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突撃浪漫ロボで、異世界を制覇する  作者: 焼飯学生
第1章 未知の世界

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第4話 列車襲撃イベント

 ――ガタンゴトンガタンゴトン


 窓を開け、TALOSを脱いでアンダースーツを着ている上体で、ベットの上に寝転がっている俺は、車両の揺れと音を楽しんでいた。


「君が雇われた傭兵?」


 ゆっくりしていたら、閉めていたドアを大きな音を立てながら開け、1人の兵士が入ってきた。そのため、慌ててTALOSを装着し、俺はベットから飛び上がった。

 ノックくらいしろよ!?


「そうだが…貴女は?」


 無礼に対して苛立ちを覚えつつ、女兵に名前を尋ねた。


「お初にお目にかかる! 私はラネスカ公国軍近衛師団の1人、メリア・ライヒルデです!」

「宜しく頼む。私は副団長殿に雇われたアサヒだ」


 茶色の長髪で黒い瞳をしているメリアは、元気が良くハッキリとした声で自己紹介をした。

 やっぱ、女尊男卑の世界だけあって、兵士も女性の方が多いのだろうな…

 そんなことを考えつつ、俺も自己紹介を行う。


「アサヒ殿だな! 唐突だが、どうだ? 我国が誇る列車、ビッグガールと豪華客車グランドクロスは…!」


 胸張り、メリアは今乗っている列車の自慢をしてきた。

 ここは適当に取り繕って、帰ってもらうか…


「そうだな…ビッグガールの走りは豪快で勇ましい。名前の通りと言っても過言ではないだろう」

「そうでしょう。そうでしょう…! 何せ列車大国であるラネスカ公国の最新列車ですから!」


 俺が率直な感想を述べると、メリアは自分のことかのように誇らしげになっていた。

 しかし、メリアの口ぶりから、ラネスカ公国は鉄道業で栄えているようだな。ちょっと行ってみたい気持ちがある…


「して、アサヒ殿。夕食はどうされますか…? 宜しければ、共に食べましょう!」

「有難いが、今から仮眠を取りたい故、遠慮させてもらう…機会があれば、その時に」


 突拍子もなく食事に誘われ、俺は少し困惑しながら丁重に断る。

 当たり前だ。素顔をあまり見られたくないのもあるが、初対面の相手といきなり飯を少し引ける。


「なら仕方ない…代わりとして夜食を用意しておこう! では、私はこれで!」


 そう言い残して、メリアは部屋から出て行った。

 嵐のようだったな…

 そんなことを思いながら、俺は部屋に鍵をかけてTALOSを脱いだ。


「よっと」


 アンダースーツの状態のままベットに寝転び、俺はそのまま仮眠を取ることにした。


 ―◇―


 地命国(じめいこく)吾妻山脈。数百万年前の大噴火により出来た火山群であり、今となっては死火山となった。そんな吾妻山脈には、亜高山帯針葉樹林が広がっており、その間を縫うように、金剛本線と呼ばれている線路が敷かれている。

 そして、金剛本線からそう遠くない位置に、盗賊達が洞窟に仮拠点を構え、ターゲットがやってくるのを待っていた。


「今日で8日目…本当に来るのだろうな…?」


 眼帯を付けている大柄な男、ジュールスは部下が持ってきた川魚の串焼きを石の椅子に座りながら食べつつ、対面している相手に問いただした。


「ええ勿論、貴方達を警戒して到着時間を遅らせているようですが…今夜にはここら辺を通るようですよ」


 ジュールスに睨めつけられながら、真っ黒な髪色をしている者は質問に答える。

 対面している者は、中世ヨーロッパを彷彿させる黒色を基調としたチュニックを身にまとい、クラブの模様が描かれている仮面で顔を隠しており、何処か薄気味悪い雰囲気を放っていた。


「……もう一度確認しとくが、俺らは好きな放題略奪し、後処理はお前がしてくれる…そうだな?」


 仮面男を不気味に思いつつ、ジュールスは魚の尾にかぶりつきながら、襲撃後の話をした。


「その通りです。彼らが詰め込んでいる金目になるものは全て差しあげる代わりに、貴方方には王子暗殺並びに護衛の排除をしてもらう…その後の処理は私に任せて頂き、貴方方は遠く離れた場所に向かってもらうという契約です」


 仮面男は何処からともなく契約書を取り出し、ジュールスに見せた。

 契約書の少し古びた紙には、びっしりと文字が書き込まれており、一番下の空欄にはジュールスの名前が手書きで記入されている。


「…分かった。俺らは襲撃の準備を始める…俺らが仕事を終えるまで大人しく待っとけ…」


 魚を頭だけ残して食べ尽くしたジュールスは立ち上がり、岩に立てかけてあった片手斧を手に取った。


「お待ちをジュールス様。お渡ししたいものがございまして…」


 仮拠点に背を向け、線路がある方向に歩き出そうとしていたジュールスを仮面男は呼び止め、スペードの形をしている宝石が飾られているネックレスをジュールスに投げ渡した。


「なんだこれ…?」

「御守りのような物ですよ。もしもの時に備えて渡しておきます。不要で終われば、売ってもらって構いせんので…」

「………分かったよ…」


 訝しみながらジュールスはネックレスをポケットに入れ、仮拠点に待機させていた数名の部下と共に線路へと向かった。

 弱々しく燃えている焚き火の音だけが聞こえる中、仮拠点に1人残った仮面男は、ジュールス達が向かっていた方向を見つめ、


「…期待しておりますよ…君達には……」


 と言い残して一瞬にして姿を消した。

 そして、仮面男が姿を消すと同時に焚き火が崩れて火が消え、辺りは真っ暗になった。


 ―◇―


「…肉食いたい…」


 月の光が開けている窓から入ってくる中、夜食を食べ終えた俺は、肉を欲した。

 夜食は、隣の部屋で爆睡中のメリアが用意してくれた物で、1切れのパンにバターを塗り、レタスとチーズを1枚ずつ乗せたというシンプルな物だったのだ。

 用意したメリア本人曰く、使える物がこれしか無かったのこと。


「夕食を抜いた罰か…?」


 そんなことを呟きながら、食える物がないかインベントリアを開き、探し始めた。


「ポーションならワンチャン満たされるか…?」


 インベントリアをタップして、手元に出現させた上位回復水薬グレートヒーリングポーションを手元に出し、中身を見つめながら考える。

 いや待て、ポーションはしっかりと機能するのか…?

 そんな疑問を抱いた俺は、上位回復水薬グレートヒーリングポーションを戻して、最上位体力水薬ハイパースタミナポーションを1つ出し、そのまま栓を抜いて中身を飲み干した。

 すると別の画面が現れ、タイマーが10分のカウントダウンを始めた。


「ふむ…ポーションはしっかりと効くか……でもまぁ、材料があまりないから、特に回復系水薬(ヒーリングポーション)は大切に使わないとだな…」


 時間が減っていくタイマーを見つめながら、今持っているポーションがどれだけ貴重なものなのかを確認した。


「さてと、今はスタミナの回復率が上がってるから、暇潰しに運動するか」


 筋トレを始めようとしたその時、


 ――ボォーーーッ!!キィーーーー!!!


 突如としてビッグガールの汽笛が勢いよく鳴り、そして直ぐにブレーキ音が聞こえ、車体が前後に大きく揺れる。


「始まったみたいだな…!」


 俺は開けっ放しにしていた窓をから外に出る。


「機体装着、カスタム壱式…!」

『承認。機体名YAMATO壱式起動します。』


 TALOSを装着した後、そのまま先頭車両へと向かった。

 先頭に向かうと、そこでは女兵と盗賊らしき男達が戦っていた。


「悪質なんて言うなよっ!」


 走る速度を上げ、俺は直線上に居た男達に、思いっきりタックルを決めた。


「ギャッ!」

「ゴハッ!!」


 俺のタックルをモロにくらった2名の男は、情けない声を出しながら吹き飛ばされた。


「傭兵か!  悪いけど、こっちじゃなくて、あっちの手伝いしてあげて!」

「あっち…?」


 俺に気がついた女兵に、指示された方に顔を向けると、そこでは機関士らしき女性2名が、線路に横たわっている大木を退けようと必死になっていた。

 成程、あれで急ブレーキかけたのか

 大木に歩み寄った後、俺は大木を片手がめり込む程の力で掴み持ち上げた。


「はっ?!」

「えっ!?」

「それじゃあ、これは返却させてもらう!」


 機関士達が目を点にして驚く中、俺は大木を盗賊達に向けて投げ飛ばした。


「ちょっ待っ…!」

「嘘っ!?」

「なんだそのかいr」


 俺が勢いよく投げ飛ばした大木は、女兵と戦っていた盗賊3名達に当たり、そのまま3人は大木の下敷きになった。


「これにて片付け完了…敵の追加が来る前に、出ようとしよう…!」

「そうだな……機関士、ビッグガールの出発急げ!」

「「はい!」」


 手のホコリを払うと、女兵は機関士に運行再開を命じた。

 俺と数名の兵士が賊の援軍に警戒する中、機関士達は機関室に乗り込み、出発の準備を整えた。


「いつでも行けます!」

「よし、そのまま動かせ! 各員、それぞれ列車に乗り込め!」


 機関士の1人からの報告を聞き、女兵はそれぞれに散らばって警戒していた他の女兵達に、乗り込むよう命令した。

 煙突から煙を出しながら停まっていたビッグガールはゆっくりと動きだし、徐々に速度を上げて爽快な走りを見せ始めた。


「ふぅ…大したこと無かったな」

「うむ…何がともあれ、これでひとあん……」


 指揮を執っていた女兵と共に、機関室に乗り込んだ俺が、一息つこうとしたその時、後方から金属同士がぶつかる音が聞こえてきた。


「……やられた」


 盗賊達の作戦にまんまと嵌った自分に少し苛立ちを覚えながら、俺は炭水車の上に乗り、一両目の屋根上に移動した。


「中は……」


 屋根をしっかりと握りながら、俺は車内を見るために、側面窓から中を覗き込んだ。


「女の癖に、もう限界かぁ!?」

「男盗賊風情が、鬱陶しい!」


 中ではエメリーと眼帯をつけている大柄な大男が、それぞれの武器をぶつけ合わせていた。

 そしてエメリーの後ろには、グルードが冷や汗を垂らしながら、2人の勝負の行く末を見守っていた。


「……レーダー起動」


 エメリーしかいないことに違和感を感じた俺は、レーダーを起動した。

 レーダーには、味方を青、敵を赤で表している反応があり、青の反応は機関車と1号車、4号車から5号車にかけて集まっている一方で、赤の反応は2号車の前の方と3号車と4号車の間くらいに集まっていた。

 見事に分断されてしまったようだ。


「さてと、後ろは複数の反応があるから大丈夫だと思うが……」


 レーダーを切り、再び車内を覗いてみる。


「終わりだァ!!」

「なっ!?」


 覗いてみると、丁度決着が着いたようで、大男の一振りでエメリーは剣を弾かれてしまった。


「取り抑えろ!!」

「「おう!!」」


 大男から命令を受け、後ろで待機していた盗賊2名が、動揺しているエメリーを押えつけた。


「くっ…! 離せ!!」


 エメリーはもがいているが、男2人に抑え込められているせいで、身動きが取れないようだ。


「さぁ〜て、王子様には悪いが…こっちにも事情があるのでね…おい、やれ!」

「おまかせくだせぇ!」


 大男に命じられ、別の男が前に出てくると、1本のナイフを取り出し、グルードに歩みよる。


「待て! やめろォ!!」


 押さえつけられているエメリーは、悲痛な叫びをあげ始める。


「そろそろ出番だな…弐式、カスタマイズ!」

『承認。武装、弐式に変更します。』


 右腕に太刀型軍刀(ロングセイバー)、左腕に噴進捲揚機(ロケットウィンチ)、右肩に榴弾発射器(グレネードランチャー)、左肩に防御幕展開装置(プロテクストデバイス)を装備している弐式に変更した。


榴弾発射器(グレネードランチャー)…撃てぇ!」


 右肩の榴弾発射器(グレネードランチャー)の砲口を1号車の屋根に狙いを定め、榴弾を放った。


 ――ドゴォン!!


「な、なんだ!?」

「何事だ!?」


 爆発音と共に屋根には大きな穴が開き、盗賊達の戸惑う声が聞こえてくる。

 盗賊達が混乱しているうちに、俺は車内に降り立ち、グルードに近寄っていた盗賊を右腕の剣で切り裂く。


「うぎゃぁぁぁぁああああ!!!!」


 俺に腹部を斬られた盗賊は、悲鳴をあげ血を流しながら床に倒れ込んだ。


「貴様…っ! 何者だァ!?」


 大男は驚いた表情をしつつ、何者か尋ねてきた。


「あさひ…グルード様に雇われた。ただの傭兵だ…!」


 剣を構えた俺は、盗賊達に対して名乗りをし、


「射出!」


 ――バシュッ!!


 狙いを定めた後、左腕に装備している噴進捲揚機(ロケットウィンチ)を発射した。


「なっぁ!?」


 先端に装着されている錨に小型スラスターが着いている噴進捲揚機(ロケットウィンチ)は、勢いよく飛び、エメリーを押えつけていた男の1人を吹き飛ばして壁に叩きつけられた。


「巻き取れ!」


 俺の合図と共に噴進捲揚機(ロケットウィンチ)は巻き取り、元の状態に戻る。


「さぁて、次は!」

「ひいぃ?!」


 巻き取りが完了した後、噴進捲揚機ロケットウィンチの狙いをもう1人の方に定めると、男は怯んだ。


「はぁっ!」


 男が怯んだ隙をつき、エメリーは動かせれるようになった腕で、男の金的に重い一撃を加えた。


「がっ!?」


 もろに食らった男は、白目を向きそのまま後ろへと倒れ込んだ。

 なんだろう、股がひゅんっとなった…


「隙ありだァ!!」


 エメリーを見ていると、大男が片手斧を俺に目掛けて振りかざしてきた。


「ははっ! そんなに遊びたいなら、遊んでやるよ! 拘束!」


 噴進捲揚機(ロケットウィンチ)を放ち、大男の胴体にワイヤーを絡ませ、そのまま俺は作った穴から屋根へと出た。


「ぬぅ〜…! 離せぇーっ!!」


 大男はワイヤーを片手斧で切ろうとしながら、暴れ始める。


「すぐ離してやるから我慢しろ! 巻き取りか、ら、の〜…解除!」

「ぬおっ!?」


 噴進捲揚機ロケットウィンチが巻き取りを開始すると同時に、大男を持ち上げて作った穴から外へと連れ出し、空中で拘束を解いた。


「ぐうぅ〜〜!!」


 空中に放り出された大男は、空中で何とか姿勢を取りながら、列車から落ちないように片手斧を屋根に突き刺し、数m後ろへと下がりつつも耐え抜いた。


「これにて一対一…負けを認めるようであれば、痛めることなく一瞬で終わらせるが…どうする?」


 太刀型軍刀(ロングセイバー)の剣先を突きつけながら、大男にせめての慈悲を見せる。


「笑止! 女如きの慈悲をかけられる筋合いは無い!!」


 大男は慈悲を断り、屋根に突き刺さっていた片手斧を引き抜いて構えた。


「そうか…ならば、ここでやれるが良い…!」


 背中のノズルで一気に加速して間を詰め、すれ違いざまに太刀型軍刀(ロングセイバー)で片手斧を持っていた手を切り落とした。


「ぐがあぁぁぁああぁあ!!」


 太刀型軍刀(ロングセイバー)に着いた血を振り払い、痛みで悶えている大男の方を見る。


「うーん、首を切り落としたと思ったが…これは練習が必要だな」


 フルダイブ型とリアルの差を実感しつつ、大男に一歩ずつ近寄る。


「貴様ぁぁぁああ――」


 近づいてくる俺に、怒りや憎しみが籠った目で大男は睨みつけてきたが、突然糸が切れたかのように無言になり、その場に跪いた。


「……い……に…く…い…………憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」


 大人しくなったと思ったら、まるで呪いをかけるかのように憎いという言葉を繰り返し言い始める。そして、それと同時に大男のポケットからネックレスが出てきて、飾られているスペード型の黒い宝石から、黒い靄がかかっている包帯のような謎の物体が勢いよく出てくる。


「チッ…!」


 ――ドゴォン!!


 何か不味いと判断した俺は、右肩の榴弾発射器(グレネードランチャー)を放つが、一歩間に合わず、謎の物体は大男に巻き付いてミイラのような姿にし、宝石がミイラとなった大男の胸部辺りに埋め込まれる。


 ――ドクンッ!ドクンッ!


 ミイラから大きな鼓動が聞こえ始めると同時に、鼓動に合わせて胸の宝石が黒く光る。


「……」


 何回か鼓動が鳴り響いた後、謎の物体が浸透するかのように大男の中へと消えて行き、黒ずみ錆び付いた大剣を持ち、スペードの形をした宝石が胸に埋め込まれている真っ黒な騎士が姿を現した。


「第2フェーズ…と言ったところか?」


 騎士の様子を伺いながら、太刀型軍刀(ロングセイバー)を構え直す。


「…コロス……!」


 俺が身構えた瞬間、騎士はカタコトの言葉を呟きながら、大剣で斬りかかって来た。


 ――ガキィッン!!


 大剣と太刀型軍刀(ロングセイバー)がぶつかり合い、高い音が周囲に鳴り響き、鍔迫り合いをしている所から火花が散る。


「どういう原理かは分からないが……その宝石、怪しいよなぁ!」


 ――ガゴンッ!ドカァーン!!


 右肩の榴弾発射器(グレネードランチャー)の砲口を騎士の宝石に向け、榴弾を放つ。

 だが、騎士は勢いに負けて後ろへと下がながらも、大剣を使って砲弾を弾き飛ばした。


「大剣を封じ込めたのち、至近距離でぶっぱなすしかないな…」


 騎士を倒す方法を考え、左手の噴進捲揚機(ロケットウィンチ)を大剣に向ける。


「目標敵大剣、拘束!」


 ――バシュン!!


 放たれた噴進捲揚機(ロケットウィンチ)は、一瞬にして騎士の大剣に巻き付いた。


「巻き取れ!!」


 噴進捲揚機(ロケットウィンチ)を巻き取らせ始めたが、それをさせまいと騎士はその場に踏ん張り、綱引きを始めた。


 ――ギギギギギ……


 綱引き状態になったことにより、巻き取りが上手くできず噴進捲揚機ロケットウィンチから軋む音が出始める。


「中々やるな…! だが、筋力俊敏特化型の俺の敵では…無い!」


 息を整えた後、一気に力込めて大剣を此方へと引っ張る。


「!?」

「解除!」


 騎士は俺の力に耐えきれず、思わず大剣を離してしまい、すかさず俺は拘束を解いた。

 噴進捲揚機(ロケットウィンチ)から解き放たれた大剣は、空中で縦に回転しながら移動する列車の速度に置いていかれ、暗闇へと消えて行った。


「!!」


 得物が無くなった騎士は、せめてものの抵抗として、俺目掛けて突進を始めた。


「そう慌てるな、しっかり決めてやるよ!」


 騎士が向かってくる中、右肩の榴弾発射器グレネードランチャーを宝石に当てるため、タイミングを測る。


「…発射!」


 ――ドゴォン!!


 騎士に掴まれそうになったその瞬間、わざと後ろへと倒れつつ、榴弾発射器(グレネードランチャー)を騎士の胸部に向けて放った。


「…がっ……ぁ…」


 砲口から放たれた榴弾は、宝石ごと騎士の胸部をぶち抜き、それと同時に鎧が黒い靄となって霧散し、大男が跪いている状態で姿を現した。

 だが、大男の身体は徐々に黒ずみ始め、真っ黒になった箇所から霧散し始めた。


「……なぁ…最後に聞かせてくれ…」


 身体が崩壊して行く中、大男は口を開いた。

 太刀型軍刀(ロングセイバー)を鞘に納めつつ、俺は無言で話を聞くことにした。


「…差別に耐えながら真面目に働き……そして冤罪で全てを失い…堕ちに堕ちた俺の人生は…喜劇だったか?」

「……少なくとも、私は笑わん。だが、事情があったと言え、人々から物を奪い、殺したのは罪だ。だから私は、あの世で罪を償った後の貴殿が来世で報われることを祈る」


 大男からの質問に、俺は少しばかり言葉を考えた後、答えを返す。


「………そうか……最後に、貴女に会えて、良かっ…た……」


 日の出の光が差し込む中、大男はそう言い残して消滅して行った。

 この世界は、俺が思っているより闇が深いのかもしれないな…

 俺は屋根の上で座り込んで、日の出をただ1人で見つめた。

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