No.03 瑠花くんに嚙みつきたい
「あの...その...えっと」
潤んだ瞳で顔を真っ赤にして瑠花の前に正座している。
「うぅ...ごめんなさい!」
緊張しすぎて自分の部屋に逃げ込む。
「あら、ごめんなさいね」
ななはドアに背中を預ける。
「はぁ...はぁ...もうむりぃ...」
(……むり。あんなの、反則。……可愛すぎるでしょ、瑠花くんっ!)
脳裏に焼き付いて離れないのは、ミルク色のブラウスに包まれた瑠花の姿だ。
襟元で揺れる繊細なフリル。そこから覗く、透き通るような白い首筋。
ドアの隙間から、お風呂上がりの石鹸の香りと混ざり合った、瑠花特有の「甘い血の匂い」が容赦なく流れ込んでくる。肺の奥まで瑠花の匂いに満たされ、まるで瑠花に包み込まれているように頭がふわふわしている。
(はぁ……はぁ……。吸いたい。……噛みつきたい。あんなに無防備な首筋見せられたら、私の牙が、疼いて止まらない……っ!)
口の端から八重歯がこぼれ、吸血鬼としての本能が喉を鳴らす。
だが、その一方でななの乙女な部分が、猛烈に騒ぎ出した。
【脳内・清楚担当】「だめよ!なな。あなたは学校一の清楚な美少女なのよ!」
【脳内・本能担当】「でも見てよ、あの首筋。もちもちしてて、絶対美味しいわよ。一口……一口だけでいいから、あむって……」
【脳内・恋心担当】「待って。そんなことより、瑠花くんがあんなに可愛い格好で来てるのよ!? 私だって、もっと可愛い格好して迎えなきゃ、釣り合わないじゃない!」
(どうせなら...かわいい格好しようかな...)
一瞬その考えが頭の中をよぎるものの、一人で首をぶんぶんと横に振って悶絶する。
(むりむりむり! 可愛い格好なんてしたら、誘ってるみたいじゃん! ……でも、今の制服のままじゃ、ただの同級生……。……隣の部屋の、特別な女の子として……一歩、踏み出すなら……っ)
時計の針が刻む音が、やけに大きく聞こえる。
「……よし。……一回だけ。……今日だけ、特別なんだからね!」
ななはクローゼットに飛び込んだ。
清楚の仮面をギリギリ保ちつつ、それでいて「女の子」を最大限に意識させる一着。
五分間の激しい葛藤の末、彼女が選んだのは――。
勇気を出して扉を開けると不安げに部屋を見つめている瑠花と目が合う。目が合った瞬間に部屋に逃げ込みたくなったが、そこは踏み込んでリビングに入る。
ななかはななを目にとらえると目を丸くする。
ななはひざ下まである、ロングスウェットワンピースを着ていた。袖が長すぎて、いわゆる萌え袖になっていた。
瑠花はその姿に顔を真っ赤にして悶絶する。
(望月さん...ちっちゃくて可愛い...)
「あら、かわいいじゃない」
ななかに褒められてななは再び顔を真っ赤にする。




