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突撃浪漫ロボで、異世界を制覇する  作者: 焼飯学生
第4章 常闇の遺跡

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第16話 眠る少女

 ヴェルイセン帝国某所。

 本島から少し離れた孤島では、深夜にも関わらず警報と共にスポットライトから出た数本の光の柱が夜空に昇っていた。

 明らか緊急事態が起きているのが分かる中、孤島の岩石海岸では白衣を着た白髪を長く伸ばした初老の女性が、白銀髪でショートの美少女を魔法で簡易的に作った船場に止めてあった小舟に乗せていた。


「それじゃあ、ここでお別れだね」


 初老の女性は船に乗った少女にそう告げる。


「えっ…アルベルナさんは…? アルベルナさんはどうするんですか?」

「私? 貴女が逃げる時間を稼ぐのよ」

「だ、ダメです! アルベルナさんも一緒に!」


 1人残ろうとするアルベルナに、少女は必死に一緒に来るよう懇願する。


「ダーメ…もう決めたことだから……また会おうね。スイープ……イレイズ…」

「あっ…アル、ベルナ……さ…んっ………」


 アルベルナから魔法をかけられた少女は、襲い掛かってくる眠気を抗おうとするが、アルベルナが掛けた魔法が強かったため、抵抗むなしくそのまま小舟に倒れ込み寝てしまった。


「よし。後はシートをかけて…」


 少女が寝たことを確認したアルベルナは見つかりにくくなるようにシートを少女にかけた。


「……またね…ミヨ…」


 アルベルナは、すやすやと寝ている少女の頬を優しく撫で、少女の名を呟き、ありったけの魔力を小舟に刻まれた刻印魔法に込めて魔法を発動させる。

 魔法が発動した小舟は波にもまれつつ、真っすぐと動き出し、孤島から離れて行く。

 そしてアルベルナは、見えなくなるその時まで小舟が向かって行った先を見つめた。


「……ごめんね。ミヨ…私の手はもう…汚れちゃってるのよ…」


 聞こえることはない。そう理解しながらもアルベルナは、少女を乗せた小舟が消えて行った方にそう語った。


「神様、あの子が…あの純粋無垢な良い子が…行きついた先で、幸せに――パァンッ!!


 アルベルナが手を組み、神に少女の幸せを願ったその時、何処からか飛んできた1発の弾がアルベルナの胸を貫き、アルベルナは力なく倒れながら海へと落ちた。少女のことを思いながら…


 ―◇―


「ごちそうさまでした…! 本当に美味しかったです」


 朝食を味わって食べた伊織は、手を合わせて感謝する。


「さて、伊織殿。珈琲を飲みながら、我々の今後を考えようではないか…」

「そうですね…ここに来た理由は、ウェントスクリスタルを見る為でしたので…それが盗まれてしまった以上、ここに用はありません。博物館に行けば、ウェントスクリスタルは観れないですが、勇者様の歴史などを知れると思いますが…」

「まぁ、国宝が盗まれてしまった以上、当面の間博物館は休みであろう…」

「そうですね…」


 俺と伊織はそれぞれ珈琲を飲み、これから何をするか考え始める。


「………金は充分あることだし、今日はゆったりするというのどうだろうか? 昨日の件で、私も伊織殿も奔走した疲れを癒すため、1日くらいゆったりしても罰は当たらないと思うのだが…」

「いいかもしれませんね。実のところ、昨日からふるーつぱんけーきを完食できなかったことがずっと気掛かりでして…料金はアサヒ殿がテーブルの上に置いてあったので、心配していないのですが…店の人が折角作ってくれた物を食べ賭けで放置してしまったことに罪悪感がありまして…」

「ならば、昨日貰った報酬の伊織殿の分を渡す故、食べてくると言い!」


 取り敢えず、今日1日はゆっくりするということになりそうなため、俺は分けて置いた伊織の分の報酬金を机の上に出した。


「こ、こんなに貰えませんよ! あの船の件、敵を倒したのはアサヒ殿じゃないですか! 私何もできてませんよ!」

「いやいや、伊織殿が居たからこそ。私は戦闘に集中できたのだ。故に伊織殿も報酬金を貰うべきだ」

「し、しかし…!」

「では私は少し散歩してくる!」

「ちょ、ちょっと!」


 伊織の制止を振り切って、俺は部屋から出て行く。

 まだ寝間着から着替えていない上に、朝のセットをしていない伊織が俺を追いかけて部屋から出てくることはなく、そのまま俺はロビーへと降り、受付で宿泊日数の延長の手続きだけしてホテルから出て行った。

 テロがあったワレクトンでは、朝から瓦礫の撤去作業が行われており、瓦礫を乗せた大型トラックと何台かすれ違う。


「テロに国宝盗難…ヨグルサム共和国は不運だな…」


 街の荒れ具合を見ながら歩き、浜辺にやって来た。

 朝のため浜辺には人っ子一人もいない状態で、浜に流れ着いた漂流物が波に何度も打ちのめられていた。


「…白骨化した何かの動物の骨、絡み合って1つになった海藻、頑張れば大弓にできそうな流木、何かの貝殻、小舟の上で寝ている少女………少女っ?!」


 浜辺にある漂流物を見ながら歩いていたら、白銀色の綺麗な髪に美しい肌をしている美少女が小舟の上で寝ているのを見て、俺は綺麗な二度見をしながら目を開いて驚く。


「…なんで少女が…? えっ?」


 信じられない光景に俺は驚きながら小舟に近寄る。


「そ、そこの御方、ここで寝るのは…」


 恐る恐る俺は美少女を優しく揺すって起こそうとするが、美少女は何の反応も示さなかった。


「……生きては…居るな……念のために回復系水薬(ヒーリングポーション)を飲ませておくか」


 脈を測って美少女が生きていることを確認した俺は、インベントリアから最上位回復水薬ハイパーヒーリングポーションを1つ取り出し、蓋を開ける。


「いや待て…このまま飲ませると窒息死してしまう…! 掛けるか」


 危うく自分が、美少女にトドメを刺そうとしていたことに気が付いた俺は、ポーションを美少女に飲ませるのではなく身体にかけた。

 ポーションは化粧水のように肌へと浸透して行った。


最上位回復水薬ハイパーヒーリングポーションだから、大体の怪我とかデバフは治るが…身体は弱っているだろうし、どこか病院に運ぶとするか…今混んでいるかもしれないが…」


 美少女を横抱きで持ち上げようとした際、小舟の底に瓶に入った手紙を見つけたため、美少女について知るために手紙を見てみることにした。

 握力で瓶を粉砕して取り出した手紙には、


 《この手紙を見ている人へ。私はその子の保護者です。時間がないので手短に伝えます。その子はある事情で追われています。帝国内では危険だと判断し、奇跡を信じて海へ流しました。お願いします。この子は純粋無垢で良い子です。どうか助けてあげてください》


 と書かれていた。


「……この自称保護者、かなりの大博打に出たなおい…」


 広大な海の方を見つめながら、自称保護者の行動に俺は気が引ける。

 しかし追われているか…この帝国が何処にあるか分からないが、今人手一杯になっている病院に預けたら、さらっと連れ去られそうだな…警察に伝えても今は国宝盗難の方で一杯一杯だろうし…


「…………」


 暫くの間考えたのち、


「手紙を信じて預かるか……」


 美少女を保護することにした。

 前の世界ならば誘拐とか言われるから通報案件だが、倫理ゆるゆるな可能性がある上、アビスとかいう魔物がいるこの世界で捨て子とかそれを預かるとかは多いと思うし、多分俺がこの子を預かっても何も問題はないだろう。多分きっと恐らく…


「伊織殿にどう話すべきか…」


 伊織への言い訳を考えながら、俺は美少女を横に抱えてホテルに戻ることにした。

 人の目を気にして、回り道を使ったり人が居ないことを確認しながら移動したので、帰るのには時間がかなりかかった。


「さて、どうするべきか…」


 時間をかけて戻ったおかげで終わっていた部屋のクリーニングで、綺麗になっていたベットの上に美少女を寝かせ、俺は椅子に座って考える。

 幸いにも伊織は出ていたので、部屋に戻って早々問い詰められるという事態にはならなかったが、タイムリミットは刻一刻と迫ってきている。


「…言い訳を考えなければ…」

「なんで考える必要があるのですか?」

「……」


 窓の外を見ながら椅子に持たれて一言呟くと、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 何だろう、すっごい既視感が……

 冷や汗をダラダラと流しながら、俺は後ろを振り返った。


「あの子について、説明してくれますよね?」

「は、はい……」


 後ろには、笑みを浮かべたまま物凄い威圧を放っている伊織が居り、俺は少し怯えながら少女が小舟に寝ていたこと、手紙によると何者かに追われていることを包み隠さず説明した。


「それ、本当に大丈夫なんですか? 何か巻き込まれません?」

「それについては私も思っているのだが、かと言って放置する訳にも行かなかった…それに手紙の文字が汚いところを見ると、相当焦っていたというのが分かる。追われているのは確かなのだろう…」

「うーん、手紙を読む限り帝国から出てきたっぽいので、余程のことがない限り探しに来るとは思いませんが…少し心配です」

「私と伊織殿の強さなら、そこまで心配はなかろう。いざと言う時の切り札もある故、保護してもよいではないか?」

「その、いざと言う時の切り札とは…?」

「それはその時までの秘密だ」


 少女を保護するのを認めてもらうため、俺は伊織の説得を試みた。

 そして、伊織は少し1人で考えた後、


「……分かりました。アサヒ殿を信用します」

「伊織殿、感謝する!」


 と言って認めてくれ、俺は礼を述べた。


「それで伊織殿、話は少し変わるが…帝国について教えてはくれないか?」

「あっ、はい! 分かりました!」


 話に一区切りついたので、俺は手紙を読んでからずっと気になっていた帝国について話を聞くことにした。


「帝国…ヴェルイセン帝国は、かつて大陸の7割近くを支配した国で、アビスとの戦争、大陸戦争では勇者と共に反撃を始めた国でもあります。ですが、戦争末期に帝都で起きたアビスとの全面戦争で軍の大半と、アビスを倒すために勇者様が使った究極奥義にて首都と射線上にあった大地を失い、更に戦後に起きた内戦で大陸に居ることが出来なくなり、最終的に帝国は勇者様の技により大陸から孤立した南部地域のみを統治することになったのです」

「それはまた…帝国にとっては災難だったな」


 ヴェルイセン帝国の過去を伊織から聞いた俺は、少し帝国が哀れに思う。


「それで、今の帝国はどうなっているのだ…?」

「正直な所、各国の帝国との交流は最低限ですので、情報はあまり…ただ、軍備を強化しているというのは聞いたことがあります」

「それは…また……きな臭いな…」


 哀れだった帝国の現状を聞いた俺は、何故だか猛烈に嫌な予感を感じて少し頭が痛くなる。


(帝国…島国…軍拡……)


 その3つの単語が脳内に浮び、それと同時に抜刀隊が脳内に流れ始める。


「アサヒ殿?」

「あっ、いやっ何だ伊織殿」

「いえ、何か思い詰めているようでしたので…」

「まぁ…少しな」


 伊織に声をかけられて我に返った俺は、言葉を濁して誤魔化す。


「取り敢えず、余程のことがない限り彼女が起きるまでの間、ワレクトンを活動拠点にするとするか」

「そうですね。ワレクトンの傭兵連合であれば、高額な報酬が出ている依頼が多いでしょうし、彼女が起きるまで資金を貯めることにしましょう」

「うむ。では、私は彼女の分の追加で払ってくる。その間彼女を見ておいてくれ」

「はい! ついでにシャワーと着替えさせておきます」

「頼む…!」


 今後の方針があらかた決まり、俺は少女の世話を伊織に任せ、ホテル代を払うためにロビーへと向かった。

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