着くまで特にこれといって何かがあるわけでもなく普通に登校した。
強いて挙げるなら黒猫を見かけたことだろう。
セスは自分のクラスEクラスに入り自分の席に着く。
「よっ……ええっと名前なんだっけ?」
席に着くなり声をかけてきたのはセスの前の席に座っていた男子生徒だ。
名前はヤコフ・アブト。昨日アメジストに怒られた生徒だ。
「僕はセス・クラウン。君は確かヤコフ・アブトだったね」
セスはヤコフの名前を覚えていた。意外と印象が強かったためだろう。
セスに名前を呼ばれヤコフは驚く。
「おお、そうだセスクラウンだったな……ッて、俺の名前覚えていてくれたのか!」
「まぁ一応」
とセス。
と、そこに、
「セス君おはよー」
「おはようございます」
「おは!」
順番にリリー、ルーティ、シーナが声をかけてきた。
「おはよう」
仲良し三人組にあいさつを返したところで部屋の扉を開けて入ってくるものがいた。
「よーし、お前らさっさと着替えてアリーナに向かえよ」
アメジストだ。
アメジストはそう言ってすぐに教室を出た。
生徒たちは各自行動し始める。
アリーナに向かうのは昨日聞かされていた。何をするのかも聞いてはいるがどのようなことをするのかがあまりつかめない説明だった。
セスは席を立ち更衣室に向かう。
「あ、ちょっと待てよセス!」
セスの後ろを追いかけるヤコフ。




