No.04 毒(あま)すぎる晩ごはん。
ななはななかの策略により瑠花の隣に顔を真っ赤にしたままおぼつかない足取りで座る。
(近い近い近い...っ!)
机にはななの大好物の、「ななか特製デミグラスハンバーグ」が並んでいるが、隣から漂う瑠花の強烈な甘い匂いで頭がくらくらする。
手を合わせてハンバーグを食べ始めると肘が瑠花にぶつかる。
(───っ!)
「あっ...えっと...ごめんなさい...」
(むりむりむりむりっ!味しないっ!)
「あ、いえ……僕の方こそ、すみません。……望月さん、その、萌え袖……可愛いですね」
とはにかみながら言わせて、ななの脳内をさらに爆発させる。
(そんなの、反則でしょぉっ......!!!!!)
顔を真っ赤にして俯く。
ダボッとした萌え袖の指先で、お箸をぎゅっと握りしめるのが精一杯だ。
瑠花のブラウスのフリルが、ななの露出した肩や腕に、動くたびにふわふわと触れ続けている。
そのくすぐったい感触のせいで、吸血鬼としての本能が喉の奥で「きゅう」と可愛くない音を立てた。
瑠花のブラウスがずっとななの露出した肌に触れている。ななは食事に集中できない。
「あら仲良しねぇ...瑠花くん、よかったらななに『あーん』してあげて。」
「ふぇっ!?おねぇちゃん何言ってんの!?」
ななは顔を真っ赤にするが、瑠花はその言葉を真に受けて何も疑わずに、ハンバーグをお箸で掴んだ。
「も、望月さん。.....はいどうぞ。」
瑠花がお箸で小さく切ったハンバーグを掴み、ななの口元へと差し出す。
長い睫毛に縁取られた瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。逃げ場はない。
(あ、あぁ……。……もう、どうにでもなれ……っ!)
ななは羞恥心で涙目になりながら、ギュッと目を瞑り、小さな口を「あ」と開けた。
ぱくっと、差し出されたハンバーグを口に含んだ。その瞬間。唇に触れたお箸の感触と、指先から漂う圧倒的なまでの「瑠花の匂い」。
(──っ!食べちゃった!食べちゃったよぉ!)
その瞬間、ななの理性の糸がぷつんと切れる。
「ふにゃあああ....」
(もう我慢できないっ!)
理性が消え失せたななの瞳が吸血鬼特有の淡い赤色に染まる。テーブルに勢い良く箸を置いて、震える手で瑠花の肩を掴む。
ななは小さな可愛らしい八重歯を出して、フリルに縁どられた白く細い、瑠花の首筋にあむっと嚙みつく。
「……っ、望月、さん……?」
首筋に走る、小さくて鋭い痛みと、吸いつくような唇の熱。
瑠花の驚いたような声が、鼓膜を甘く震わせる。
でも、もう止まれない。
フリルの隙間から広がる、世界で一番甘い「瑠花」の味に、ななはどこまでも深く沈んでいった。




