新しい人生の新しい学校生活 6
<こんなものでいいのか? 主殿よ>
掃除するかしないか対決に負けた白は、問いかける。
「ん? うん。これではかどるよ、ありがとう」
簡潔に礼を言い掃除の準備を始める。
セスが白に手伝わせたこととは、あまりにも簡単で少ないことだった。それは、床を凍らせ滑りやすくしただけだった。
「なに? あぁ、このぐらいで大丈夫だよ」
セスは白の雰囲気でなんとなくで言う。
<今の我はそんなに顔に出ているのか?>
白は疑問に思った。
「いや、なんとなくだよ」
淡々と答え、準備を再開する。
準備はすぐに終わり、部屋の中に置いてある家具を滑らせながら部屋の外に出す。
<主殿よ、床を凍らせて家具を外に出すのはいいのだが、凍らせたら床のゴミは取れないんじゃないか?>
セスが部屋の家具をすべて出したところで白は問う。
「それなら白がどうにかできるでよね?」
確信を持ってセスは言う。
<なぜそう思うのだ?>
また問う。
「いや、これまですごしてきて、魔法は自分の意思でいろいろ工夫っていうか、以外に融通がきくことがわかってるから」
<確かにそうだな。我の氷は作ったり壊したり自分の意思でできるからな>
「だから氷が自然に融けることはないよね? それに氷を壊すことができるのなら跡形もなく氷をなくすことは可能でしょ。まあ、できなくてもなんら困らないけどね」
雑巾を片手に壁を拭いていく。
<やったことはないが多分できるとは思うが。......?>
白はなぜ困らないのか疑問に思った。
セスは簡単に壁を拭き窓を拭く。
窓の先には林がある。どの木も細長い木々が雑に不規則に並んでいる。
そのなかの一本の木に、リスのような動物が二匹いた。
楽しそうにじゃれついている姿を見ていると何とも癒される。
窓を拭き終わり床の氷を白に頼みなくしてもらえるか頼むと、白はすぐに床の氷を消した。
セスは白にお礼を言いすぐに床の掃除に取り掛かる。
氷に覆われていた床はいっさい濡れてなく納得する。
セスが床をはわき始めてすぐに玄関にあるベルが鳴った。
「ごめんくださ~い」
「あの~、セスさ~ん」
この声の一つには聞きおぼえがある。
先ほどまで一緒にいたユーナだ。
あとひとつはセスには分からない。
<客が来たようだな。主殿の客のようだが、どうするのだ?>
「何の用だろうね」
セスは箒を壁に立て掛け玄関に向かう。
玄関を開けると、ユーナと一人知らない女子生徒がいた。その女子生徒は制服を見て同じ1年生なのが分かった。
この学園の制服は学年ごとに制服の色が異なる。3年は白色。2年は灰色。1年は黒色と別れていた。だが、来年に制服の色が変わることはない。この制服は持ち越しされるからだ。今年はこの色別なだけだった。
セスは隣の女子生徒の胸元を見る。べつにやましい気持があるわけではない。そこにセス達にはなくて、ユーナ達にはあるものが付いていたからだ。そこにあったのはエンブレム。
三枚の花びらに一本の剣のシンプルなものだった。
それは上位クラスのSABだけが付けられるエンブレム。これを見て上位クラスの同級であることが分かる。
まあ、ユーナが連れてきた時点で同級生なのは確定している。
「セスさん、こんにちは」
「こんにちは」
ユーナは礼儀正しく頭を下げる。一方隣の彼女はあいさつはしたもののこちらを値踏みするように見てくる。
「何か用」
淡々と言葉を発する。
「えっと……その……こちらのシリカ・シーベントさんがセスさんのことを紹介してほしいらしくて来ました……」
ユーナは少してんぱりながら来た理由を話す。
「はじめまして、シリカ・シーベントよ、よろしくね」
シリカは改めて自己紹介しながら手を差し出してきた。
「はじめまして。セス・クラウンて言います。よろしく」
差し出された手を握り返した。だが、次に発した言葉は、
「これだけなら帰ってもらえるかな? 僕は今忙しいんだ」
だった。淡々といってのけた。
この言葉だけ聞いていたら感じの悪い奴だと思うだろうが、実はそうではない。これはセスの気遣いだった。
このまま中に入れてしまうと彼女たちに箒ではわいて舞い上がった埃などを吸わせてしまうし、このまま中に入れてしまうと生真面目なユーナのことだ確実に確信を持って掃除を手伝おうとするだろう。
「そんなにきつく言わなくてもいいんじゃないの?」
やはりと言うべきか、シリカが食ってかかってきた。
「いいから帰ってくれるかな。来るんならまた今度にして」
なおも淡々と言う。
「なんでそんなに帰ってほしいの!……?」
「シリカさん大丈夫ですよ。多分セスさんにもいろいろ理由があるんですよ。今日のところは帰りましょう。押しかけてすみません」
シリカをさえぎりユーナは頭を下げて後ろを振り返る。
「えっ、あっ、ちょっと待って!」
シリカはユーナを追いかける。その時こちらをふり返りべぇと舌を出してユーナを追いかける。
<よかったのか?>
「うん。今日のうちにこの掃除を終わらせたいし、手伝わせたくはないしね」
<それは、またなぜ?>
手伝わせたくない理由を聞いてきた。
「多分、ユーナはまだ終わってない掃除を見たら手伝おうとするし、あと、客をもてなすためのお茶とか用意できてないからだよ」
たったそんな理由で帰したのか? と思われるだろうがセスにはそれが当たり前で普通になっていた。
それを嫌というほど教え込まされた。
セスは玄関のドアを閉め先ほどいた部屋に戻る。
「今は……3時半過ぎか……。あと1時間半したら買い出し行こうかな」
そう呟きまた掃除に取り掛かる。
5分で床をはわき10分で床を拭く。
15分で壁や隅に溜まっていた埃を拭き取り、10分で家具を入れてこの部屋の掃除は終わった。
とても手際よくやったためか45分で一部屋が終わった。
ここでセスは後悔する。
「あぁ、台所の掃除を先にやっとけばよかった……」
<台所ならこの部屋を出て左に行ったところにあったぞ>
「わかった」
部屋を出て左に行き二部屋隣に台所はあった。
台所に入り中を見渡すととてもではないがそこそこ埃や汚れが目立っていた。
台所は広くいため動きやすく使いやすそうだった。
「これならすぐに終わりそうだね」
セスは台所の掃除をすぐに始める。
コンロや棚、シンク。次々に掃除する。
ここの掃除にかけた時間は50分だった。
「ふぅ。終わった」
セスは伸びをしながら呟く。
「白。買い出しに一緒に行く?」
廊下で横になっていた白に声をかけると白は頭をあげ起き上がる。
<買い出し?>
白は首をかしげる。
「そう買い出し」
<なぜ我も行かないとならないんだ?>
あまり行きたくないようだ。
「行かないんだったらそれでいいけど。それじゃ行ってくるね」
セスは服についていた埃を払い玄関に向かう。
その時、白はまた起こしていた体を下げていた。
玄関を出て雑貨屋やカフェがある広場ではなくもっと食材などが多く出回っているメインストリートの方に向かう。
館からメインストリートまで10分とちょっと。
肉の焼けたいい香りが鼻をくすぐる。
やはりというかたくさんの人たちであふれかえっていた。
周りから客引きの声がアクサン聞こえてくる。
「やすいよ! やすいよ!」
「よってらっしゃい! みてらっしゃい!」
「今日はとっても新鮮な果物があるよー!」
どこの店主もとてもいきいきしている。
セスは近くにあった肉屋を見てみる。
「おっ、兄ちゃんなんかほしいものでもあるのかい?」
肉屋の店主が声をかけてくる。
「ならそこのバンデンの肉を1カルガンとチリタルの肉を2カルガンお願いします」
セスは必要な分だけ頼むと店主は信じられないという顔をしていた。
カルガン。
これは重量のことだ。
カルガンは地球で言うところの10キログラムと同じ量になる。
こんなに買うのはどこかのレストランを経営しているところぐらいだろう。
個人でこれだけ買う人はほとんどいない。
「本当にいいのかい?」
店主は聞いてきた。
「ええ、構いません」
セスは簡潔に答える。
「そ、そうかい? ならいいんだが……。お値段1万デジベルだよ」
デジベル。
この国の通貨の名称だ。
1デジベル日本円で10円と同じぐらいだ。




